実は知られざる巨匠のお宝がざっくざく!
県立や私立、区立の美術館や博物館は全国に141館。世界的に著名な作品を入手していたり、その地域の出身作家や所縁(ゆかり)のある作品を所蔵、寄託していることが多く、公立美術館同士で作品の貸し借りや巡回展を企画したりも。日本美術のコレクションに見応えのある、選りすぐりの10の公立美術館からご自慢の作品を拝見しましょう。
※この企画で紹介している作品は各美術館の所蔵作品ですが、必ずしも常時展示されているものではありません。
秋田県立近代美術館
洋風画の秋田蘭画を一年を通じて展示
秋田蘭画の第一人者・小田野直武の代表作『不忍池図』
平成6(1994)年、横手市内の憩いのエリア「秋田ふるさと村」の一角にオープン。江戸時代に、秋田藩主らが盛んに描いた洋風画の「秋田蘭画」をはじめ、近代以降の美術作品、秋田ゆかりの作家の作品を所蔵。展示のほか、館蔵品や世界の名作を紹介するハイビジョンギャラリーも。秋田ふるさと村内には、さまざまな秋田産の物販や飲食スペース、工芸体験のできる工房などが。
代表的所蔵作品
小田野直武(おだのなおたけ)『不忍池図(しのばずのいけず)』【重要文化財】、平福穂庵(ひらふくすいあん)『乳虎(にゅうこ)』ほか
新潟県立近代美術館
日本の近代美術と西洋のかかわりを体感
重なり合うようにして微睡む(まどろむ)子犬を描いた、竹内栖鳳(たけうちせいほう)の『睡郷(すいきょう)』。「動物を書かせたら体臭までも」といわれた栖鳳の、構図から毛並みまでリアルな表現が見て取れる。
平成5(1993)年、緑豊かな「千秋が原ふるさとの森」に開館。長岡の美術収集家・駒形十吉(こまがたときち)が30余年をかけて築いた「大光コレクション」を軸に、日本の近代美術と関わりの深いバルビゾン派やナビ派など19世紀の西洋美術を所蔵、企画展示する。
代表的所蔵作品
菱田春草『放鶴(ほうかく)』、下村観山『入日(いりひ)』、岸田劉生『冬枯れの道路(原宿附近写生)』ほか
府中市美術館
気軽にアートに触れられる憩いのミュージアム
鈴木春信の門下として浮世絵を学び、のち写生体の漢画、美人画、洋風画、エッチングに油彩と多才な、司馬江漢(しばこうがん)の『猫と蝶図』
「美と結びついた暮らしを見直す美術館」をコンセプトに、平成12(2000)年に開館。府中の風景を数多く描いた洋画家の牛島憲之(うしじまのりゆき)の作品は遺族からの寄贈で約100点を所有、記念コーナーを設ける。江戸や現代美術などをテーマにした企画展のほか、一般が参加できるワークショップ、所蔵品ギャラリートークなどを実施。
代表的所蔵作品
亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)『甲州猿橋之眺望(こうしゅうさるはしのちょうぼう)』、大久保一丘(おおくぼいっきゅう)『真人図(しんじんず)』ほか
町田市立国際版画美術館
古今東西の版画がなんと2万点以上!
京都の浄瑠璃寺(じょうるりじ)伝来の『阿弥陀如来坐像摺仏』。900年前の仏像の体内から発見された木版画で、1枚の版木に百体の阿弥陀仏が掘られたもの。
世界的にも珍しい版画専門の美術館として昭和62(1987)年に開館。国内外の版画約2万8000点を所蔵。版画の歴史をたどるコレクションを多彩なテーマで展示。
代表的所蔵物
『十二天像のうち風天(ふうてん)【与田寺版(よだじばん)】』、歌川広重『東海道五十三次 蒲原 夜之雪』、葛飾北斎『百人一首姥かゑとき 参議篁(さんぎのたかむら)』ほか
岐阜県美術館
郷土ゆかりの日本画家からオディロン・ルドンまで
明治期から昭和にかけて活躍した日本画家の川合玉堂の『山村深雪』。
「美とふれあい、美と対話する」をテーマに昭和57(1982)年開館。彫刻など立体造形物が調和する緑豊かな敷地は、市民の憩いの空間。川合玉堂(かわいぎょくどう)や前田青邨(まえだせいそん)、山本芳翠(やまもとほうすい)など、近代日本美術史上に重要な足跡を残した岐阜ゆかりの作家の作品や、日本美術の流れを展望するにふさわしい作家の作品を収集、展示。19世紀後半に活躍したフランスの画家オディロン・ルドンの作品は、世界有数のコレクション。
代表的所蔵作品
奥村土牛(おくむらとぎゅう)『犢(こうし)』、川合玉堂『駒ヶ岳』、前田青邨『出を待つ』ほか
滋賀県立近代美術館
豊かな自然環境の中で文化芸術活動を
久隅守景(くすみもりかげ)『近江八景図』の左隻。下部に琵琶湖を配し、遠景に比良山の暮雪(ぼせつ)や唐崎神社(からさきじんじゃ)、三井寺、その下に大津の港を描く。近世初頭に成立した近江八景を絵画化した、早い時期の作品。
琵琶湖と比良・比叡の山並みを望む瀬田丘陵の一角に昭和59(1984)年に開館。美しい日本庭園に囲まれた、県立図書館や埋蔵文化センターなどに隣接した郊外型美術館。近代日本画、郷土ゆかりの美術、戦後のアメリカと日本を中心とした現代美術を収集。特に、滋賀県出身の小倉遊亀(おぐらゆき)の作品は、専用のコーナーを設けて常設展示。
代表的所蔵作品
速水御舟(はやみぎょしゅう)『遊漁(ゆうぎょ)』、菱田春草(ひしだしゅんそう)『洛葉』、橋本関雪(はしもとかんせつ)『松下高士図(しょうかこうしず)』ほか
奈良県立美術館
名コレクターの収集品を軸にした近世日本画が多数
狩野元信(かのうもとのぶ)印の『洛中洛外図帖【四条橋】』。京都の代表的な社寺や橋、町並みや邸宅、祭り、風俗などを描いた図を貼り付けた画帖全24図【1帖】のうちの一作。※奈良県公式ホームページより
昭和48(1973)年開館の、奈良ゆかりの絵画や書蹟、浮世絵などを所蔵する美術館。風俗研究家・日本画家の吉川観方(よしかわかんぼう)のコレクションなどを収蔵。奈良県生駒郡出身の近代陶芸の巨匠・富本憲吉(とみもとけんきち)の作品も豊富。
代表的所蔵作品
伝雪舟『秋冬山水図屏風(しゅうとうさんすいずびょうぶ)』、『伝 淀殿画像(でん よどのがぞう)』、曾我蕭白(そがしょうはく)『美人図』、葛飾北斎『瑞亀図(ずいきず)』ほか
神戸市立博物館
所蔵5万点を誇る南蛮美術の宝庫
日本にキリスト教を伝えた宣教師を描いた礼拝画、『聖フランシスコ・ザヴィエル像』【重文】現茨木市の山中の民家に伝わった「開けずの櫃(ひつ)」に隠されていた絵画。
昭和57(1982)年、旧外国人居留地区内に開館。南蛮美術や古地図資料など、東西文化交流に関わる作品を中心にした所蔵品は、国宝・重要文化財を含む約5万点を誇る。新古典主義様式の建物は国の登録有形文化財。
代表的所蔵作品
『桜ヶ丘銅鐸(どうたく)・銅戈(どうか)』【国宝】、『泰西王侯騎馬図(たいせいおうこうきばず)』【重要文化財】、平賀源内(ひらがげんない)『西洋婦人図(せいようふじんず)』ほか
鳥取県立博物館
講演や体験活動も活発な総合博物館
鳥取砂丘や浦富(うらどめ)海岸などの自然、県の歴史、郷土作家の作品など、鳥取県に関するさまざまな資料を紹介する。史料閲覧室では、鳥取藩主池田家の史料約1万5000点の閲覧も可能。
代表的所蔵作品
曾我蕭白(そがしょうはく)『月夜山水図襖(げつやさんすいずふすま)』、前田寛治(まえだかんじ)『棟梁の家族(とうりょうのかぞく)』、濱田庄司(はまだしょうじ)『柿釉丸紋鉄絵大鉢(かきゆうまるもんてつえおおばち)』ほか
熊本県立美術館
城を望むロケーションで熊本に伝わる名宝の数々を
葛飾北斎の肉筆浮世絵『鍾馗図(しょうきず)』
熊本城二の丸公園の一角に、古代から現代美術までを網羅する総合美術館として昭和51(1976)年に開館。考古、絵画、版画、彫刻、工芸、書蹟など、美術品だけでなく歴史史料として貴重な品を収蔵・展示する。細川家に伝わる名宝のなかから当館に寄託されている近世の屏風や近代日本画などの細川コレクションは、専用の常設展示室にて公開。また、当館建築は日本を代表する建築家の一人、前川國男の代表的な作品でもある。
代表的所蔵作品
矢野雪叟(やのせっそう)『山水図屏風』、『瀬戸渋紙手茶入 銘 村雨(せとしぶかみてちゃいれ めい むらさめ)』ほか
※緊急事態宣言の期間中など、美術館は臨時休館となる場合があります。詳細・最新情報は、美術館のHPをご確認ください。