モネやゴッホを驚かせた斬新な構図から、ポップアートの革命児も舌を巻くスペクタルな表現まで、北斎のスゴさはなんといっても、ひとりの絵師とは思えない「切り札の多さ」でしょう。そこで、和樂10・11月号では、あらゆる分野にわたる北斎の傑作快作を、世界の巨匠たちとくらべて検証しています。1万5000年の歴史を行き来する二十番勝負を通して、その超人ぶりを紹介!
勝負の様子をちょっとだけご紹介
北斎 VS カラヴァッジョ
映った姿は別の顔…劇的!鏡面勝負
天下の名峰も伝説の美青年も、水鏡に映る姿はなんて麗しいのでしょう。ですが、バロックの鬼才カラヴァッジョも北斎も、この絵をうっとりでは終わらせません。『ナルキッソス』の主役は、池に映った己の美貌に見とれる青年ですが、暗い水底の顔にはなぜか老いの兆し。いっぽう北斎の富士山も、地上では粗野な夏山なのに、湖面に映るのは白肌秀麗な雪山です。これはユーモア?皮肉?水面を境に『理想と現実』を描いた巨匠たちの、クールな手腕に脱帽です。
葛飾北斎『冨嶽三十六景 甲州三坂水面』
横大判錦絵 山口県立博物館・浦上記念館
北斎の代名詞『冨嶽三十六景』より、富士山眼下の河口湖に映る『逆さ富士』を描いた1枚。実景の夏山と湖面の冬山は、位置が左右にズレているほか、シルエットも微妙に異なっている。
カラヴァッジョ『ナルキッソス』
@Album/PPS通信社
イタリアバロッグの『破天荒な巨匠』による傑作。ナルシストの語源になった青年が、池に映る自分の姿に見とれるあまり命を落とす…という伝説が描かれた。水鏡にぼんやり映る顔が老人に見えるという説や、実は地上の姿が幻で水中が現世という説もある。
そのほかの対決は本誌で!
北斎の対決相手は、ゴッホからミュシャ、ピカソ、E.T.。他にも大物が勢ぞろいしています。気になるその内容は、2017年10・11月号でご確認ください!