北斎が描いた踊り手たちは、表情やポーズがとてもユニーク。当時の人々はこの指南書を片手に、1人でこっそり練習していたようです。本の中身とは?
振り付けの手本は、まるでパラパラ漫画
葛飾北斎「踊獨稽古」(部分)半紙本 文化12(1815)年 国立国会図書館
北斎の作品でも意外なものに、文化・文政時代にお座敷や芝居小屋ではやっていた曲の振り付けをひとりでこっそり稽古できる指南書「踊獨稽古」があります。
収録されているのは、「登り夜舟」「生野暮薄鈍」「悪玉踊り」「団十郎冷水売」の4曲。作画と編集は北斎がひとりで行っていて、歌舞伎舞踊の振り付けを担当していた藤間新三郎が補正するという念の入ったつくりになっています。
振りに合わせて、踊りのコツや小道具の使い方を書き加え、踊りの型を忠実に描いた一連の絵は、パラパラ漫画で見てみたいほど正確で絵もキュート。今や日本を代表する文化であるアニメーションの原型を見る思いです。
北斎は無趣味で絵にしか興味がなかったといわれますが、指南書が描けるぐらい歌舞伎舞踊に精通していたことに驚かされます。