いよいよ芸術の秋のはじまり、ということで関西方面で開催される展覧会を2つご紹介します。
兵庫県の芦屋市立美術博物館では『広重展』が開催され、広重の出世作となった最初の版である保永堂版を中心に、世界中が愛した名作をサブテーマからひもときます。
また、京都府のアサヒビール大山崎山荘美術館では『有元利夫(ありもととしお)展』が開催されます。有元利夫は38歳という若さで亡くなっていますが、今なおその人気は衰えません。会場に足を運べばきっとその理由もわかるでしょう。
『広重展-雨、雪、夜 風景版画の魅力をひもとく-』
芦屋市立美術博物館
左 『保永堂版東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪』 右 『保永堂版東海道五拾三次之内 庄野 白雨』
代表作『東海道五拾三次』など、親しみやすい風景版画で知られる浮世絵師、歌川広重。2017年に生誕220年を迎えることを記念して、改めてその魅力を探ります。印象深いのは、雨や雪、夜がサブテーマになっている作品。広重は「雨の画家」ともいわれていて、登場人物の心情を感じさせる叙情的な表現は、懐かしい歌謡曲を聴いているような、センチメンタルな気持ちを呼び起こします。月、夜、霧などもキーワードとして取り上げ、見る人の心に響く広重独特の世界を、さまざまな仕掛けに注目しながら案内する楽しい企画展。
『有元利夫展-物語をつむぐ』
アサヒビール大山崎山荘美術館
有元利夫 『七つの音』 1984年 三番町 小川美術館蔵 ©︎Yoko Arimoto
有元利夫は1946年に生まれ、具象洋画の登竜門であった安井賞展で特別賞、安井賞を受賞するなど輝かしい成績を残しましたが、38歳という若さでこの世を去りました、彼が残した「風化したものは、僕にとっていつも美しく物語のある空間です」という言葉のとおり、時間と場所を超越した作品の詩的な世界は、色あせることなく今でも多くの人に愛されています。特別賞を受賞した「花降る日」、安井賞を受賞した「室内楽」をはじめ、版画や立体を含めた約50点を展示。
有元利夫 『花降る日』 1977年 三番町 小川美術館蔵
関西では10年ぶりとなる展覧会です。この機会にぜひ訪れて。