日本美術の最高到達点ともいえる「国宝」。2017年は「国宝」という言葉が誕生してから120年。小学館では、その秘められた美と文化の歴史を再発見する「週刊 ニッポンの国宝100」を発売中。
各号のダイジェストとして、名宝のプロフィールをご紹介します。
今回は羽ばたく白鷺の勇姿、「姫路城」です。
羽ばたく白鷺の勇姿 「姫路城」
姫路城は姫路市中央部、標高46メートルの姫山に位置する平山城(平地の丘や山に築かれた城)。国宝の5城中、最大規模の天守をもち、1993年に世界遺産にも登録された、日本を代表する城郭です。
築城は古く、南北朝時代の武将・赤松貞範にさかのぼります。羽柴秀吉が一時居城したあと、関ヶ原の戦いの軍功で入城した池田輝政が大改修を行ない、慶長14年(1609)に大天守を完成させました。
姫路城は築城以来、大きな戦火を受けなかったため、大天守・小天守・櫓・門などの建築物が100棟近くも現存し、築城技術が最盛期を迎えた時期のきわめて大規模な遺構です。
姫路は、徳川幕府にとって西国諸大名の動向を監視するための軍事的な要衝でした。そのため、周囲を睥睨するかのようにそびえる大天守の威容に加え、本丸を中心に、二の丸、三の丸を螺旋状に配置した複雑な縄張(設計)や、内部を大小の曲輪(区域)で細かく区切り、迷路のように入り組んで折れ曲がった通路、おびただしい数の門によって、敵の侵入を妨ぐ構造となっています。また、敵を攻撃するための矢狭間・鉄砲狭間・石落しなどの軍事設備も、随所に見ることができます。
姫路城は堅固な要塞であると同時に、類まれな美をもつ建築物です。本瓦と白い漆喰を塗り籠めた白壁が織りなす色彩美、多様な形式を組み合わせた変化に富んだ屋根や装飾性豊かな窓が、均整のとれた幾何学的な構成美を見せています。大天守とそれに付き従う小天守3基、それらを連結する4つの渡櫓が形成する建築群は壮麗で格調高く、大天守・小天守など8棟が国宝、74棟の建物が重要文化財に指定されています。
こうした重厚かつ優美な外観をもつ城塞が、ひとたび内部に入れば軍事的にも優れた機能を備えた戦国時代の城郭の名残を色濃く残している点が、この城が近世城郭中、比類ない名城と見なされる理由です。
2009年から15年にかけての「平成の大修理」では、大天守の屋根瓦の葺き替えと漆喰の塗り替えが行なわれ、純白に輝く姿がよみがえりました。
国宝プロフィール
「姫路城大天守」
慶長13年(1608) 1棟 五重6階 地下1階付 本瓦葺 兵庫 写真提供/姫路市
大天守は、慶長5年(1600)に入城した池田輝政が9年をかけて築いた。五重6階地下1階で、石垣の高さ14.85メートル、建物は31.5メートル。大天守が3棟の小天守と渡櫓で連結された連立式天守。白漆喰総塗籠造の外観と、千鳥破風や唐破風などを配した屋根が、華やかな美しさを見せる。