江戸琳派の酒井抱一の内弟子となり、やがて独自の琳派様式を確立した鈴木其一(すずききいつ)。その作品の数々は、フェノロサやフリーアなど名だたる美術愛好家を虜にし、海外の美術館でいち早く紹介されました。アメリカでは琳派を代表する絵師としてその名があげられるほど有名なのですが、其一についての詳細や記録は文献に残されておらず、その人生は謎に包まれたまま…。いったいどのような絵師だったのか。様々なスタイルで描かれた名画や、知る人ぞ知る佳作とともにご紹介します。
「群鶴図屛風」
鈴木其一 六曲一双 紙本着色 各162.5×358.8㎝ 江戸時代(19世紀) エツコ&ジョー・プライスコレクション/光琳作の鶴が行進する「群鶴鶴屏風」を、抱一が写し、さらに其一が写して琳派を継承。くちばしや脚の描き方で其一は独自性を主張。上図は左隻
「四季花鳥図」
鈴木其一 二曲一双 紙本金地着色 各167.5×170.2㎝ 江戸時代(19世紀) 山種美術館/水墨画ややまと絵でもくり返し描かれてきた画題を、其一は丁寧な描写と鮮やかな色彩で華やかに表現した
「貝図」
鈴木其一 一幅 絹本着色 34.8×29.0㎝ 江戸時代(19世紀) エツコ&ジョー・プライスコレクション/最晩年の50代後半に描いた、貝が主題の作品。画業を極めた時代の作らしく、丁寧に描きながらも、淡々とした味わいがただよっている
「柳に白鷺図屛風」
鈴木其一 二曲一隻 紙本着色 132.5×141.6㎝ 江戸時代(19世紀) エツコ&ジョー・プライスコレクション/静止画のような柳と白鷺の描写だが、色のグラデーションや柳のシルエットをくり返して奥行きを表現。其一の独特な世界観がそこにある
「飴売図」
鈴木其一 一幅 紙本墨画 49.7×22.7㎝ 江戸時代(19世紀) エツコ&ジョー・プライスコレクション/20代半ばに描いた水墨画では、唐人姿の行商人を墨の濃淡やにじみによって的確に表現。しかも、顔は細かく描いていて、確かな腕前を披露