近年、日本美術の展覧会への関心がますます高まってきています。過去3年をみても、2015年琳派イヤー、2016年若冲イヤー、2017年国宝&運慶イヤーと冠され、一大ブームを巻き起こしてきました。続く2018年は、日本美術にとってどんな年になるのか…
編集部では、勢いがある2018年の展覧会予定をふまえ、日本美術トレンド10を大胆予想しました。トレンドを先取りして、注目展覧会に備えましょう!
1 琳派人気は不動!
わかりやすく、美しく、楽しい。琳派の作品は今や押しも押されもしない人気を誇り、日本美術界で確固たる地位を築いています。その理由は、絵画としての魅力が第一にあげられますが、もうひとつ、展覧会で見られる機会が多いことも見逃せない要因です。
尾形光琳「紅白梅図屛風」国宝 二曲一双 紙本金地着色 江戸時代・18世紀 MOA美術館
たとえば、尾形光琳のふたつの国宝「紅白梅図屏風」「燕子花図屏風」は、それぞれの花の開花時期の展覧会で公開されるのが今や恒例。毎年必ず見に行くという人も多いのです。今年も、初春のMOA美術館では「所蔵名品展 尾形光琳 国宝『紅白梅図屏風』」が、5月の連休のころには根津美術館の「光琳と乾山 -芸術家兄弟・響き合う美意識-」で「燕子花図屏風」が展示されます。にぎわうことは確実!
酒井抱一「桜に小禽図」絹本着色 江戸時代後期 細見美術館
また、開館20周年を迎える細見美術館の記念展の第2弾は「抱一の花・其一の鳥」、山種美術館では「琳派 -俵屋宗達から田中一光へ-(仮称)」と、今年も一年を通して琳派の名絵師たちの作品を見ることができ、琳派人気はますます盛り上ることでしょう。
【展覧会情報】
所蔵 名品展 尾形光琳国宝「紅白梅図屏風」
会場:MOA美術館
会期:開催中~2018年3月13日
琳派展20 抱一の花・其一の鳥
会場:細見美術館
会期:2018年3月3日~4月15日
光琳と乾山-芸術家兄弟・響き合う美意識-
会場:根津美術館
会期:2018年4月14日~5月13日
琳派-俵屋宗達から田中一光へ-(仮称)
会場:山種美術館
会期:2018年5月12~7月8日
2 日本美術のニュースター誕生!?
日本美術界はこれまでに、若冲や光琳、北斎といったスター絵師を輩出してきました。それに続く存在が求められている昨今、ネクスト・スター候補と目される絵師がいます。まずは、奄美大島に移ってから独自の画境を確立し、「昭和の若冲」とも称された田中一村。
田中一村「熱帯魚3種」昭和48(1973)年 岡田美術館 ©2017 Hiroshi Niiyama
2018年に生誕110年を迎えることから、岡田美術館では記念展「初公開 田中一村の絵画 -奄美を愛した孤高の画家-」の開催が決定。同時代に活躍した東山魁夷や、共通項が多い伊藤若冲と併せた展示が予定されていて、若冲並みの注目を集めることも考えられています。
泉屋博古館分館で2期にわたって特別展が行われる日本画家、木島櫻谷も今年メジャー人気を獲得しそうなひとり。卓抜した技術で描かれた動物画や花鳥画は、日本画を見慣れた人の目にも新鮮に映るはずです。
【展覧会情報】
生誕140年記念特別展 木島櫻谷
会場:泉屋博古館分館
会期:PartⅠ 2018年2月24日~4月8日/PartⅡ 4月14日~5月6日
初公開 田中一村の絵画-奄美を愛した孤高の画家-
会場:岡田美術館
会期:2018年4月6日~9月24日
特別展 名作誕生-つながる日本美術
会場:東京国立博物館 平成館
会期:2018年4月13日~5月27日
3 アニバーサリー展が大充実!
2018年は、生誕150年の横山大観、生誕110年の田中一村、没後200年の松平不昧、没後50年の河井寛次郎、創建1250年の春日大社などと並び、美術館の節目の年を記念したアニバーサリー展が各地で行われます。
呉春「白梅図屏風」重要文化財 六曲一双(左隻)絹本彩色 江戸時代 逸翁美術館
阪急の創業者・小林一三の雅号を冠した逸翁美術館は開館60周年。国内最大規模の円山四条派のコレクションから四条派の呉春の「白梅図屏風」などが、円山応挙の国宝「雪松図屏風」とともに展示されます。開館30周年のメナード美術館では、所蔵品を30のテーマに分け2期にわたる展覧会を開催中。創立40周年の樂美術館は特別なセレクションによる展示が予定され、開館40周年のひろしま美術館は2017年に好評を博したミュシャの特別展を開催。各美術館の個性を反映したアニバーサリー展の数々は、今年見ておかないと後悔することは必至です。
【展覧会情報】
開館30周年 30のテーマⅡ期
会場:メナード美術館
会期:2018年1月2日~3月11日
開館40周年 樂美術館 新春セレクション
会場:樂美術館
会期:2018年1月6日~3月11日
開館60周年記念展 応挙は雪松、呉春は白梅。
会場:逸翁美術館
会期:2018年1月20日~3月11日
ミュシャ展~運命の女たち~
会場:ひろしま美術館
会期:2018年2月24日~4月8日
4 ふたりの巨匠、大・大ブーム!!
2018年注目の絵師は大を「たい」と読むふたりの巨匠、池大雅(いけのたいが)と横山大観(よこやまたいかん)。「大・大ブーム」の到来です!
2017年の「国宝」展の入場者数が特別展の同館最高記録を大幅に上回る62万人を超え、今乗りに乗っている京都国立博物館が満を持して開催する特別展が「池大雅 天衣無縫の旅の画家」。
池大雅「楼閣山水図屏風」国宝 六曲一双(右隻)紙本金地着色 江戸時代・18世紀 東京国立博物館
若冲や応挙らが活躍した江戸時代中期の京都画壇で、大雅は与謝蕪村とともに南画を大成。その初期から晩年にいたるまでの代表作が一堂に集められるというのですから、いやが上にも期待は高まります。その人柄を表しているといわれる明るく温かい絵の数々は、現代の人の心に沁み込んでくるような魅力に溢れ、大評判となることは請け合いです。
もう一方の横山大観は、明治時代以降の日本美術において、新たな「日本画」を確立することに成功した、まさに巨匠。生誕150年を記念した展覧会が目白押しで、2018年の美術界に旋風を巻き起こしそうな勢いです。
【展覧会情報】
池大雅 天衣無縫の旅の画家
会場:京都国立博物館
会期:2018年4月7日~5月20日
生誕150年 横山大観展
会場:東京国立近代美術館
会期:2018年4月13日~5月27日
大観生誕150年記念 横山大観VS日本画の巨匠たち
会場:足立美術館
会期:2018年8月31日~11月30日
5 茶の湯は今年も注目の的!
2017年は東京国立博物館の特別展「茶の湯」をはじめとして、数多くの茶の湯の展覧会が開催されました。今年は松平不昧の没後200年ということもあり、三井記念美術館の特別展を筆頭に、茶の湯の展覧会が引き続き人気を集めそうです。
「喜左衛門井戸」国宝 大井戸茶碗 朝鮮時代・16世紀 孤篷庵蔵
また、国宝の名碗「曜変天目(稲葉天目)」が静嘉堂文庫美術館の「酒器の美に酔う」に特別出品されることが決定。茶の湯に興味がある人はもちろん、日本美術ファンなら見逃すことができない機会です!
【展覧会情報】
没後200年 松平不昧展(仮称)
会場:三井記念美術館
会期:2018年4月21日~6月17日
酒器の美に酔う
会場:静嘉堂文庫美術館
会期:2018年4月24日~6月17日