10月も中盤に差し掛かり、いよいよ秋らしくなってきました。秋といえば、やはり芸術の秋。各美術館も、最も力を入れて企画・特集した美術展をこの時期にぶつけてくることが多く、アートファンは毎年秋になると行きたい展覧会が目白押しで、週末のたびにどこか展覧会に出かける方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はこれから「どの展覧会に出かけようか?」と迷っているあなたのために、特に2018年秋~年末に楽しめる、注目したい展覧会を関東圏・関西圏から合わせて10展ピックアップして紹介してみたいと思います。もちろん私(都内在住)も書いたからには責任を持って、関西方面にも2~3回は遠征するつもりでいます!
1.フェルメール展(東京)
この秋日本最大の注目美術展である「フェルメール展」。世界にたった三十数点しか存在しないフェルメール作品のうち、実に9点もの作品が東京・上野の森美術館へ集結するという非常にエポックメイキングな展覧会。
17世紀オランダ絵画を代表する1枚として美術史に輝く「牛乳を注ぐ女」をはじめ、すべての作品が1つの大きな部屋「フェルメール・ルーム」で鑑賞できるという非常に贅沢かつレアな体験ができます。東京展は混雑対策から入場期日指定制でチケットが発売中。東京展の後は、大阪市立美術館での大阪展も始まりますが、それぞれ東京・大阪限定で出展される作品があるため、私も両会場で複数回見る予定です!
展覧会名:フェルメール展
会期 開催中~2019年2月3日
会場 東京・上野の森美術館
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2.京のかたな展(京都)
「フェルメール展」に負けず劣らず話題となっている、史上最大規模で開催される刀剣の展覧会。古来から刀剣の一大産地だった「京都」の国宝級名刀170振がズラリと並ぶ、非常に見ごたえのある展覧会です。
もちろん、空前の刀剣ブームを支える「刀剣乱舞-ONLINE-」との大胆なタイアップも見どころの一つで、京都国立博物館の明治古都館がまるごと「刀剣乱舞-ONLINE-」とのコラボ展示やグッズ販売コーナーになっています。この大規模なコラボを体験しようと、全国から熱心な刀剣女子が集結。土日祝日を中心に、この秋屈指の“行列ができる“人気展覧会になっています。その他、北野天満宮や太秦など、京都市内の各所でも「刀剣乱舞」コラボ企画が多数用意されています。
展覧会名:特別展 京のかたな-匠のわざと雅のこころ
会期 開催中~11月25日
会場 京都国立博物館
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3.ルーベンス展(東京)
西洋美術における17世紀バロック絵画を代表する巨匠・ルーベンス。日本ではその知名度のわりに、まとまった規模の回顧展がしばらく開催されていませんでした。しかし2018年秋、満を持して国立西洋美術館で開催が決定。
ドラマチックで動きのある劇的な構図、天井まで届く大画面の巨大作品は、これぞまさにザ・西洋絵画。見応え抜群の宗教画・歴史画をしっかりと堪能できます。大きくてわかりやすい構図の作品が多いため、絵画鑑賞初心者でも十分楽しめるのも嬉しいところです。
展覧会名:ルーベンス展―バロックの誕生
会期 開催中~2019年1月20日
会場 国立西洋美術館
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4.藤田嗣治展(京都)
海外で最も知名度が高く、20世紀初頭のパリで人気画家として活躍した藤田嗣治。日本でもテーマ別に毎年いくつも「フジタ」の展覧会が各地で開催されますが、これだけまとまった出展点数で、初期から晩年までの画業すべてを網羅した回顧展は久々となります。普段あまり紹介されない第二次大戦中の「戦争画」や晩年ふたたび渡仏し、レオナール・フジタと洗礼名を授かってからの晩年の「宗教画」など意外な見どころも!
すでに東京展は、相次いでテレビにて特集が組まれた会期後半は大盛況となったように、京都展も非常に大人気になりそうです。
展覧会名:没後50年 藤田嗣治展
会期 2018年10月19日~12月16日
会場 京都国立近代美術館
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5.ムンク展(東京)
ノルウェー大使館全面バックアップの下、来日する約100点の作品全点がムンク作品という非常に贅沢な大回顧展。目玉は、学校の教科書でも掲載され、抜群の知名度を誇る作品「叫び」です。はじめとして、ムンクのキャリア初期~晩年までの作品をバランスよく展観する王道的な回顧展です。
展覧会名:ムンク展―共鳴する魂の叫び
会期 2018年10月27日~2019年1月20日
会場 東京・上野の森美術館
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6.正倉院展(奈良)
毎年、10月下旬~11月上旬でのわずか2週間程度の限定公開となる人気の日本美術展。日本最古の博物館「正倉院」に収められた奈良時代の貴重なお宝約9,000点の中から選りすぐって展示する展覧会です。毎年観光バスで日本全国からツアー客が押し寄せ、期間中は大混雑です。
第70回となる今回は各倉庫から56点が展示されますが、うち10点は初公開作品。1300年前の螺鈿手箱や、麻製品など、どれを見ても国宝級の展示ばかりです。
展覧会名:第70回 正倉院展
会期 2018年10月27日~11月12日
会場 奈良国立博物館
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7.東山魁夷展(東京)
※画像は京都展のものです
横山大観に並び、戦後の日本画で最も人気の高い画家の一人です。京都の四季や北欧、ドイツ、オーストリアの風景を写実的に描いた風景画、白馬の登場する人気作品をはじめ、代表作品をくまなく網羅した約70件を展示。私も先行する京都展に行ってきましたが、老若男女様々なお客さんが熱心に見入っていました。
ハイライトは、唐招提寺御影堂に描いた障壁画の再現展示です。御影堂は現在修理中のため、魁夷の描いた障壁画は今後しばらく現地で観ることができません。御影堂内部を忠実に再現したセットで、魁夷が構想から完成まで10年を要した全68面を堪能できる非常に貴重な機会です。
展覧会名:生誕110年 東山魁夷展
会期 2018年10月24日~12月3日
会場 東京・国立新美術館
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8.ルーヴル美術館展(大阪)
※画像は東京展のものです
日本テレビとルーヴル美術館の長期提携により、4年に1回都度テーマを変えながら定期的に開催されるルーヴル美術館展。本年度のテーマは「肖像芸術」ということで、古代エジプトから19世紀の英雄ナポレオンまで、絵画・彫刻・工芸など、ルーヴル美術館が保有する様々な「肖像作品」を味わい尽くす展覧会。
ハイライトとなるナポレオンの肖像画や彫刻、デスマスク(!)は非常に迫力がありました。ルーヴル美術館らしい、歴史の重みとロマンをたっぷり感じさせてくれる展示構成は見事です。
展覧会名:ルーヴル美術館展
会期 開催中~2019年1月14日
会場 大阪・大阪市立美術館
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9.ピエール・ボナール展(東京)
ジャポニスムに強い影響を受け、ナビ派の代表的なメンバーとして活躍した青年時代から、色彩の豊かさ・面白さに目覚め、独自の作風を打ち立てた中期~晩年までの作品をまんべんなく網羅。
生涯連れ添った最愛の妻・マルトや家族、小動物などをモチーフとして、身の回りの生活風景や郊外の自然を、色彩豊かに表現した作品群は不思議な魅力にあふれています。絵画制作へのインスピレーションの厳選となったスナップ写真や、邸宅の障壁を飾った巨大な肖像画なども楽しめる、アート通好みの充実した展覧会です。
展覧会名:オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展
会期 開催中~12月17日
会場 東京・国立新美術館 企画展示室1E
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10.フィリップス・コレクション展(東京)
20世紀を代表する西洋美術の大コレクター、ダンカン・フィリップスが集めたコレクションから、モネ・ゴッホ・ピカソ・マティスといった近代西洋美術の巨匠作品が一挙来日。フェルメール・ムンク・ルーベンスと上野では西洋美術展の大特集が開催されていますが、こちらのフィリップス・コレクション展はそれに負けず劣らず貴重なアイテムが揃いました。
例年、上野が盛り上がっている時は東京駅周辺の展覧会が穴場になります。展示作品が「全員巨匠」で固められた力の入った展示ですので、西洋絵画好きの方は忘れずにチェックしてくださいね。
展覧会名:全員巨匠!フィリップス・コレクション展
会期 開催中~2019年2月11日
会場 東京・三菱一号館美術館
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例年以上に粒ぞろいの美術展! 芸術の秋を満喫しよう
2018年秋は、関東・関西を中心に、非常に力の入った大型企画展が目白押しです。この機会を逃すと、次に同じ作品を日本でまとまって観ることができるチャンスは20年後、30年後になるかもしれません。ふらっと出かけるには絶好の季節になりました。思い立ったら、是非気軽に出かけてみてくださいね。INTOJAPANでも、これら大型の企画展はしっかりフォローアップして、順次見どころを紹介していく予定です!
文・写真/齋藤久嗣