現在、全国各地で展覧会が開催されている藤田嗣治をはじめ、シャガール、モディリアーニら、エコール・ド・パリの画家の作品は、日本でも非常に人気があります。ポーランド生まれのユダヤ人画家、モイズ・キスリングもそのひとり。1910年、19歳でパリへ出てきてモンマルトルで活動を始めた彼は、社交的な性格で愛され、ピカソやブラックと交流を深めました。1919年には個展を開催。20代後半にはすでに画家としての名声を確立し、「モンパルナスの王様」と呼ばれました。
キスリングの作品は、ひと言で言えば“濃密”。女性像や裸婦、花を数多く描きましたが、色彩のコントラストが強く、画面が華やか。と同時に、ひと目でキスリング作品とわかる、独特の“憂い”を漂わせているのも特徴です。
日本では、公立・私立問わず、キスリング作品を所蔵する美術館は全国各地に点在しています。今回は、なかでも特にキスリングらしさが凝縮された3作品をピックアップ。
目が吸いつけられる肌の美しい質感、観る者を虜にする不思議な眼差し、心に強く残る色彩のコントラスト、…ぜひ、それぞれの絵の前に立って、その華やかさと憂いとが同居する独特の世界に浸ってください。
名古屋市美術館
2018年11月25日まで展示中。
郷土の美術を収集することから発展してコレクションを進めてきた名古屋市美術館。愛知県出身の画家、荻須高徳がパリに生き、パリを描き続けたことから、エコール・ド・パリの画家の作品を収集しています。キスリングも3作品所蔵しています。
キスリング「マルセル・シャンタルの肖像」1935年 名古屋市美術館蔵
「マルセル・シャンタルの肖像」は、観る者を射抜くような眼差しが印象的な、コレクションを代表する作品のひとつ。名品展「ザ・ベスト・セレクション」で展示中(開催中〜11月25日)
うろこの美術館
キスリングは横たわる裸婦の絵を数多く描きました。神戸・北野異人館のなかでも特に有名な洋館「うろこの家」に併設された美術館が所蔵する作品は、背景と膝掛けの赤から浮かび上がってくるような白い肌にうっとり。
モイズ・キリング「赤い膝掛けの裸婦」うろこの美術館蔵
※展示予定は美術館にお問い合わせください。
村内美術館
アットホームな雰囲気の美術館には、「キスリング秀作選」というコーナーがあるほど、キスリング作品が充実。黄色いミモザに、真っ赤なチューリップが映える。
モイズ・キスリング「ミモザとチューリップ」公益財団法人 村内美術館蔵
※展示予定は美術館にお問い合わせください。