江戸時代の浮世絵の人気とともに日本の版画技術は飛躍的に発展。19世紀後半には浮世絵が世界の美術関係者から高い評価を得るようになります。浮世絵に代表される日本の版画はいわば、日本美術を世界に広める役割を果たしてきたのです。
そんな、江戸時代から日本人にとってなじみ深かった「版画」をテーマにした展覧会が、4月9日~6月23日に、静岡県掛川の「資生堂アートハウス」で開催されます。
小村雪岱「お傳地獄 傘」 1935 年ごろ ※アートハウス展覧会「版画を楽しむ」より
さまざまに進化した近現代の「版画を楽しむ」
展覧会のタイトルは「版画を楽しむ 木版・銅版・リトグラフ・シルクスクリーン」。
注目したいのは、多彩な技法を駆使して表現領域を広げてきた、近現代の版画作品が取り上げられるところです。
版画とは「版」を利用して制作する絵画で、その技法は、木版画に代表される凸版、銅版画に代表される凹版、平版(リトグラフ)、孔版(シルクスクリーン)の4つに分類されます。
同じ版を用いて複数の作品を刷ることができるのが版画の大きな特徴で、版画による印刷物や美術作品は古くから世界各地で制作されてきました。
髙山辰雄『唐詩選』より「少年行」 1968 年 ※アートハウス展覧会「版画を楽しむ」より
時代やジャンルを超えた版画作品が集結!
今回紹介されるのは、銅版画家として世界的に活躍した駒井哲郎(こまい てつろう)や浜口陽三(はまぐち ようぞう)、日本画家の小村雪岱(こむら せったい)や髙山辰雄(たかやま たつお)、洋画家の脇田和(わきた かず)や中川一政(なかがわ かずまさ)、現代美術家の李禹煥(り うふぁん)や青木野枝(あおき のえ)のほか、デイヴィッド・ホックニーやサルバドール・ダリら欧米の作家による、時代やジャンル、技法を超越した版画作品約70点。
バリエーションに富んだ展示は眺めているだけでも楽しく、浮世絵以後の版画の発展の様子を目の当たりにすることができます。
青木野枝「水天12」 2007 年 ※アートハウス展覧会「版画を楽しむ」より
「資生堂アートハウス」とは
昭和53(1978)年に開設し、平成14(2002)年のリニューアルを機に美術館としての機能を高め、近現代のすぐれた美術品を収集・保存すると共に、美術品展覧会を通じて一般公開する文化施設として活動。
コレクションの中核は、資生堂が文化芸術支援活動の一環として東京・銀座の資生堂ギャラリーを会場に開催してきた「椿会美術展」や「現代工藝展」などに出品された絵画、彫刻、工芸品。
高宮真介、谷口吉生の設計によるアート性の高い建物も見どころのひとつで、昭和55(1980)年に「日本建築学会賞」。 平成22(2010)年には竣工後25年にわたって「長く地域の環境に貢献し、風雪を耐え、美しく維持され、社会に対して建築の意義を語りかけてきた建築物」と「その建築物を美しく育て上げることに寄与した人々」を顕彰するJIA25年賞(第9回)を受賞。
百瀬 寿「Square-Four Intersecting Stripes」 1975 年 ※アートハウス展覧会「版画を楽しむ」より
版画を楽しむ
木版・銅版・リトグラフ・シルクスクリーン
会期:2019年4月9日(火)~6月23日(日)
会場:資生堂アートハウス 公式サイト
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(4月29日、5月6日は開館)
入場料:無料
■関連企画「学芸員によるギャラリートーク」
会 場: 資生堂アートハウス
日時:4月26日(金)・5月25日(土)・6月14日(金)14:00~14:30
参加費無料、申込み不要 ※やむを得ない理由により、予告なく日程変更の場合があります
舟越 桂『水の下の小石』より「少年の日記」 1993 年 ※アートハウス展覧会「版画を楽しむ」より