オススメ展覧会11:「カラヴァッジョ展」(名古屋市美術館)
17世紀以降のバロック美術に決定的な影響を与えた巨匠中の巨匠として西洋美術史においては非常に名高いカラヴァッジョ。しかし日本では意外と知名度が低く、アートファン以外に名前を聞いても「誰それ?」と聞き返されることもしばしば。それもそのはず。カラヴァッジョは、フェルメールやダ・ヴィンチ同様非常に寡作で、日本に1点も作品が存在しないのです。また、彼の残した作品はイタリアを中心としてヨーロッパやアメリカなど世界中の教会やミュージアムに分散しているため、作品を集めて展覧会を企画するのが非常に難しいのです。
そんな中2016年に国立西洋美術館で開催された「カラヴァッジョ展」では、新出1点を含む12点ものカラヴァッジョ作品が大量に来日し、熱心なファンを楽しませてくれました。これでしばらく数十年はもう展覧会はないかな・・・と思っていた矢先!なんと2019年も札幌、名古屋、大阪を巡回するカラヴァッジョの大型企画展が再び始まっているのです!
本展では、イタリア国内の所蔵作品を中心に、10点あまりのカラヴァッジョ作品(帰属作品含む)と彼の熱心なフォロワー「カラヴァジェスキ」を中心とした同時代の画家たちを加えた約40点が公開。圧倒的な描写力、強烈な明暗、生々しい場面構成など、強烈なインパクトを持った作品揃いです。
この秋開催されるのは札幌展、名古屋展の2つですが、それぞれ会場によって来日するカラヴァッジョ作品が異なるため、「3会場回る!」という熱心なファンも多いようですね。今回こういう寡作な巨匠の作品は、一度見逃すとその後生きているうちは二度と来日しない可能性が非常に高いので、少しでも気になったら展覧会に足を運ばれることを強く推奨します!
展覧会名:「カラヴァッジョ展」
会場:名古屋市美術館(〒460-0008 名古屋市中区栄2-17-25 芸術と科学の杜・白川公園内)
会期:2019年10月26日(土)~12月15日(日)
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オススメ展覧会12:「ミュシャと日本、日本とオルリク」(千葉市美術館)
関東のミュシャファンには朗報です。Bunkamura ザ・ミュージアムで「みんなのミュシャ展」を見たあと、さらに「おかわり」として別のミュシャ展が千葉市美術館で始まりました。といっても、本展でフィーチャーされているのはミュシャだけではありません。日本にもゆかりのあった同郷チェコのアーティスト・オルリクにも焦点が当てられているのです。
エミール・オルリクはプラハ出身の木版画家で、プラハ、ミュンヘンで絵画修業をした後、世界各国を旅しながら学び続けるうちに、日本の浮世絵版画に強い興味を持つようになります。そこで1900年に通訳も伴わず単身来日。日光や鎌倉、京都、箱根と行った景勝地を旅しながら日本の原風景に触れ、浮世絵制作を通して木版画技術を学びました。帰国後、彼は日本の風景を元にした木版画をウィーン分離派展などに出品するなど、日本で学んだ成果をアーティストのキャリアの中でしっかりと生かしています。
本展は、ジャポニスムに強い影響を受けたとされるミュシャが手掛けた膨大な商業美術の作品群だけでなく、オルリクの作品や来日時の資料等を通じて、日本と西洋美術の関わりを学べる展覧会。オルリクって誰なの?という情報を事前にある程度知っておくことが、本展をより深く楽しめるキーポイントになるかもしれません。千葉市美術館の展覧会はいつも「超大盛り」ですから、展覧会をしっかり楽しむためにも公式HPやWikipediaなどでササッと事前に基本的な情報を得てから展覧会に臨まれることをおすすめします!
展覧会名:「ミュシャと日本、日本とオルリク」
会場:千葉市美術館(〒260-0013 千葉市中央区中央3-10-8)
会期:2019年9月7日(土)~10月20日(日)
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オススメ展覧会13:「シャルル=フランソワ・ドービニー展 印象派へのかけ橋」(三重県立美術館)
19世紀中盤、歴史画や肖像画といった伝統的なアカデミズムで描かれてきたモチーフよりも、郊外に出かけて森や湖、川辺の景色と行った素朴な自然を好んで描いた画家の一派がいました。彼らは、パリ郊外のフォンテーヌブローにあるバルビゾン村を拠点にグループで制作することが多かったため、その場所にちなんで「バルビゾン派」と呼ばれます。
そんなバルビゾン派の有力な画家として知られるドービニーの史上初となる日本での大規模な展覧会が、現在国内の美術館を巡回中です。本展では、ドービニーの作品約60点に加え、ルソー、ディアズ、コロー、ミレーといった彼の周辺の作家の手による約20点の作品も合わせて来日。
彼らは農村における牧畜の風景や素朴な農民たちの暮らし、鬱蒼とした森の中の風景などを繰り返し好んで描きましたが、ドービニーはとりわけ川べりの「水」のある風景を好みました。愛する一人息子をつれて、愛船ポッタン号に乗って毎日移動しながら絵を描き続けました。
「なんか地味なイメージがあるよね」「印象派と違って、なんかちょっと暗いんでしょ?」と思われた方こそ、ぜひ本展に足を運んでみて下さい。特にモネら一つ下の印象派世代の画家たちとの交流を持つようになってから、彼らから影響を受けたドービニーが開いた晩年の新境地は要注目。よく油絵は「画像」で観るのと「本物」を直接観るのでは全く印象が違う・・・とは言われますが、ドービニーの作品はまさに「本物」を見る必要があると思います!
展覧会名:「シャルル=フランソワ・ドービニー展 印象派へのかけ橋」
会場:三重県立美術館(〒514-0007 津市大谷町11)
会期:2019年9月10日(火)~11月4日(月・休)
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オススメ展覧会14:「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」(福岡市美術館)
19世紀末フランスで活躍した象徴主義絵画の巨匠ギュスターヴ・モローの展覧会です。2019年夏、パナソニック汐留美術館を皮切りに全国を巡回中の本展ですが、東京展では会期終盤に大行列が発生。観た人の口コミ効果で評判を呼び、パナソニック汐留美術館はすでに大入りとなった本展で年間目標集客数を達成してしまったのだとか。では、本展の何がそんなにアートファンを惹きつけたのでしょうか?
それは、本展で明確に設定された魅惑的なテーマだったのだと思います。モロー作品は、新約聖書の著名なエピソード「サロメ」を始めとして、聖書や神話をテーマにしたファム・ファタル(男を破滅させる魔性の悪女、宿命・運命の女性)で知られます。
本展は、モローが描いた「ファム・ファタル」を徹底的に特集。ぶっちゃけ、ほぼ全点が「ファム・ファタル」やそれらを想起させる関連作品が集められたと言っても過言ではありません。たとえば、モローが描いた「悪女」は、モネやルノワールが描いた身近な女性たちと何が違っているのか?他の巨匠たちの描いた女性像と比較しながら観ても面白いかもしれませんね。モローの名品を多数所蔵する「ギュスターヴ・モロー美術館」の全面協力の下、充実したラインナップでモローの神秘的な作品世界をガッツリ味わってみてくださいね。
展覧会名:「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」
会場:福岡市美術館(〒810-0051 福岡市中央区大濠公園 1-6)
会期:2019年10月1日(火)〜11月24日(日)
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オススメ展覧会15:「奇蹟の芸術都市 バルセロナ展 ―ガウディからピカソ、ミロ、ダリまで―」(札幌藝術の森美術館)
2019年は「ウィーン」をテーマとした展覧会「ウィーン・モダン展」が東京・大阪で大きな話題を呼びましたが、実は同時期にスペインの「バルセロナ」をテーマとした美術展が日本全国を巡回中なのです。(長崎、姫路、札幌、静岡、東京)
本展では、スペイン、カタルーニャ自治州の国際都市にして州都「バルセロナ」の近代以降の芸術・文化を幅広く特集。都市・バルセロナが急速に近代化するきっかけとなった19世紀後半のイルダフォンス・サルダーによる都市計画から、バルセロナ万国博覧会開催(1888年)、スペイン内戦(1936-39年)に至るまでの約80年間に着目し、建築、絵画、彫刻、家具、宝飾品など幅広いジャンルを取り上げてバルセロナの魅力を紹介。出展作家も非常に充実しており、アントニ・ガウディ、リュイス・ドゥメナク・イ・ムンタネー、ジュゼップ・プッチ・イ・カダファルク、サンティアゴ・ルシニョル、ラモン・カザス、パブロ・ピカソ、ジュアン・ミロ、サルバドール・ダリなど各界の巨匠たちの業績を「バルセロナ」を切り口に俯瞰して楽しむことができます。
スペイン好きや美術ファンにはもちろん、歴史ファンにもおすすめしたい注目の展覧会です!「ウィーン・モダン展」とセットで回るのも面白そう。
展覧会名:「奇蹟の芸術都市 バルセロナ展 ―ガウディからピカソ、ミロ、ダリまで―」
会場:札幌藝術の森美術館(〒005-0864 札幌市南区芸術の森2丁目75番地)
会期:2019年9月14日(土)〜11月4日(月)
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