Art
2019.09.05

「正倉院展」で知られる奈良国立博物館。仏教美術のお宝がぞろーり、ぞろーり!

この記事を書いた人

奈良公園の一角にある「奈良国立博物館」は、「東京国立博物館」に次ぎ日本で2番目に古い国立の博物館。東大寺、興福寺、春日大社などに隣接していて、ゆったりした空間の中で優れた仏教美術が鑑賞できます。仏像など古都奈良の文化財を展示する博物館の見どころや展覧会情報をご紹介します。

奈良国立博物館とは?

奈良国立博物館の歴史は、開館以前の明治8(1875)年からほぼ毎年、計15回開催された奈良博覧会から始まりました。奈良博覧会第1回は東大寺大仏殿と周囲の回廊を会場に、正倉院の宝物をはじめ、社寺や個人から出品された美術品を陳列し大盛況を記録。それが博物館計画へとつながり、興福寺旧境内である現在地に建設され、明治28(1895)年に開館しました。

奈良に国立の博物館を設立した目的は、明治維新後の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の影響を受けていた社寺に伝わる多数の名器・重宝を保管し、認知を広めることと保存に協力することがあげられます。昭和になると各社寺からの寄託品は徐々に増え、昭和12(1937)年には収蔵庫を建築。吉村順三の設計による「西新館」と「東新館」が加わり、2016年4月には展示室を大幅に改装し、旧本館を「なら仏像館」としてリニューアルしました。

仏像だけじゃない!奈良国立博物館の魅力

是非ともチェックしたい、国宝5選!

そんな歴史ある奈良国立博物館では仏教と関わりの深い古美術品や考古遺品を多く所蔵しています。館蔵品約1,800件と寺社からの寄託品約2,000件のうち、今回はおすすめの国宝5点をご紹介します。なお、奈良国立博物館のホームページでは、「今日見られる国宝」というページで現在展示されている国宝を確認することができます。

国宝『辟邪絵』

古来中国で行われた、邪悪な鬼を祓う図絵に類する本作に描かれているのは、天界の星々を司る中国の道教神「天刑星(てんけいせい)」。朱・丹・緑青の対比や、力強い肉親描写に目を見張ります。

『辟邪絵(へきじゃえ)』 国宝 平安〜鎌倉時代(12世紀) 奈良国立博物館蔵

国宝『十一面観音像』

仏像で人気の高い「十一面観音像」ですが、こちらは平安時代につくられた、礼拝のため絹本に描かれた唯一の作品。豊麗な彩色と繊細な截金(きりかね 金箔などを細く直線状に切ったものを、筆と接着剤を用いて貼ることで文様を表現する伝統技法)文様が制作時の様子を伝える名品です。

『十一面観音像』 国宝 平安時代(12世紀) 奈良国立博物館蔵

国宝『山水図(水色巒光図 すいしょくらんこうず)』

詩画の軸の余白は、多くの詩文(画賛)で埋められているものですが、本作ほど余白が生かされた例は珍しく、雪舟以前の日本の水墨画の転換点を示す傑作です。

『山水図(水色巒光図)』 国宝 室町時代・文安2(1445)年

国宝『薬師如来坐像』

中国から伝わった、木の堅さと香りのよさ、木目の美しさ、希少性を生かす香木を素材にした檀像のひとつで、一木(いちぼく)から削り出されました。平安時代初期に典型的な、優れた仏像の作例です。

『薬師如来坐像』 国宝 平安時代(9世紀) 奈良国立博物館蔵

国宝『尺牘(久隔帖)』

現存唯一の最澄自筆書状で、高雄山寺(たかおざんじ 今の神護寺)の空海の下にいた愛弟子の泰範(たいはん)に宛てたもの。7歳年下の空海に対して礼を尽くす格調高い文面が、最澄の人柄を偲ばせます。

『尺牘(久隔帖 せきとく きゅうかくじょう))』 最澄 国宝 813年 奈良国立博物館蔵

なら仏像館、青銅器館、ミュージアムショップ・・・いつ行っても見どころ満載!

奈良国立博物館といえば、秋に行われる「正倉院展」が有名ですが、常設展示の目玉といえば、飛鳥時代から鎌倉時代にいたる優れた仏像群です。国内の博物館で最も充実した仏像の展示を誇る「なら仏像館」、中国古代青銅器のコレクションを収めた青銅器館、絵画・書跡・工芸品・考古遺品の名品を1か月ごとに展示替えしながら紹介する西新館。特別展を担当する東新館だけでなく、いつでも力の入った展示が楽しめます。

「なら仏像館」外観

なお、片山東熊(とうくま)設計の「なら仏像館」は玄関まわりの装飾が意匠的にすぐれ、昭和44年 (1969)に「旧帝国奈良博物館本館」として重要文化財に指定されており、明治中期の欧風建築として代表的な建築として楽しめます。

そのほか、ミュージアムショップのグッズは仏像キャラのグッズが充実! 中でも仏像をかわいいイラストタッチに図案化した、その名もユニークな「元気が出る仏像シリーズ」が人気です。

スタンプ(23種類) 各324円

2019年9月から2020年3月までの特別展

いのりの世界のどうぶつえん

仏教美術を始めとする祈りの美術の中から、動物や想像上の生き物を表し、描いた作品を集めて紹介。「どうぶつたち」はなぜ、仏や神の世界にさかんに登場するのか、その秘密に迫ります。
期間:2019年7月13日(土)~9月8日(日)

御即位記念 第71回 正倉院展

奈良博覧会を引き継いだ「正倉院展」は今や奈良の秋の風物詩。正倉院宝物の成り立ちと伝来に関わる宝物や、宝庫を代表する宝物を展示。
期間:2019年10月26日(土)~11月14日(木)

毘沙門天 ー北方鎮護のカミー

近年、毘沙門天の彫像に関する発見が相ついでおり、今回の展覧会では、未紹介の作品に、とくに優れた作品を厳選してくわえ、毘沙門天像の魅力が味わえる内容。
期間:2020年2月4日(火)~3月22日(日)

奈良国立博物館の利用案内

住所:奈良県奈良市登大路町50番地

開館時間:9時30分〜17時(年末年始を除く毎週金・土曜日は20時まで)
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※上記以外の開館時間延長日について、くわしくは公式ホームページ(利用案内 – 開館時間・休館日等)をご覧ください
※特別展の開館時間は特別展のページをご覧ください

休館日:毎週月曜日(休日の場合はその翌日。連休の場合は終了後の翌日)、1月1日

観覧料金:一般 520円 大学生 260円
※名品展(特別陳列を含む)の料金。特別展は別料金。

■奈良国立博物館のアクセス
・近鉄奈良駅下車 登大路を東へ徒歩約15分
・JR奈良駅または近鉄奈良駅から市内循環バス外回り「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ

近隣の観光スポット

奈良国立博物館の近くには「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録されている建造物などが多数あり、どれも奈良国立博物館に行ったなら立ち寄りたい場所です。

興福寺

藤原氏の祖・藤原鎌足とその子・藤原不比等ゆかりの寺院で、藤原不比等の娘光明皇后が建立した「五重塔」や奈良時代に制作された国宝「阿修羅像(あしゅらぞう)」など多くの文化財を所蔵している。

東大寺

天平15年(743)に聖武天皇が国全体をまもる寺として造営。「奈良の大仏」として知られる盧舎那大仏(るしゃなだいぶつ)が本尊です。

春日大社

平城京の守護と国民の繁栄を祈願する為に創建された藤原氏の氏神社で、全国に約1000社ある春日神社の総本社。藤原氏の氏神のひとり、武甕槌命(たけみかづち)が鹿に乗ってきたとされることから、鹿を神使としています。

元興寺(がんごうじ)

蘇我馬子が飛鳥に建立した日本最古の本格的仏教寺院である法興寺(飛鳥寺)が、平城遷都にともなって、移転した寺院です。かつては「南都七大寺」の一つとして威勢を振い、現在の奈良市街の南東部を占めていましたが、現在では僧坊の一画が唯一現存。国宝「極楽堂(極楽坊本堂)」と国宝「禅室(極楽坊禅室)」が世界遺産に登録されています。

薬師寺

「南都七大寺」として、東大寺や法隆寺などと並んで朝廷の保護を受けていた寺院。元々は天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を祈願して発願。天武天皇が病に倒れたあとは亡き夫の遺志を受け継ぎ、持統天皇が伽藍を完成させました。白鳳時代の仏教彫刻を代表する国宝の「薬師三尊像」が本尊で、心身の健康を願う参拝客が全国から訪れます。

唐招提寺

6度目の渡航でようやく日本にたどり着き、日本の仏教の発展に尽くした唐の僧侶、鑑真が戒律を学ぶ人たちのための修行の場として創建。国宝の金堂は奈良時代建立の寺院金堂としては現存唯一のものです。

※本記事は、雑誌『和樂』2015年和樂8・9月号、2016年8・9月号別冊付録、を再編集したものです。
※観覧料金などの情報は2019年9月2日現在のものです。