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Craft
2019.09.13

「北大路魯山人、名前は聞いたことある」そんな人もきっと好きになる!作品のグッとくる鑑賞ポイント

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魯山人(ろさんじん)の器は大胆で豪快! そんな魯山人作品ならではの絵付けと造形美について、最もよくわかるふたつの代表作をピックアップしました。鑑賞ポイントや特徴について、具体的に検証してみましょう!

まずは知りたい、魯山人の器の特徴

魯山人の器は、実はよく観察してみると、その特徴のなかにも、ふたつの異なるツボが隠れていることに気づきます。まずは「自由闊達な絵付け」。左右対称のかたちをした鉢や、きれいな正円の皿には、中国の明時代の代表的な図柄や日本の琳派の意匠が、魯山人という優れた芸術家の眼を通して表現されています。美しく成形された器は絵付けに注目し、絵の背景にある美の歴史に思いを馳せる。これがひとつ目の魯山人の美のツボです。もうひとつのツボは、「豪快な造形美」。俎板皿(まないたざら)や木葉皿(このはざら)のように轆轤(ろくろ)を使わないでつくられた器からは、魯山人の激しさが伝わってきます。表面に加工された凹凸や、粘土を切りとった跡を見ると、大胆不敵な芸術性が浮き彫りに。端整な陶磁器とは対極にある力強さが魅力です。また荒々しい土肌の表情にもご注目を!

魯山人の器、代表作を例に完全指南!

長板鉢で検証!「織部釉長板鉢」

魯山人器「織部釉長板鉢」昭和15(1940)年ごろ 足立美術館蔵

長さが約50㎝にも及ぶ大きな板状の器は、まるで本物の俎板のよう! 魯山人にとって、この大きな面は、未知のキャンバスだったに違いありません。魯山人は、こうした大作の板皿に本領を発揮しました。草文の絵付けをしたものは、より大胆かつ典雅に。

魯山人器草文の絵付けをした板皿。「織部俎板盤」昭和24(1949)年 京都国立近代美術館蔵

また櫛目の技法も用いるなどして、縦横無尽にその世界を展開します。釉薬の深緑は奥深さを増し、波模様の濃淡が作品に複雑さをもたらしました。造形や釉薬の変化が楽しめる作品です。戦後の昭和21(1946)年以降、織部の同様の器が数多くつくられ、大変な人気を得ることになりました。

魯山人器

それまでなめらかに仕上げるのが一般的とされていた表面を、あえて波形に削り、細かな凹凸をつけています。釉薬をほどこすと、繊細な濃淡が表れる仕掛け。リズミカルな波模様が、緑釉に濃淡と輝きをもたらしているのです。

魯山人器

これらの板皿は、調理場にある俎板をヒントにつくられました。ゆるやかに曲げて中心をつくり、ドラマチックに仕上げた表現に魯山人の独創性が光ります。また、加工がしやすいように、粘りの強い信楽(しがらき)土を使用。織部には美濃の土という常識も、打ち破りました。

魯山人器

食器の裏側は、抹茶茶碗の高台(裏の底部)に匹敵します。おしゃれな切り込みを入れ、食器の高台さえ見どころに。このように、高台にまで見どころをつくった陶芸家は、魯山人以外にいません。脚の高さもちょうどよく、持ちやすさも抜群です。

鉢で検証!「雲錦鉢」

魯山人器魯山人58歳ごろの作品、「雲錦鉢」。足立美術館蔵蔵

雲錦(うんきん)模様とは、春の満開の桜と秋の紅葉を描いた色絵のことで、琳派の作品によく登場する馴染み深い柄。京焼の尾形乾山(おがたけんざん)や仁阿弥道八(にんなみどうはち)が、数多く作品に取り入れてきました。魯山人は、こうした伝統柄の再解釈が、とても上手かったといわれています。きれいな正円の鉢や壺、皿などは、轆轤の得意な別の職人が成形を手がけ、魯山人は絵付けに専念していました。魯山人の絵付けは手馴れたもので、描き方に迷いがありません。時として稚拙に見える部分さえ“味”にしています。だから、とても現代的に感じるのでしょう。そこが実に男前な絵付けなのです。

魯山人器

魯山人は、乾山や道八の名品を参考にしながら、まったく新しい琳派の作風を生み出しました。鉢の内側は桜の分量がやや多く、外側は小さな紅葉が鋭角に底に向かって配されています。その絶妙なバランスがカッコよく、魯山人が極めて近代的なバランス感覚の持ち主だったことがよくわかります。

魯山人器

絵付けの器は、きれいに発色する信楽土を多用しました。なるべくキメの細かいものを用いて、絵付けがしやすいものを選んだといいます。手に入りやすいというのも、信楽土を多用した理由のひとつでした。高台には「魯山人」(上写真)と釘彫で名が記されています。

魯山人器

きっちりとひとつひとつの桜や紅葉を描くのではなく、塊として表し、その上に刷毛目で、ものすごい速さで金彩をほどこしています。スピード感あふれる華やかな描写で、古典的な雲錦鉢を一新。この洒脱さが魯山人の特徴なのです。