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永遠のふたり 白洲次郎と正子

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Craft
2019.09.03

三島由紀夫も愛用したメイドインジャパンの逸品。日本最古の高級シャツブランドが超おすすめ

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日本人の几帳面さが生きる、製法はあえて“マシンメイド”

型紙や縫製もオリジナルかつ一流です。130年もの間、既製品のみならずビスポーク(オーダーメイド)で培った経験によるパターンは、日本人体型の特徴を捉えた超立体設計。欧米人と比べて胸に厚みがない分後ろにゆとりをもたせ、さらに巻き肩の多い日本人に合わせて、そではジャケットのように前振り(そで先が前に向かうようカーブをつける)に。最近はオーバーサイズのシャツも流行していますが、見た目はフィットしているけれど、一日着ていても動きやすく疲れにくいパターンを体現したのが「蝶矢シャツ」なんです。

縫製の方法も独特で、上質なシャツというと、ハンドメイドのほうが手が込んでいる印象ですが「蝶矢シャツ」はマシンメイド。これは「美しいものを均一につくり上げる」というブランドポリシーによるものです。ハンドメイドの味や温もりではなく、いつも同じ品質であることに価値を置く。アーティストではなくブランドとしての誇り、そしてそれを可能にできる日本人の几帳面さの表れと言えるでしょう。ただし、非常に立体的なパターンのため曲線縫いを駆使しなくてはならず、現在「蝶矢シャツ」が縫えるのは限られた職人のみ。通常の半分の速度を保ちながら、ゆっくりと流れるように縫製していくテクニックが必要で、それゆえ分業も不可能です。つくれるのは1日に1枚が限度で、このように、ひとりの縫製士が裁断から仕上げまでを一貫して行うつくり方を”丸縫い”というのですが、すべてのパーツの縫い目がそろうなど、シャツを美しく仕上げるには必要な方法。マシンメイドとはいうものの、それは決して大量生産を意味するのではなく、上質で着心地のよいシャツを均一につくる、という職人魂の結晶でした。

横に渡る切り替えも曲線なことにご注目!

ほかにも、美しさ、着心地のよさには秘密があります。「蝶矢シャツ」をもっともっとクローズアップしてみましょう。

こちらはシャツのすそ。ステッチまでの幅が2㎜ということですが、どう見ても2㎜もなさそう…。信じがたいほどギリギリのところにステッチが入っています。


前肩、カフス付け部分などには、生地の端を一度縫ったものを折り返して仕上げる、地縫い返しという方法を採用。手間はかかりますがこれで段差がなくなり、見た目がきれいなだけでなく肌触りも優しく。耐久性も生まれます。


アームホールの内側は、手縫い風のすくい縫いが。これは独自で改造したミシンによる、世界初の技術だとか。別々に縫製した身ごろとそで筒を縫いつけたあとに行う作業ですが、超低速でテンションをかけずに縫うことで、伸縮性と強度を確保。この均一性はハンドメイドでは叶いません。


ボタン部分もクレイジーなほどにこだわりが。まずは裏側。糸の端が見えません(特殊なミシンを使っているそう)!「シャツは素肌に着るもの」という意識から、肌に当たる部分もなるべくきれいに仕上げるこだわりのひとつです。これは天皇家のシャツをつくっていた背景もあり、当時の配慮が反映されていいます。そしてボタン自体も裏側に丸みがある形状をオーダー。なぜなら、このほうがボタンをかけやすいから。ちなみにボタンホールも、よーーーく見ると、片側だけ放射状にカーブさせた機能的なつくりに。…すごすぎる!!!