Craft
2019.09.10

京都の茶筒の老舗「開化堂」の新作はティーバッグのための保存缶

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茶筒=茶葉のためにものづくりを続けてきた開化堂ですから、大前提に「茶葉で淹れたお茶を飲む生活」の提案があるもので、そこは揺らぎがないものと思い込んでいたわたしです、、、。「ついに開化堂もティーバッグ用の缶をねぇ」といった戸惑いもあり、同時に「そうは言っても、現代の生活にこれが登場したら喜ぶ人はたくさんいるよね?」と歓迎する思いもあり、複雑な思いで完成したばかりの実物と対面したのでした。
あら? これ、かわいい!

写真の「小もり」16,000円(税抜)は三角錐形のティーバッグがおよそ7袋入る容量。特製のトングは中ぶたにぴったり収まる設計で、この気の利いた感じが日本の手工芸ならでは。10袋入る「大もり」17,000円(税抜)もある。
これも、欲しいな。
実物を見たら、頭でごちゃごちゃ考えていたことが吹っ飛んでしまいました。そうしてお会いした6代目の八木隆裕さん。老舗の当主のイメージやら、気難しい職人のイメージからも遠く離れて爽やかです! 思わず「期待していた新商品が茶筒でなくて、びっくりしました」と口走ってしまいました。
先代、すなわち隆裕さんの父は自分の代で家業を畳むつもりだったが、隆裕さんが6代目を引き継いで海外輸出という手法によって取引先を拡大。新しい開化堂の道を切り開いている。
「開化堂がティーバッグ用の缶をつくることに賛否両論あるのは、僕もわかっています(笑)。ただ、僕の知っている若い子たちは実際、茶葉でお茶を淹れる子は少ないですからね。育った家にすでに急須がなかったりするようで、『使ったことがないし、どんなものがいいのかわからないから開化堂で安く急須をつくってくれませんか』って真顔で言われたりするんですよ(笑)。時代が変わって、ティーバッグを使う人が増えてきたのなら、それ専用の収納缶があってもいい。いろんな間口があって、そこから開化堂を知ってもらえたらと思っているんです」と八木さん。

ティーバッグ以外にも用途が広がる収納缶は、開化堂の新しいものづくり象徴

さて、こちらのTea Bag缶。開化堂が経営する「Kaikado Café」で提供している「EN TEA」のティーバッグを入れることを前提として開発されました。カフェで飲んで気に入った方がティーバッグを購入することが多く、それであればその収納缶もあった方がいいということがこの缶の誕生の理由です(Kaikado Caféについては次の記事で紹介します)。ティーバッグはもちろん、スパイス入れにも使えそう。お茶用の砂糖や干菓子を入れてもいいな、と使い道がいくつも思い浮かんできます。小さくて完璧な収納缶、実は必要としていた人は多いのかも?

書いた人

職人の手から生まれるもの、創意工夫を追いかけて日本を旅する。雑誌和樂ではfoodと風土にまつわる取材が多い。和樂Webでは街のあちこちでとびきり腕のいい職人に出会える京都と日本酒を中心に寄稿。夏でも燗酒派。お燗酒の追究は飽きることがなく、自主練が続く。著書に「Aritsugu 京都・有次の庖丁案内」があり、「青山ふーみんの和食材でつくる絶品台湾料理」では構成を担当(共に小学館)。