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2019.09.07

京都の茶の湯王道スポットで日本美を実感。喫茶処「茶寮宝泉」と老舗茶道具商「中西松豊軒」

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京都では、あらゆる場所でお抹茶や和菓子が楽しめます。けれどせっかくならば、京都らしい庭と日本建築が味わえる究極の空間で、クオリティの高い一服を味わいたい! そんな大人のワガママがかなう喫茶処をご紹介します。美味しいお抹茶を一服いただいて至福の時間を過ごしたら、老舗茶道具商に立ち寄る……楽しい冒険のはじまりです。

美味しい和菓子とお抹茶でひと休みするなら…
明治の名建築を改装した「茶寮宝泉」へ

下鴨神社の北にある「茶寮宝泉(さりょうほうせん)」は、京都のよさをしみじみと実感しながらくつろげる喫茶処です。いちばんの見どころは、端整な庭。商工会議所の元会頭が住んでいた築100年の屋敷を店舗に譲り受けた際、「日本庭園は一代でならず。庭を大事にしてほしい」という言葉をいただいたのだとか。茶寮宝泉は、今もその言葉を守り続けているのです。

室内の光がさまざまに表情を変える開店すぐに訪れるのがおすすめ。座敷は9席、わが家にいるようなくつろぎ感です。

茶寮宝泉といえば、見るからに涼しげなフルフルのわらび餅が有名ですが、ここではぜひ、あんこを使った上生菓子と抹茶のセットを味わってみてください。あんこの美味しさは、地元の方々の折り紙付き。季節ごとの部屋のしつらいも、美空間に落ち着きを与えています。

季節の上生菓子と抹茶のセット950円(税込)。冷抹茶や玉露のセットも。常時5種類ほどある季節の和菓子は個別に購入可能。

左/凝った意匠の灯りもかわいい。右/夏季にはお客様の8割がオーダーするという国産本わらび粉を丹念に練り上げてつくっている「わらび餅」1,100円(税込)。はじめは黒蜜をかけずに素材の味を確かめてみて。

◆茶寮宝泉
住所:京都市左京区下鴨西高木町25
営業時間:10時~17時(ラストオーダー:16時45分)
定休日:水曜日・木曜日(祝日の場合、翌平日休み)
公式サイト

毎日の暮らしを豊かにする美術品を探すなら…
老舗茶道具商「中西松豊軒」へ

京都の心地よさは、狭さではないかと思うことがあります。歩ける範囲に名店がギュッと集まっている。それを実感するのが、骨董店や古美術店が軒を重ねる古門前・新門前エリア。鴨川から東大路通までの500mの間に20数軒が並ぶ日本有数の美術ストリートです。その一画に明治40(1907)年創業の老舗茶道具商「中西松豊軒(なかにししょうほうけん)」があります。

「桃山から江戸時代にかけての茶道美術を中心に、これまで興味のなかった人も魅了するさまざまな日本・西洋美術の名品を取り扱っています」と語るのは、4代目主人中西輝之さん。

入りにくい店構えではいけないと、平成24(2012)年に店舗の隣にギャラリーをオープン。そして2017年秋、この並びに日本美術と宿泊施設との融合を目ざしたラグジュアリーホテル「ART MON ZEN KYOTO」を開業させました。

しかし京都の古美術界きっての革命児として知られる中西さんは、新たな試みばかりが注目を浴びるのはちょっと違う、といいます。

「真面目に商売をしていないと続きません。価値あるものをどうわかってもらうか。その方法は現代的になっても、根底には名品を扱ったら負けない、という自負があります。いろんなお店を回ったうえで、中西松豊軒のファンになってくださるとうれしいですね」(中西さん)

家元の箱書のある茶道具から野々村仁清といった京都らしいやきもの、そして現代アートまで、中西松豊軒は、軽やかに伝統を飛び越えて日本美の紹介に取り組んでいます。

上部に虫食いの跡が残る水指(みずさし)は、味わい深い古染付(こそめつけ)。のびやかな竹の表現に魅せられる。茶碗は桃山時代の鼠志野(ねずみしの)。それに江岑(こうしん)好みの桐蒔絵の中棗と、表千家6代覚々斎原叟(かくかくさいげんそう)の銘「相生(あいおい)」の茶杓を取り合わせて。釜は古芦屋(こあしや)の車軸釜。写真の釣り釜は、茶の湯の世界では春の訪れを象徴する道具のひとつ。 

店内にある美術品は…

各流派の茶道具や鑑賞陶器にも高い見識をもち、さまざまな切り口のアートを提案する中西松豊軒。東京など遠くから来られるお客様も多いのだとか。本物の日本美とともに京都の旅を楽しんでほしいという願いから、店内にある美術品の一部は、隣のホテル「ART MON ZEN KYOTO」の部屋にも飾られています。

左/樂家11代慶入作の黒樂茶碗など、樂茶碗の品揃えが豊富。右/大胆な趣の古伊賀耳付(こいがみみつき)花入に、曙椿や唐桃を添えて。

左/合口に細やかな鱗文(うろこもん)のある仁清作菊文中次(きくもんなかつぎ)。右/飛青磁浮遊環付瓶(とびせいじふゆうかんつきへい)は明代の龍泉窯(りゅうせんよう)のもの。奥行きのある青の釉薬の上に、優美な斑文が点々と散っている。

陰翳が美しい数寄屋造りのなかで、茶道具を拝見できる店内。

◆中西松豊軒
住所:京都市東山区古門前通大和大路東入元町388-1
営業時間:10時〜18時
定休日:日曜
公式サイト