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大人だけが知っている!「静寂の京都」

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Craft
2020.03.14

おっしゃれー♡なだけじゃない!『パピエラボ』のオリジナル商品には日本技術が詰まっていた!

この記事を書いた人

「別に、紙オタクってわけじゃないんですよねぇ…」
そうぽつりと語る『パピエラボ』店主・江藤公昭(きみあき)さん。え、そうなんですか?てっきり「もういいです!」ってこちらがお腹いっぱいになるほどの、紙への暑苦しすぎる愛についてうかがえると思っていたのですが(『マツコの知らない世界』イメージ)。
東京・千駄ヶ谷にある『パピエラボ』は、紙と紙にまつわるプロダクトをテーマにしたショップ。活版印刷物のオーダーと、オリジナル商品をはじめ、国内外からセレクトした雑貨の販売をしています。デジタル社会が進み「ペーパーレス」というワードが話題となる中、「紙」と向き合う専門店という存在が気になり、お邪魔してきました。

ショップのスタートは活版印刷との出合いから

「店を始めたのは2007年なのですが、飽き性なので、まさかこんなに続くとは思っていませんでした。活版印刷の再生を目的とした展覧会に参加したのが、この世界を知るきっかけなんですが、そのときも印刷物っていいな、くらいの気持ちだったんです」
当時、江藤さんは家具や生活雑貨を扱うショップ『プレイマウンテン』を営むランドスケーププロダクツに勤務。バイイングに携わり、アメリカやフランス、イギリスなどを訪れていました。
「そのとき初めて活版印刷のポストカードに出合ったんですが、技術や背景というよりは、単純にでこぼこした質感に惹かれました。木や陶器を見るのと同じ感覚ですね。『プレイマウンテン』では紙類を扱うことはなかったし、当時も『高いなぁ』って思ったんですけど買い付けることにして」
ひょんなことから活版印刷に関わることとなった江藤さんですが、前述の展覧会でのさまざまな人との交流が、すぐさま専門ショップを構えることへとつながっていきます。「こんなに魅力的な人がたくさんいるなら、日本でも面白いことができるんじゃないかと思って。会期中に紙のプロダクトの企画を立てたんです」
活版印刷が世界的に盛り上がっていた当時、興味がある人は増えていたものの、職人によっては気難しい人も。オーダーしたくても敷居が高いと考えた江藤さんは、職人とお客様をつなぐ窓口になれないかと『パピエラボ』を立ち上げました。当初は会社の空いているスペースで活動を始めたそうです。

店舗にある活版印刷のオーダー見本。名刺をはじめ、ポストカードなど、デザインも含めて相談に乗ってくださいます。

これもメイドインジャパンなの?一見そうは見えないものに日本の技術が詰まってました

その後『パピエラボ』は独立、3年前に現在の場所に店を構えるに至ります。ご覧のように洗練された店内には、魅力的な商品がいっぱい。ひとつひとつをじっくり見ていると、すぐに時間が経ってしまいそう…。


かわいい缶!

「それ、浅草の『加藤製作所』につくっていただいているオリジナルのペンケースなんです。サイズや色をこちらで考えて、お願いして」
まさかのメイドインジャパン!「加藤製作所」は明治28年創業の老舗茶筒メーカー。シンプルだけどモダンで、絶妙な色味はどんなインテリアにもなじみそう。
「手づくりなんですよ。普段目にしているお茶缶って、フタの縁がくるんと返っているものが多いですよね。あれは機械製で、この縁がフラットなものは、職人さんの手でないと叶わないんです」
ブリキ板のカットから成型、塗りまで、すべてが手作業で行われている缶は、密閉性も高く、何より美しい。フタと胴の差がほとんどなく、一見してはつなぎ目がわかりません。

ほら、ぴったり!
ちなみにオリジナルペンケースは淡いグレーもあるのですが、取材時は売り切れでした涙。

「仕事でグラノーラ缶のデザインをしたときに、これの存在を知ったんです。とても気に入ったんですが、『パピエラボ』は紙にまつわるショップなので。でも何かできないかと考えて、やや強引ではありましたが(笑)、ペンケースをつくりました」
ナイスアイディア!フタがあるからデスク周りがすっきり見えるのも高ポイントです。あと、個人的には細く入っているゴールドの線が、めちゃめちゃ洒落てるって思います!!(興奮気味)
「あ、実はそこだけはショップスタッフが塗ってるんですよ(笑)」
え、どうしてですか?
「お茶や海苔の缶の絵付けをする職人さんって、タッチが絵画的なんです。だからゴールドの線と言えど、どうしても味が出てしまって。それはそれでかっこいいんですけど『パピエラボ』としてはもっとシンプルで静謐な雰囲気にしたかったので、だったら自分たちで塗ろうと」
そんな秘話があったとは。でもこだわり抜いたからこそ目を引いたのかも。こんなふうに『パピエラボ』のオリジナル商品の開発は、偶然の出合いから発展するものばかりだそうで、見本市やSNSなどで積極的にパートナー探しをしたことはないとか。どこまでも低体温な(失礼)江藤さんです。

そして、もうひとつ和樂web的に見逃せないオリジナル商品がありました。

世界最古の写真製版技術が京都にあるんです!


おしゃれ~♡なだけじゃありません!こちらは、美術印刷と出版の老舗(こちらは明治20年創業!)、京都の『便利堂』製作のポストカードです。『便利堂』の技術は、昭和10年に法隆寺金堂壁画の原寸大の撮影と複製製作を手がけたことでも有名。日本文化の伝承に大きく貢献している、和樂webとしても大変リスペクトしているメーカーなのです。


このポストカードは江藤さんが「ずっと憧れていた」という、世界最古の写真製版技術である「コロタイプ」が採用されています。コロタイプは、写真が誕生して間もない19世紀中ごろに、フランスで発明された顔料による写真プリント技法。なめらかな質感で再現性が高く、耐久性もあるため、国宝など文化財の複製製作にも活用されているとか。前述の法隆寺金堂壁画の複製もコロタイプによるものです。原本の色に合わせてインクを調合し、使用するので、絵画に近いものがあります。写真のネガフィルムをそのまま版にするため、オフセットやインクジェット印刷のような網点もありません。

正直、この質感は実際に見ていただきたく…。スマホで撮影した写真ではとうていお伝えできないのです。

伝われ!この思い!

江藤さんの憧れが現実となったのは、知り合いのアートディレクターの提案によるもの。著名なフォトグラファー4名の作品をポストカードにアレンジしました。原画は、フィルムありデジタルあり、モノクロありカラーありと、さまざまだそうですが、コロタイプ印刷になると、また違った雰囲気へ。

印刷に関してはさほど詳しくありませんが、いつも見ている印刷物に比べて、とても陰影が深いように見受けられました。黒い部分の中にも奥行きがあって、立体感を感じるんです。まるで3Dのような…。約170年も前から、この技術があったことに驚きです。こんなにすばらしいポストカード、誰かに送るのだけではもったいない!実際に額装してインテリアとして飾る人も多いとか。

紙じゃなきゃダメなときにいいものを用意しておきたい

さて、そうは言っても世はデジタル社会。印刷物に関しては、なかなか厳しい今日このごろですが、江藤さんはどう思われていますか?
「そうですねぇ…。『紙の未来は僕が担う!』みたいな、重圧は背負ってはいないんですが。でも、大切な人に手紙を書くとか、『紙じゃなきゃダメ』なときに、いいものが選べるようにしておきたいとは思っているんです。ほかの伝統技術同様、紙の種類も減っていて、なぜか自分の好きな紙ほど廃盤になる。だけど自分たちが使いたいものが、必要なときにそろっている店ではありたいですね」
紙“だから”好きなのではなく、紙“も”好き。それは最初に江藤さんが話していた木や陶器と同じ目線で、紙に触れたからこその感覚なのではないでしょうか。生活の中に、自然と紙がある──気負わない姿勢は、店内のムードそのもの。この心地さが漂っているからこそ、『パピエラボ』は定期的に訪れたくなるショップなのかもしれません。

そして最後に余談。取材をしていたら、いろいろ欲しくなってお買い物してしまいました。

包装も凝ってます。テープもイケてる!


買ったのはこちら。動物のイラストがエンボス加工されたカード(小さすぎないサイズ感が優秀)と、ジャンボサイズ(約10㎝!)の銅クリップです。こちらはジャケットやシャツのポケットのアクセントにしようかと。自由な発想で、その人のライフスタイルに合った使い方ができる商品が多いので、ぜひ訪れてみてください。

PAPIER LABO.
住所 東京都渋谷区神宮前1-1-1
電話番号 03-5411-1696
営業時間 11:00~17:00
定休日 月曜日・日曜日
http://www.papierlabo.com/