「歩いているときや自転車で移動しているとき。買い物をしているときや電車に乗っているとき。どんな場面でも使いやすい鞄はないだろうか?」
ここ数年間、ずっとこんなことを考えていた。私はよくバックパックを使用するが、荷物を取り出しづらかったり、電車を利用するときには気兼ねしたりと、不満を感じる場面が多々ある。
代替案としてはトートバッグがあるものの、傘を差しているときや自転車で移動するときには不便であるなど、こちらも万能ではない。
2WAYバッグも検討してみたが、ビジネスシーンを想定したものが多く、普段使いもできるとなると選択肢は限られてくる。フックを外したり引っ掛けたりと、切り替えに手間がかかるのもいただけない。
このバッグが「移動」を変える
そんなある日。私の悩みを鮮やかに解決してくれる鞄と出会った。
それがこの〈HANDLE〉というプロダクトだ。4人のデザイナーによるプロジェクト〈idontknow.tokyo〉の作品で、「思考の流れを遮らない 最もミニマルなバッグ」がコンセプトである。
一見、ただのトートバッグに見えるHANDLE。実は、あるパーツを引っ張ることで、一瞬でパックパックへと切り替えることができる。
HANDLEによって「移動」はどう変わったのか。自転車と電車で通勤している自分のケースを紹介しよう。
クローゼットからHANDLEを取り出し、バックパックに変形させて背負い、自転車に乗って駅へと向かう。ホームに着いたら背中から下ろし、持ち手を掴みトートバッグにしてから電車へ乗り込む。そして駅から会社へ向かうときにふたたびバックパックに切り替える。
このようにシーンに応じて使い分けることで、より便利に、より快適に移動できるようになった(文字にすると煩雑そうだが、慣れればほぼ無意識で切り替えることが可能である)。
それにしても、バッグに機能をひとつ加えるだけでここまで使い心地が変わるとは……。その発想には脱帽せざるを得ない。
ただの「アイデアグッズ」ではない
世の中にはアイデアグッズが数多くあり、そのユニークさに驚かされることもよくある。しかし、優れた発想に頼りきらず、クオリティーにも配慮しているプロダクトはそれほど多くない。
では、このHANDLEはというと、「もの」としての完成度も高い。たとえばベースとなる素材には日本製の帆布を使用。縫製もしっかりとしていて、安心して重い荷物を入れることができる。さらにパラフィン(蝋)加工を施し、耐久性と耐水性を向上させている。
金具類も時間をかけて吟味したパーツを採用。視覚的なノイズを減らすため、ベルト部の金具を暗めの色で統一するなど、細部までしっかり作りこまれている。
優れた発想と高いクオリティー。そのふたつを兼ね備えたHANDLEは、「アイデアグッズ」を超え、新しい定番になっていくと私は考えている。
HANDLEを使いはじめて約1年が経過したが、目立った欠点は特に見受けられない。
強いて言えばであるが、容量の少なさが気になることがある。マチが小さいため、水筒や折りたたみ傘などを入れると鞄が膨らみ、せっかくのスマートさが失われてしまうのだ。荷物が多い人は購入前に確認したほうがいいだろう。
鞄の歴史は非常に長く、一説によると紀元前5世紀頃に誕生したとされている。それから長い年月をかけ、より丈夫で、より便利な道具として進化していった。
現代人の生活に最適化したHANDLEは、その系譜の「最新」と呼ぶにふさわしい鞄である。既存のアイテムに満足できない方に、ぜひ手に取っていただきたいと思う(コロナウイルスの影響で外出する機会が減っているが、それが収束した後には、通勤や旅行の優れたパートナーになってくれるはずだ)。
……デザイナーによると、ユーザーのフィードバックをもとに、さらに改良を加える構想があるという。次はどんな「進化」を見させてくれるのか。いまから楽しみでならない。
今回ご紹介した雑貨はこちら
idontknow.tokyo HANDLE
サイズ:約315mm✕410mm✕10mm
価格:6,800円(税抜)
idontknow.tokyo:Webサイト