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永遠のふたり 白洲次郎と正子

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Culture
2019.09.12

美白テクからニキビの治し方まで!江戸版おしゃれマニュアル『都風俗化粧伝』を読んでみた

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容儀之部/コンプレックス解消法

顔型や顔立ちに応じた化粧の仕方や帯の結び方などを挿絵付きで紹介しているほか、髪型や化粧、身のこなし方によって身体の様々な欠点をカバーして美しく見せる方法を紹介しています。
「背が低いのを高く見せる方法」「背が高いのを人並みに見せる方法」「首すじの短いのを長く見せる方法」「いかり肩をなで肩に見せる方法」などが掲載されています。

「背の低きを高う見する仕様の図」(『都風俗化粧伝』より)
 かみはつとの上がりたる結いようよし。
 首筋を高く立てるけしょう首の短きを長く見するしようにあり。
 身を少しそる心もちにすべし。
 かたを両方そろうべし。
 腰はのするごとくにすべし。

身嗜之部/身だしなみ・マナー

頭書の冒頭に

女の身の嗜みのよしあしにて、その人の意気(こころばえ)よく見ゆるものなれば、心を用い身だしなみを専一とすべし。身嗜みのあしきは大いに気圧(けおと)されて謾(あなど)られ、笑われるもの也。

とあり、様々な身だしなみの方法とその注意点を紹介しています。
「身に汗の出ずるをとむる伝」「衣類の汗臭きにおいを去る伝」「口の臭(くさ)きを治する伝」「久しく座してしびりのきれたるを治す伝」「欠(あくび)を止(と)むる伝」という項目もあります。

江戸のファッションリーダー

当時、髪型や化粧、衣装などに絶えず工夫をこらし、ファッションリーダーとしての役目も果たしていた歌舞伎役者。化粧品の販売や宣伝にも一役買っていました。

延宝(1673~81年)頃に活躍した名女形・上村吉弥(かみむらきちや)は、「吉弥結び」という帯結びや、「吉弥帽子」「吉弥笠」などのかぶりものを流行させます。引退後には、京都四条通りに白粉店を開き、自分の名前をつけた「吉弥白粉」で繁盛したとか。

『都風俗化粧伝』より (左)吉弥結び (右)文庫結び

『都風俗化粧伝』を読むには?

『都風俗化粧伝』は、江戸時代のおしゃれや美意識などを知ることができる、貴重な資料です。
この記事の作成にあたっては、東洋文庫版『都風俗化粧伝』を参考にし、一部、書き下し文を引用しました。
『都風俗化粧伝』は、資生堂企業資料館、大空社から復刻版が出版されているほか、早稲田大学図書館のサイトで、坪内逍遥旧蔵本『都風俗化粧伝』(明治期に愛文堂から出版されたもの)を見ることができます。
 早稲田大学図書館 『都風俗化粧伝』

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主な引用・参考文献

  • 『都風俗化粧伝』(東洋文庫 414) 佐山半七丸著,速水春暁斎画図,高橋雅夫校注 平凡社 1982年10月
  • 『都風俗化粧伝』 佐山半七丸著 [速水春暁斎画] 資生堂企業文化部資生堂企業資料館 2000年7月 復刻版
  • 『江戸時代女性文庫 64』 大空社 1997年5月
  • 『日本古典文学大辞典 第5巻』 岩波書店 1984年10月 p.640 「都風俗化粧伝』の項
  • 『化粧の日本史』 山村博美著 吉川弘文館 2016年6月
  • 『江戸美人の化粧術』  陶智子著 講談社 2005年12月

書いた人

秋田県大仙市出身。大学の実習をきっかけに、公共図書館に興味を持ち、図書館司書になる。元号が変わるのを機に、30年勤めた図書館を退職してフリーに。「日本のことを聞かれたら、『ニッポニカ』(=小学館の百科事典『日本大百科全書』)を調べるように。」という先輩職員の教えは、退職後も励行中。