日本人にとって身近な占いである「おみくじ」。初詣に引くのはもちろん、パワースポット&御朱印ブームの現在では触れる機会も増えていることでしょう。
けれど「運勢の結果だけ見てすぐ結んでしまう」という方も、少なからずいらっしゃるかもしれません。
自称「おみくじマニア」の私から言わせていただくと、それは非常にもったいないもの。おみくじで重要なポイントは、運勢ではなく「それ以外」の部分なのです!
この記事ではおみくじの正しい引き方、読み解き方と、おみくじの疑問Q&Aをわかりやすく解説。
寺社に参拝しておみくじを引く際、知っておくとより楽しめる「おみくじのイロハ」を学んでみませんか。
おみくじってどういうもの?
おみくじは日本人が生活する中で、子どもの頃から自然と知っている占い。ですがそもそも、この「おみくじ」とはいったいどういう存在なんでしょう?
おみくじを漢字で表記すると「御神籤」または「御御籤」。お寺の場合は「御仏籤」とも書きますね。これは「籤=くじ」に神聖さを表す「神」や「仏」の文字を組み合わせることにより生まれた名称です。
通常、くじは偶然性によって結果が決まるもの。しかし日本では、古来より「神聖なくじの結果には神仏の意思が介入する」と考えられてきました。
つまりおみくじとは「神仏の意思を伺うことのできるくじ」。悩み事ができたとき、神さま仏さまのアドバイスを聞いて今後の参考にしたい……そう考えた昔の人々によって生み出された、神仏からのメッセージツールなのです。
正しいおみくじの引き方を学ぶ
おみくじを用いての占いは、神仏からの意見を伺える貴重な機会。せっかく引くのだったら、正しい引き方、読み解き方を知りたいですよね。
「今までおみくじを引いても、運勢だけしか見ていなかった」……そんなおみくじビギナーさんも、ぜひ一度以下の手順でおみくじを引いてみてください。
神社仏閣に参拝する
参拝の目的はおみくじ! という場合でも、まずは祀られている神仏へのご挨拶が大事。
手水舎で身を清め、お賽銭を納めてから、自分の住所と氏名を告げ、日頃の感謝と願い事をお伝えします。
社務所・寺務所でおみくじを引く
参拝後は社務所・寺務所を訪れて、おみくじを引きます。
寺社によっては多数のおみくじを取り扱ってるところもありますので、直感で引きたいと思ったおみくじを選びましょう。
「今後の恋愛運について知りたい!」といったように占う内容がはっきりしているときは、「恋みくじ」のような特化型おみくじを引くのもいいですね。
おみくじを引く際は、占いたいことを頭に思い浮かべつつ臨むのがポイント。
具体的な悩み事がない場合は「今の私にお言葉をください」と念じれば、総合としてのアドバイスを授かれます。
おみくじの運勢を見る
いよいよおみくじの結果です。
やはり最初に目が行くのは、大吉や凶などの運勢。あまり良くない結果だとどうしても落ち込んでしまいがちですが、おみくじには「吉凶悔吝(きっきょうかいりん)」という易経の考え方があります。
これは簡単に説明すると「吉は凶に通じ、凶もまた吉に通じる」≒「吉が出たからと慢心すれば凶になり、凶が出た際に己を見直せば吉となる」というもの。
大吉であっても喜びすぎず、凶であっても自暴自棄にならないよう心がけてくださいね。
おみくじの内容を見る
おみくじにあまり詳しくないと前述の段階で終わってしまうことも多いですが、本来はここからが本番。おみくじに書かれている内容、すなわち和歌(または漢詩)やその説明、各項目をしっかりと読み込みます。
まず、和歌と漢詩は神仏からの「お告げ」。おみくじの中でもっとも重要な部分です。
自身の現状やおみくじに書かれている項目と照らし合わせ、登場する単語や歌の状況も踏まえて自分なりの解釈をしてみましょう。
和歌や漢詩のあとに書かれている文章は「総合の運勢」。
お告げの解説と解釈のサポートを兼ねており、これによって今後の運勢の全体像をつかむことができます。
そして「商売」や「待人」などの項目は、占った際の質問と照らし合わせて読むのが大事。たとえば、恋愛について伺った場合は「恋愛」や「縁談」の項目がその回答となっています。
質問に当てはまる項目がなかったときは、願い事に対してのアドバイスとなる「願望」の欄を読んでください。
ここまで読み込んでようやく「おみくじのメッセージを受け取った」状態となります。お疲れ様でした。
余談ですが、これらの部分は運勢の結果が良くても厳しめに書かれていることが少なからずあります。神仏のアドバイスを正しく受け取りたいのなら、運勢以外の内容にもきちんと目を通すといいでしょう。
おみくじを引いたあと
あなたがおみくじのメッセージをしっかりと受け取ったのであれば、おみくじを納める「おみくじ掛け」に結んでしまっても構いません。
けれどおみくじマニアの私としては、お財布などに入れてそのまま持ち帰るのをオススメします。
なぜならおみくじに書かれているアドバイスの意味がわかってくるのは、引いてしばらく経ってから、という状況も多いため。実際、私も2週間~1ヶ月後におみくじを読み直して「このことを指していたのか!」と驚くことがしばしばありました。
ですので、もしよろしければおみくじを引いたあとも持ち帰り、折に触れて読み返してみてください。
ちなみに、時間が経って持ち帰ったおみくじが不要になった場合は、寺社の納札所に納める、または年末年始のお焚き上げに出すと最後まで礼を尽くせます。もちろん、納める際は感謝の気持ちを忘れずに。
おみくじQ&A
さて、ここからは記事の後半戦。誰もが一度は考える、おみくじの素朴な疑問をQ&A形式で解説します。
知っておくとちょっと得するおみくじの豆知識。学んだあとは誰かに言いたくなるかもしれません。
Q:おみくじの歴史を簡単に教えて!
A:おおざっぱに説明すると
【平安時代】
神社の和歌おみくじの原型「歌占」が生まれる。
↓
【江戸時代】
中国のおみくじを元にして生まれたお寺の漢詩おみくじ「元三大師百籤(がんさんだいしひゃくせん)」が普及、神社も使用する。
↓
【明治時代】
神仏分離令により神社が元三大師百籤を使えなくなり、多くの神社が独自のおみくじである和歌おみくじを作成するようになる。
お寺はそのまま元三大師百籤を使い続ける。
↓
【現代】
といった歴史をたどっています。
Q:運勢の順番は?
A:多くの寺社では
寺:大吉>吉>小吉>半吉>末吉>末小吉>凶
神社:大吉>吉>中吉>小吉>末吉>凶
の順となっています。(注1)
Q:1日に何回も引いていいの?
A:「同じ日に同じ場所で同じ質問のおみくじを引き直す」という状況は避けた方が無難です。「別の寺社で引く」「別の質問で引く」は同日でもOKと捉える寺社も多いようです。
Q:凶を引く確率が知りたい!
A:おみくじの元祖である元三大師百籤では、凶の数は100枚中30枚。つまり「1/3の確率で凶のおみくじを引く」ということになります。(注2)
Q:凶を引いたらどうすればいい?
A:おみくじを結ぶ「おみくじ掛け」に、利き手と反対の手で結べばいいと言われています。
Q:運勢の結果に”平”って書いてあったけど、どういう意味?
A:「たいら」という吉凶で、運勢の変動が小さい状態を指します。
Q:大凶って本当にあるの?
A:基本的にお寺にはありませんが、神社にはあります。メジャーな場所だと大阪の「住吉大社」や、鎌倉の「鶴岡八幡宮」で引く可能性があるそうです。
Q:おみくじの有効期限はいつまで?
A:初詣に引いたおみくじなら「元日からの1年間」、それ以外のおみくじなら「願い事が叶うまで」とされています。
Q:おみくじで大吉が出た! 今後も引かなければ運勢もずっと大吉のまま?
A:おみくじはあくまで「今」のあなたを占ったものなので、新しくおみくじを引かずとも時間が経過すれば運勢も変わります。定期的に引いてその都度アドバイスをいただくのがオススメです。
(注1)寺社によっては吉より中吉の方が良い運勢とされているなど、順番が違っている場合も。
また、この表に当てはまらない運勢もいくつか存在することから、気になった方は引いた寺社で聞いてみるのが確実です。
(注2)参拝客が凶を嫌がるため、凶のおみくじを取り扱わない・凶の出る確率を低く設定する寺社も多いようです。
ちなみに、初詣の期間にはこれらの配慮をする寺社が増えるのだそう。
神仏からのメッセージ
何気なく引いたものであっても、おみくじの結果にはそのひとつひとつに神仏の意思が関わっています。
神さまや仏さまがあなたを思って伝えてくださった、紙1枚に収まる小さなメッセージ。
そのアドバイスを有意義に活かせるよう、おみくじを引くときも読むときも、そして引いたあとも、真剣かつ真摯な気持ちで臨みたいところです。
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