日本の伝統文化・和楽器の一つである箏(こと)。奈良時代に唐(現在の中国)から伝来した絃楽器と言われています。その音色は優しく、人々を魅了してきました。例えばお正月によく聞く『春の海』も箏の魅力が生かされた和テイストの曲ですよね。学校の体験授業で箏に触れた経験がある人も多いのではないでしょうか。
中には、一度聞いた音色が耳から離れず、箏の教室に行きたいと思う人もいるはず。ですが、高い楽器であるイメージから敷居が高いと感じたり、楽器をどこで購入したら良いか分からないと思っている方も多いようです。
箏の先生曰く、「習い始める前から用意する必要はありませんが、楽器は自宅で練習するためにも、自分用のものは時期をみて揃えることをおすすめします。最近は安く購入できるようになり、金額的な意味でも多くの人が親しむことができる楽器となりました」とのことです。そこで、現代でどのように箏を購入できるか、そしてどのような点に注意して購入すれば良いか伺いました。
楽器屋さんで購入
一般的なのは、「箏専門店」で購入する方法ですが、なかなか近所にはないという方もいらっしゃると思います。そういう場合には、一般の楽器店いに聞いてみましょう。ピアノだけでなくトロンボーン、トランペットなど幅広い楽器を扱っているショップなら、和楽器も取り扱っている場合もあります。
また、和楽器コーナーがある大手百貨店でも大丈夫です。箏は大きくて場所も取るので、店頭に並んでいないこともありますが、楽譜や備品などが置いてあるショップなら、まずは相談してみて下さい。
知り合いから譲ってもらう
「昔おばあちゃんが弾いていた」「姉が嫁入り前に習っていたけれど、実家に置いてある」など、家にお箏を持っている方は意外といらっしゃるものです。楽器は使わないでそのままにしておけば劣化するだけ。ましてや、箏は大きく場所も取るので、譲って下さる方も少なくありません。
「誰が箏を持っているか分からない」という事も多いでしょう。そんな時は、まずご自分が「箏を習っている(習おうと思っている)」と周りにアピールすることが大切です。おさらい会などに出演する際に、友人・知人をお誘いするのも良いかも知れませんね。「お箏を探している」と言えば、お箏が向こうから来る場合がありますよ。
ネットオークションで購入(新品)
今流行りのネットオークションでも箏が出品されているので購入できます。新品の場合、多くは「箏専門店」が扱っていますので、安心です。箏のグレードによってお値段も大きく違いますから、直接連絡を取って質問して、自分の好みや予算に合うものを選んでも良いでしょう。
箏には琴柱や琴カバー、譜見台、琴台など小物も多いので、同時に購入することをおすすめします。何と言っても、ネットでの購入は送料が掛りますから、一括購入で送って貰った方が、費用を押さえられるのです。
ネットオークションで購入(中古)
「少しでも安い方が良い」「細かいことは気にしない」というなら、中古のネットオークションにチャレンジするのも一つの方法です。こちらは、物によっては「1円から購入」が可能という場合もあります。もちろん、オークションなので、希望者が他にいれば段々と金額は高くなりますが、安く手に入りモノによっては1万円未満で落札できることもあります。
基本的にオークションは「自己責任」となりますから、気を付けるポイントをいくつかご紹介します。
①現在では使わなくなった箏の種類がある
箏は手作りですので、大きさも多少のばらつきがありますが、現在使われている箏は長さ181~184㎝です。これよりも短いものは「短箏(たんごと)」と呼ばれるもので、昔の練習用の箏となります。長さは170~178㎝が多いようです。
箏は大きいために車で運ぶのが大変なため、この短箏も昭和30年代には流行したようですが、各家庭に乗用車が普及してきたことから作られなくなりました。見た目は普通の箏と同じですが、長さが短いため音域が狭いという欠点があります。
昔の生田流の箏も現代ではあまり使われなくなってきました。長さは184cm以上で、箏の表面に華やかな蒔絵装飾や、絃を押さえる端に赤や紫の紐状の房があるのが特徴です。大きな木箱に入っている場合もあります。
箏を床の間などに飾って鑑賞するなら問題ありませんが、実際に弾くとなると難しいかもしれません。何といっても、楽器はメンテナンスが重要です。絃が切れたり劣化した際には、絃を交換したり調律したりしないといけませんが、こちらのタイプをメンテナンスできる専門店が段々減少しているのです。長く使いたいなら、前述した通りの181~184㎝の箏を探した方が良いでしょう。
②壊れている箏はNG
箏の裏側を「裏板」と言いますが、ここが割れている場合は、裏板全体が交換となります。大がかりな修理となり費用も掛りますから、購入は見送りましょう。
箏には「口前袋」というカバーが付いています。赤や青、金色など華やかなものですが、このカバーは装飾ではなく、箏を守るためにあるのです。素人の出品者の方は、この中を見せていない(画像がない)場合もあります。ここは音に係わる重要なところであり、尚且つ壊れやすいためにカバーが付いているのですから、出品者に質問するなどして、どうなっているか事前に確認しましょう。ここにダメージがあれば、場合によっては、修理にも数万円かかります。
③絃が切れているだけならOK
絃は消耗品、切れるものなのです。もちろん絃が切れていなければ、そのまま使える箏もあるかも知れませんが、絃が切れているためにお値段が安くなっているなら、お買い得とも言えるでしょう。縁があって落札できたなら、箏専門店に持って行き絃交換をすると同時に表面を磨いて貰える場合もあり、おすすめです。
まとめ
お箏は楽器も大きいことから、お稽古会場に用意されていることが多く、持ち込まずに習い始めることができます。もし自宅で練習したいという場合は、最近は楽器のレンタルも増えてきたので、利用しても良いかもしれません。
お箏をいきなり用意するよりも、まずは自分に適した稽古場や先生を探して、実際に弾いてみてから、楽器を揃える事を検討すると良いでしょう。習っている先生に箏専門店を紹介していただくことも出来ますし、ネットで購入するなら画像を先生にチェックしてもらうと安心感があります。しっかり吟味して、大切な自分の箏を選んでくださいね。