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Culture
2019.11.18

祭り屋台の「キャッシュレス化」?脱現金で祭りは変わる?変わらない?

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日本の「祭り」は、紛れもなく伝統文化のひとつだ。

その祭りにも、時代の波が訪れている。

今年から急速に普及し出したQRコード決済サービスは、祭り屋台の「キャッシュレス化」を大きく促している。屋台の運営者としては、完全キャッシュレスが可能になれば釣り銭用の小銭を用意する必要がなくなる。これだけでも大幅なコストダウンにつながるが、今年10月から政府主導のポイント還元事業が始まった。

我々のよく知る祭りの光景が、大きく変わろうとしている。

「消費者還元事業」のブースが登場

2019年11月2日から4日まで、日本では文化の日を挟んだ3連休だった。厳密には11月4日月曜日は振替休日になったのだが、これを活かして静岡市では『大道芸ワールドカップ』が開催された。

静岡市民にとって、安倍川花火大会と大道芸ワールドカップは欠かすことのできない巨大イベント。もっとも、安倍川花火のほうは2年連続で中止になってしまったが。

イベント期間中の駿府城公園には、多くの食べ物屋台が並んでいる。三連休ということもあり、道行く人の波も激しく過密だ。

ふと、筆者の目に飛び込んだのはこのブースである。政府が進める『キャッシュレス・消費者還元事業』のブースが出ていることには、筆者も驚いた。店舗の経営者は、ここで事業に関する説明を受けることができる。

この消費者還元事業は、クレジットカードや交通系ICカード、QR決済サービスの利用者に対して2%もしくは5%分のポイントを付与するという内容。その予算は政府が捻出する。コンビニ等のチェーン店舗の場合は2%、個人経営の店舗の場合は5%の適応である。祭り屋台は、その殆どが後者だ。

その上で、各キャッシュレス決済サービスが独自に提供しているポイント還元も加味すると、キャッシュバックが消費税を相殺してくれる可能性も。消費者にとっても事業者にとっても、キャッシュレス決済は何かと都合がいいのだ。

低価格スマホで利用できるQRコード決済

この消費者還元事業は、来年6月までの期限付き事業でもある。

政府としては、その間にキャッシュレス決済の利用率を向上させたいという思惑を持っている。「日本人は現金主義」という評判はよく囁かれているが、中国や東南アジアではワーキングクラスからロウアーミドルクラスの労働者階級を中心にQRコード決済が普及している。

なぜか?

低価格のスマートフォンでもサービスを利用できるからだ。

NFCが内蔵されているスマホは、ミドルエンド以上の性能帯の機種だ。無論、価格もそれに比例して高くなる。だがインドネシアの首都ジャカルタの2020年最低法定賃金は約427万6000ルピア(約3万3000円)である。それで一家を養っていることも珍しくなく、日本円で5万円を超えるような価格のスマホはローンを組まなければ買うことができない。

その上、最低法定賃金で生活する人はクレジットカードを持っていない場合が殆ど。カードを発行してもらえるだけの信用がない、という表現がより正確だ。

そこでQRコード決済サービスという手段が浮上する。スマホにカメラが内蔵されていれば、すぐさまそれを利用することができる。その上、インドネシアやベトナム、ラオス、韓国の通貨は単位が大きい。たとえばレストランで「5万6544ルピア」と算出されることがあるが、現金では100ルピア単位までしか払うことができない。

キャッシュレス決済は、それらの憂いを一気に解消してくれるのだ。

神社仏閣にも影響が

QRコード決済の手段はふたつ。利用者のスマホの画面にQRコードを表示する方法と、店側が掲げているQRコードを利用者のスマホが読み取る方法だ。

祭り屋台にとってより利便性が高いのは、後者である。専用の読み込み端末を設置する必要がなく、QRコードの描かれたシール1枚で全ての手順を完結できるからだ。屋台とQRコード決済は、親和性が極めて高い。

そして繰り返すが、このまま社会のキャッシュレス化が進めば事業者は釣り銭用の小銭を用意せずとも仕事ができるようになる。人気の屋台の行列に並んだ時、「小銭でのお支払いにご協力ください」とよく言われるが、QRコード決済を導入すればそのような心配も解消される。

当然、この流れは縁日を主催する神社仏閣にも波及するだろう。

仏教界ではキャッシュレス決済に対して反発する声もある。「キャッシュレス決済は仏教の教義と相容れない」と語る僧侶もいるが、そもそも今現在流通している貨幣は不換券即ち「一定量の金と交換できない貨幣」だ。1971年に当時のニクソン米大統領がブレトン・ウッズ体制の終焉を発表した時点で、貨幣は人々の信用のみを土台にする金融商品と化した。それを電子化したとしても、不換券としての本質は一切変わらない。

むしろ、日々相場が変動する不換券はいずれ電子化する運命だったとも言える。

来年から始まる「マイナポイント」

来年からは、総務省が主導する『マイナポイント』キャンペーンが開始される。

これはマイナンバーカードと民間の決済サービスを紐付けすることで、大幅なキャッシュバックを実施するという事業。数ある設計案の中の一例ではあるが、キャッシュレス決済サービスに2万円をチャージしたら、5000円分のポイントが還元されるという。

このマイナポイントを通して、マイナンバーカードの保有率を上げたいというのが国の狙いである。

いずれにせよ、今年から来年にかけて「脱現金」が国主導で進められていく。

それと同時に、祭りを彩る屋台も進化していくだろう。