Culture
2019.12.29

隈研吾氏設計の明治神宮ミュージアム、見どころは?東京観光のおすすめスポットを徹底レポート!

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令和2年(2020年)に明治神宮鎮座百年祭を迎える明治神宮。記念行事の一環として、令和元年(2019年)10月に明治神宮ミュージアムがオープンしました。建物の設計は2020年東京五輪主会場となる新国立競技場の設計も手掛けた隈研吾氏。さっそく、代々木の杜に生まれた新たな明治神宮のシンボルをご案内します。

明治神宮の杜を見わたす2階ロビー部分

明治神宮宝物殿と明治神宮ミュージアム

明治神宮は明治天皇と皇后の昭憲皇太后を御祭神として大正9年(1920年)に鎮座になりました。翌大正10年(1921年)には、明治天皇・昭憲皇太后のご愛用の品を納めた宝物殿を造営。神宮の本殿は太平洋戦争末期の昭和20年(1945年)に空襲により焼失しましたが、宝物殿は被害を免れました。しかし、平成23年(2011年)に起きた東日本大震災により屋根瓦が割れるなど大きな被害を受け、また同年に重要文化財建築物の指定を受けたことから、保存に必要な耐震工事施工のため、当分の間は閉館となりました。新たに開館した明治神宮ミュージアムは、宝物殿に収められていた所蔵品をより良好な状態で展示・収蔵しています。

南参道入り口の鳥居

JR原宿駅から1分ほどの入り口から大きな鳥居をくぐって南参道へ。神宮の杜に一歩足を踏み入れると、生い茂る樹木が覆いかぶさり、都会にいるのを忘れてしまうほど。参道を歩いていると、不思議と厳かな気持ちになります。70ヘクタールにもおよぶ明治神宮の杜ですが、実は天然林ではなく、ほとんど樹木がない荒地に人の手で作られたものです。神社をつくるからには鎮守の森が必要だという考えから、林学博士、造園家、造園学などの権威を集め、人の手を加えなくても永久的に天然更新する森を目指して設計されました。国を挙げての100年計画は、みごとに成功したと言えますね。入り口から数分歩いた先の、小さな渓谷の水面には原宿の街のネオンが写り、都市と自然が同居する不思議さを感じます。その渓谷にかかる神橋のたもとに明治神宮ミュージアムがあります。

明治神宮ミュージアム入り口

ミュージアムのみどころ

杜の中に溶け込むように佇む明治神宮ミュージアム。日本の伝統の美しさを湛えた建物は、鉄筋コンクリート造・鉄骨造2階建て。参道から垣間見える大屋根が印象的なエントランス棟は、伝統的な入母屋形式ですが、どこか現代的でシャープな印象なのは軒の先端がわずか2cmというデザインによるもの。建物を入ってすぐのメインロビーは最大天井高7m、壁一面のガラスの向こうに杜の緑がパノラマに広がる開放感ある空間です。建物内からとはいえ、杜の中に入り込んだような感覚になれる貴重な場所。階段を上がった先の2階ロビーからは参道を歩く人の姿も眺められます。これらのロビーに置かれたベンチやエントランスのカウンターは、境内で風雨などにより自然に倒れた樹木などを活用したもの。明治神宮がこの杜を大切にしているのがわかります。

2階ロビーにある杜の樹木を活用したベンチ

2階/宝物展示室

2階の宝物展示室には宝物殿から移した明治天皇・昭憲皇太后のご愛用の品を展示しています。最も目を引くのは、約130年前の大日本帝国憲法の発布式に明治天皇がお乗りになったとされる「六頭曳儀装車」。宝物殿では片面のみしか見ることができませんでしたが、ミュージアムでは部屋の中央にガラスケースに囲まれて展示してあるため、全方向から細やかな細工を眺めることができます。宝物展示室の緩やかに弧を描いた格子の天井は、かつてこの馬車が置かれていた宝物殿のヴォールト格天井を現代的に解釈のもと再現。高い天井高の空間の中で、儀装車の上の金の鳳凰が伸び伸びとしているように見えました。特別展示室わきにある映像コーナーでは臨場感ある3面モニターに、普段見られない明治神宮の儀式など貴重な映像が映し出されます。

宝物展示室中央に置かれた「六頭曳儀装車」

1階/杜の展示室

1階の杜の展示室はでは、明治神宮を「百年」「一年」「一日」「一刻」という4つの時間軸を通して解説した展示が見られます。参道を掃き清める手作りの箒や、巫女さんが身につける季節ごとの美しい冠など、普段はなかなか目にすることができない品々ばかり。明治神宮の紙垂(しで。しめ縄についている白い紙)は1枚の紙を包丁で切って作るのだそうです。映像とともにさまざまな行事などの解説がされており、明治神宮について深く知ることができるので、この展示を見てから参拝するのがおすすめです。(杜の展示室のみの入館も可能)

1階の杜の展示室

杜の展示室の奥には大きな明治神宮の御社殿模型が置かれていました。これは、昭和20年に焼失した御社殿の建て替えの際に作られた当時の古い模型です。本殿の模型の屋根には、実際と同じ技法で葺かれた銅版の瓦が。「明治神宮の再建復興なくして、日本の戦後復興はない」とまで言われた再建への熱意がうかがえます。実際に歩いていると、大きくてなかなか全容がつかめない御社殿の様子を見ることのできる模型は、建築好きのみならず必見。

御社殿建て替えの際に作られた模型

展示室をひとまわりした後、木のベンチに腰掛けて外の杜を眺めていると、気持ちがすっと静かになります。ダイナミックな新国立競技場を手掛けた隈研吾氏設計の明治神宮ミュージアム。新しい建築でありながら、ずっとそこに在ったように明治神宮の杜と調和した建物には、さまざまな難しい条件を咀嚼して穏やかな美しさに昇華する建築家の凄みを感じました。明治神宮の魅力を教えてくれる明治神宮ミュージアムに、参拝前に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

明治神宮ミュージアム

休館日:毎週木曜日(木曜日が祝日の場合は開館、展示替え期間は休館)

開館時間:10時~16時30分(最終入館16時)

入館料:一般 1,000円 ※1階の「杜の展示室」のみの入館は300円

高校生以下 900円 ※小学生未満無料

アクセス:JR「原宿駅」表参道口から徒歩5分

http://www.meijijingu.or.jp/homotsuden/visiting.html

 

書いた人

1969年生まれ。一級建築士。建築をはじめ、さまざまなジャンルの取材をしています。魅力ある建築とおいしい食べ物を探す嗅覚には自信あり。建物も食も、つくった人の息づかいが感じられるようなものに出会うと心がときめきます。