「ひゃっこい、ひゃっこい」と言いながら、白玉団子の入った冷たくて甘い水を持って街を歩く商人の姿。これは江戸時代の夏の風物詩だったのだとか。その風景を想像するだけでも、何だか涼を感じますよね。
新型コロナウィルスによる外出自粛以来、手作りおやつがブームになっていますが、白玉粉を使ったおやつは簡単に作れて、夏にもぴったりです。しかも余った白玉粉は、料理にも無駄なく使えてとても便利!我が家でも、白玉粉を常備しています。
そこで今回は、江戸時代に人気を集めた「冷や水」や、夏におすすめの白玉の食べ方とともに、余った白玉粉の活用法などをお伝えしたいと思います。
江戸時代に人気を集めた「冷や水」とは?
今でこそ冷蔵庫や冷凍庫などが当たり前に普及していますが、江戸時代にはこうしたものはなく、冷えた水や氷なども珍しい時代。そこで夏の暑さで身体がぐったりと疲れた頃に、冷えた水を売る商売が期間限定で登場します。この商売は「冷や水売り」と呼ばれ、その様子は浮世絵や川柳などにも描かれてきました。
冷や水とは、砂糖を加えて甘くした冷やした水のこと。白玉粉で作った白い白玉や、紅色の斑(まだら)模様の白玉を入れることもありました。
井戸から汲んだ冷たい水を使っているものの、冷や水売りが担ぐ荷台には保冷機能がないので、時間が経つと水がぬるくなってしまいます。そこで、できるだけ冷えた状態を保つために、真鍮など金属製のお鋺に冷や水を注いでいたのだとか。
江戸時代後期に出版された「東都歳時記」では、5月(旧暦)の行事として「この月より 冷や水 心太(ところてん) 白玉餅 売りあるく」と記されています。当時は、白玉が夏の定番の食べ物だったことが伺えますね。
そもそも「白玉粉」って何?
白玉粉ありきで話を進めてきましたが、そもそも白玉粉って何の粉なのでしょう。和菓子のレシピなどを眺めていると、よく使われる粉としては白玉粉・上新粉・もち粉の3種類があります。
・白玉粉…もち米を洗って浸水させた後、水を加えて挽き、沈殿物を乾燥させたもの。白玉団子や大福餅などに使われる。
・上新粉…うるち米を洗って乾燥させた後、粉にしたもの。一般的には「米粉」と呼ばれる。草餅やういろうなどを含めて多くの和菓子に使うことができる。
・もち粉…もち米を洗って乾燥させた後、粉にしたもの。白玉粉よりも粒が細かい。白玉粉と同じように使用できるが、ぎゅうひなどを作るのに向いている。
私もよく白玉粉を使いますが、昨今の手作りおやつブームにより、スーパーなどでは「白玉粉が売り切れ」になっていることもしばしば。そんな時には、食感は少し変化しますが、もち粉で代用することもできます。
夏におすすめの白玉の食べ方
白玉団子を使ったおやつとしては、みたらし団子やぜんざいなども有名ですが、今回は暑い夏にぴったりの涼しさを感じる食べ方をご紹介したいと思います。
白玉+果物
旬の果物やドライフルーツなどをお好みで添えます。我が家では、薄切りにしたレモンにひたひたのはちみつを注いで作った「はちみつレモン」をかけることも多いです。さっぱりとした、爽やかな風味が楽しめます。
白玉+抹茶
夏になると「グリーンティー」をよく見かけるようになりますが、薬膳の考え方では「緑茶や抹茶は身体を冷やす」と言われています。そのため、夏の暑さで身体に熱がこもっている時などにぴったり。白玉との相性も抜群で、あっという間に「和のおやつ」が完成!
白玉+豆類や寒天など
もちろん、小豆やきなこなどの豆類や、寒天ともよく合います。ガラスの器に盛りつけると、涼しさが感じられます。
〈ポイント〉豆腐で練ってモチモチ感をキープ!
ちなみに、白玉団子の通常の作り方は「白玉粉に水を加えて練る」という方法ですが、これだと時間が経過するにつれて団子が固くなってしまいます。これを解決する方法として、水の代わりに豆腐を加えて、豆腐の水分で練るようにするのがおすすめ。こうすることで、時間が経ってもモチモチ感を保つことができます。我が家では2~3回分をまとめて作って冷蔵庫で保管し、いろんな食べ方で少しずつ食べています。
白玉粉60gに対して、豆腐は100gが目安。絹ごし豆腐を使うと、より滑らかな食感を楽しむことができます。
余った白玉粉の意外な活用法
「どうしても使いきれなくて、白玉粉が少しだけ余ってしまった」というのも、よくあること。でも、大丈夫。白玉粉はおやつづくりだけでなく、料理にも使うことができるんです。
一番手軽な方法は、お米を炊く際に白玉粉を混ぜること。白玉粉はもち米からできているため、モチモチとした食感に炊き上がります。「おこわを作りたいけれど、もち米がない!」という時にも使えるので、いざという時に備えて知っておくと便利です。分量は「お米1合に対して、白玉粉大さじ1」が目安です。
我が家で人気があるのは「白玉粉のおやき」。米粉や小麦粉を使って作ることもできますが、白玉粉を使うことでよりモッチリとした食感になります。子どものおやつにはもちろん、おかずやおつまみにもぴったりです。今回は、しょうゆとみりんを使った「甘辛味」ですが、フライパンでは味付けをしないで、各自のお皿にレモンやわさびを添えるなど、お好みでアレンジしても美味しいです。
白玉粉のおやき
〈材料〉作りやすい分量
・南瓜または芋類(今回はジャガイモを使用) 200g
・白玉粉 大さじ3
・塩 ひとつまみ
・ごま油 大さじ1
・しょうゆ・みりん 各小さじ2
・ごま・青のり(お好みで) 適量
〈作り方〉
1.ジャガイモは皮をむいて、一口サイズに切る。鍋に入れて少量の水を加えて、柔らかくなるまで蒸し煮にする。
2.1のじゃがいもをマッシャーなどで潰す。
3.2に白玉粉・塩を加えて、なめらかになるまで混ぜる。水分量が足りずパサパサするようであれば、様子を見ながら水(分量外)を加える。
4.3を手に取り、円型に整える。
5.ごま油を入れたフライパンを熱し、4を両面焼く。最後にみりんとしょうゆを加えて、全体に絡ませるようにしながらさっと加熱して、火を止める。皿に盛りつけて、お好みでごま・青のりを添える。
白玉粉を、夏の思い出づくりに
小中学校や幼稚園・保育園などでは夏休みが始まりつつありますが、新型コロナウィルスの影響などもあり、遠出をすることもできず「何をして過ごそうかな」と考えている方も多いと思います。
江戸時代の夏の風物詩としても用いられ、古くから人々に愛されてきた白玉粉。おやつづくりだけでなく、料理にも使えていろんなアレンジができることも魅力のひとつです。
この夏は白玉粉を使って、自分だけの夏の思い出を作ってみてはいかがでしょうか。