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2023.10.07

有名店の味!青山「ふーみん」の「納豆チャーハンレシピ」完全再現

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納豆チャーハンが人気の中華料理店「ふーみん」の店主に、そのレシピを教えてもらいました。

納豆チャーハンで有名「ふーみん」とは?

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「ふーみん」は昭和45(1970)年に創業。ご両親が台湾出身の斎 風瑞さん、通称ふーみんさんが、台湾の家庭の味を食べてもらおうとつくった中華料理のお店です。それまで、日本風の中華料理店やラーメン店、宴会ができるような大きな中華料理店はありましたが、家庭料理を出すところはほとんどありませんでした。その意味で画期的なお店だったのです。

ねばねばをうまみに変える納豆チャーハン

納豆といえば、ご飯のお供とばかり思っていました。それをチャーハンの具にした「ふーみん」の斎 風瑞さんは、自由な発想の料理人です。卵をふわっと炒めるところから、醬油に熱を当てて香らせるところまでのわずか2分ほどの間に、油と火を上手に使う、中華料理のコツがぎゅっと詰まっていました。

納豆チャーハンのレシピと材料をさっそく紹介!

納豆チャーハンの材料(1人分)

・ねぎ20g
・にんじん15g
・ザーサイ10g
・チャーシュー5㎜厚さ4枚で40g
・ごはん190g
・しょうゆ

1.ねぎなどの材料をみじん切りにする

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ねぎを粗みじん切りにする。ねぎに縦の切り目を細かく入れ、小口から切る。ザーサイがかたまりの場合は押さえて下から薄く切り、細切りしてからみじん切りに。にんじんはゆでて細かくみじん切り。

2.フライパンに卵を溶き、油を鍋になじませてから炒める

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卵をボウルに割り入れてざっくりと混ぜる。白身が切れれば十分なので、混ぜすぎないようにする。鍋を強火にかけ、油を多めに入れて鍋になじませる。いったん油を戻すと、鍋が油でぴかぴかに見える。あらためて卵を焼くための油大さじ1を入れ、溶いた卵を入れる。ふーみんではラードを使っている。

3.卵が固まらないうちに、上にご飯を入れる

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まだ半熟状態の卵の上にのせるようにご飯を入れ、切るようにほぐしていく。ご飯は必ず温かいものを使うこと。ほぐしやすく、卵ともからみやすい。冷たいご飯だとほぐれにくくて、きれいなチャーハンにならない。鍋肌に直接つかないように入れると、焦げつきにくい。ご飯を卵で一粒一粒包むイメージで炒めていくのがコツ。

4.鍋を振って、ご飯と卵をさらになじませる

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手前から奥へ向かって鍋をすくうように振り、へらでご飯全体を返す。ご飯は空中に放り上げられて天地が返り、鍋に落ちてくる。中華鍋の形だからできる技だ。均一な黄色いご飯をつくる気持ちで、まんべんなく炒める。卵がご飯粒につき、だんだんパラパラになる。この作業でチャーハンの仕上がりが決まる。

5.ねぎは鍋に当ててよく火を通す

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ねぎを入れてご飯をひっくり返し、ねぎを鍋肌に当てる。ほんの3秒ほど焼くことで、香りとうまみが生まれる。軽く塩味をつける。あとで、ザーサイやチャーシューなどの塩けが入るので、塩は小さじ4分の1と控えめにしておく。ザーサイ、チャーシュー、にんじんを入れ、炒める。

6.納豆と青ねぎを入れ、最後に醬油をたらす

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納豆と青ねぎを入れる。納豆が均等に混ざるように炒める。熱が入るとねばねばがなくなっていく。青ねぎは彩りなので、じっくり火を入れる必要はない。醬油を仕上げにたらす。塩味をつけるよりも、香りを加えるのが目的。ご飯にかけるのではなく、鍋肌に入れて熱を当て、香りを立たせるとよい。

「ふーみん」の納豆チャーハンの秘密

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中華料理の炒め物には難しいイメージがあります。プロは強火で一気に炒めていますが、家庭の火力ではとても真似できません。それでは、素人にパラリとほどけたチャーハンをつくることは無理なのでしょうか。

ふーみんさんに聞いてみると、火力もさることながら、「鍋に十分に油を回しておくことが大切ですね」と言います。炒める油を入れるだけではなく、鍋のための油が別に必要だというのです。

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まず、火にかけた鍋に、お玉1杯弱の油を入れ、鍋肌にまんべんなく回して一度あけます。全体に油がなじんだ状態になった鍋に、炒めるための油をあらためて入れます。これなら鍋肌に具材がくっつくことはほとんどありません。炒め物の油を控えようとするあまり、材料が焦げやすくなっていたのではないでしょうか。

「焦げつくと、手が間に合わなくなるんです」とふーみんさん。チャーハンの勝負は2分から3分。焦げついたところをはがしている時間の余裕はありません。ふーみんさんは材料をすべて小皿に入れて準備してありますが、手際よく炒めるためには、なんといっても最初の油の使い方が重要なのです。

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炒めるための油を入れたら、すぐ卵を入れます。焼くというより、卵に油を吸収させ、乳化させるのです。卵がまだ半生の状態のうちに温かいご飯を入れます。冷たいご飯では、パラリとした状態にするのに時間がかかります。

卵でご飯を一粒ずつ包むように炒めます。卵はふわふわで、しかも全体がパラパラになれば、チャーハンのベースは成功です。「卵に油を抱えさせるんです」とふーみんさんは、卵を炒めるコツを説明します。「卵だけが固まらないように、黄色いご飯をつくる気持ちで炒めるといいですよ」

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もうひとつのコツはねぎの扱い。「ねぎを入れたら、鍋に当ててよく焼くこと。うまみと香りが出てきます。焼く前にご飯と混ぜてしまうと、ちゃんと火が入りません。料理がねぎ臭くなるのは、火が入っていないからですね」

中華料理では、チャーハンに卵とねぎを必ず使いますから、扱いを知れば、チャーハンの出来栄えは相当よくなるはずです。「チャーハンに使う具には、肉、野菜、海鮮、たらこ、うに、高菜、じゃこなどいろいろありますが、卵は必ず使います。卵を使わないというのは考えられないですね」

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ところで、納豆チャーハンの陰の主役は、ザーサイです。塩味だけでなく、うまみや香りも与えてくれます。自家製のチャーシューも入れています。チャーシューは煮豚スタイルで、2日に1回、まとめてつくっています。豚肉をたこ糸で棒状に縛ってから塩胡椒し、焼きつけてから、長年注ぎ足しながら使っているたれで煮ています。

ふーみんさんの料理を見ていると、底が丸くて深さのある中華鍋の形の理由がわかってきます。あおれば材料が鍋の曲線に沿って空中に跳ね上がり、お玉で自由自在に鍋の中を操ることができます。つまり、材料をいつも動かすことができるのです。

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火をつけてからわずか2分ほどで、納豆チャーハンはできあがりました。その中に、たくさんのコツが詰まっていました。

納豆チャーハンが生まれた理由は?

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納豆チャーハンを思いついたのは、お客さんとの会話がきっかけでした。「そのころは7坪の小さな店で、カウンターしかありませんでした。狭いのでお客さんとの距離が近く、会話がはずんで楽しい店でしたけど。ねぎそばがよく出ましたね。外苑前という場所柄、イラストレーターやデザイナーといった方が多くて、常連になってくれました」と斎さん。

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食に詳しい人も多くて、毎晩のようにカウンター越しにうまいもの談義が交わされていました。「納豆のおいしい食べ方知ってる?」「肉と一緒に炒めるとおいしいよね」という話をお客さんとしていたふーみんさん、挽肉と納豆を炒めてレタスで包んで食べる料理を考えつきました。

「中華料理に鳩の挽肉をレタスで包む料理があります。それを思い出して、納豆を鳩の代わりにしてレタスで包んでみたらどうかと思ったんです。店で出してみたら好評でした。今度はそれをご飯にかけてほしいというお客さんがいて。納豆ご飯という名前で今も出しています。それならチャーハンもいけるのではないかと思って、つくってみたのが始まりです」

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炒めると納豆のねばねばは消えてしまいます。そのかわり、チャーハン全体にぬるっとした食感が生まれて、ねばりでコーティングされたようになります。「うちは家庭料理の店なので、材料は普通のものを使っています。納豆も出入りの八百屋さんが持ってきてくれるものです。銘柄は、食べてみて選びましたけれど。ただし小粒がいいですね」

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納豆はいろいろな具と混ざっていて目立たなくなっていますが、ご飯の部分を食べると、口当たりがぬるっとして、肉とは違ううまみもあり、存在感は十分。今や、1日に60食出ることもあるという、「ふーみん」の看板料理となりました。