愛媛県宇和島(うわじま)市の名産である「じゃこ天」。天ぷらのように、衣をつけて揚げるそれではありません。魚をすり身にして、そのまま揚げた素朴な練りものです。肉厚でジューシーなじゃこ天を制作するのは、宇和島の奥浦という小さな漁村にある「はるちゃん天ぷら」のお母さんたち。13年前、50代から60代の主婦4人ではじめた商売。真摯なものづくりが実って、今では全国区のテレビ取材を受けるまでになりました。すべて手作業でつくられているという「はるちゃん天ぷら」のじゃこ天。美味しさのヒミツを探ります!
プリプリとした歯応えがたまらない!
宇和島のじゃこ天は、ハランボと呼ばれる地魚を原料にしています。正式な名前はホタルジャコ。薄紅色をした美しい小魚です。その日に港にあがった生のハランボのみでつくっているのです。
はるちゃん天ぷらのじゃこ天は、ひと口嚙むと、滋養にあふれた魚のうまみが口の中に広がります。おいしいのは当然かもしれません。保存料や添加物は一切なし。つなぎのイカをほんの少し使う以外、とれとれのハランボを手間暇かけて加工しているからです。
創業当時から使用する掛け紙のイラストは、山本さんの友達が描いたもの。今も変わらないこの笑顔で、おいしいじゃこ天をつくっている
「冷凍の魚を使わんから、しけて船が出んかったら、うちらはしとらんです。ハランボの頭と内臓をひとつひとつ手作業で取り除くのは骨が折れますが、皆さんにおいしいと言うてもらうのがうれしい。まあ、揚げたてを食べさいや」と代表の山本ハルミさん。内臓をつけたまま、すり身にすると苦みが出るため、それらをしっかり取り除くと、ハランボ本来の味が際立つのです。足が早い魚なのでできるだけ手早く、お母さんたちは神業のような速さで処理をしていきます。
成形もひとつずつ手作業。ここのじゃこ天は他店の2倍ほどの厚みがあり、食べ応えがあります。宇和島ではそのまま食べる以外に、煮物にしたり、寿司の具に使うとか。
骨ごとミンチにするので、カルシウムも豊富です。ひと晩寝かせて粘りを引き出してから、180℃の油の中を泳がせるようにして火を入れます。すり身に変わると魚の姿形は見えないけれど、だからこそ正直に、本物の味を届けたい。ニッポンのお母さんの真心がこもる名品です。
ここに取材しました!
◆はるちゃん天ぷら直売所
住所 愛媛県宇和島市吉田町奥浦乙296-1