SNSで「1か月待ちのバターケーキがやばい!」と話題になりました。販売元は、北海道の十勝・帯広のお菓子屋さん『柳月』です。筆者は注文から本当に1か月、正座して待っていました。開発者からの愛あるコメントつきで食レポします。
『柳月(りゅうげつ)』は、今から72年前に十勝・帯広ではじまったお菓子屋さん。北海道・十勝といえば酪農王国。乳製品のおいしさはいうまでもありません。北海道民が「外さないお土産」として推薦する「三方六(さんぽうろく)」も、バターの風味が漂っておいしいんですよね。ちなみにこちらは、薪の形をしたしっとりバウムクーヘンです。
そんな十勝の柳月さんによる「酪農みるくバターケーキ」なんて、お取り寄せするしかありません。
バターのようなレトロかわいい箱入りで登場
冷凍便で到着しました。バターのようなパッケージが愛らしく、胸がときめいてきます。
でも、箱を開けようとすると。「すぐ食べちゃダメ!」と、コメントをいただきました。ハイ。
ちょっと待ってから、開封の儀。なんと美しい直方体なんでしょう。
ナイフがすっと入るやわらかさ。たいへん萌える断面です。あれ、中にナッツが入っている!?
カットしてお皿にのせると、室温でケーキの角部分のバターがゆっくりと溶け出していきます。実に繊細なお菓子です。
クリーム部分をひと口。バターのコクがしっかりと感じられますが、後味がしつこくなく、驚くほど軽いんです。
クリームだけでなく、スポンジも存在感十分。きめ細かくふんわりとしていて、優しい甘さ。
感想をまとめると、バターよりも軽く、生クリームよりもボディ感のある印象。クリームの層とスポンジの層がきれいに重なり、それぞれを引き立て合っています。断面に見えたナッツはくるみとわかりました。ほどよくクリスピーな食感で、よいアクセントになっています。コーヒーよりも、紅茶に合うと思いました。ひと口食べて、その余韻で紅茶を飲めば、エンドレスで食べ続けられそうです。
メーカーがケーキに込めた「想い」
こんなおいしいケーキ、食通のネットユーザーがあっという間に見つけるに決まっています。あちこちで食レポが行われていますが、柳月ファンとしてはメーカーさんの声も聞きたいところ。企画開発室の方にたずねました。
―販売のきっかけを教えていただけますか?
企画開発室の阿部さん:柳月のバタークリームのデコレーションケーキは、長年、地元北海道のお客様に根強くご好評いただいていました。昔ながらの味わいが受け入れられているようです。そんなニーズを感じつつ、今年の春からの連続テレビ小説『なつぞら』の放映を知り、改めて酪農王国・十勝のおいしいものを味わっていただけるお菓子を開発したいという流れになりました。2019年4月15日から販売をスタートし、『なつぞら』劇中、雪次郎がバターケーキを作った回をきっかけに劇的に北海道内直営店舗やネット通販で、全国各地からのご注文が増えました。ネット通販では9月20日現在で1か月ほどお待ちいただいている状況です。
―製法や食材のこだわりは?
企画開発室の阿部さん:バターケーキに限らず、なるべく地元のものを使うようにしています。酪農みるくバターケーキでは、味の決め手となる発酵バターを始め、砂糖や卵、隠し味の練乳も北海道産です。さらに、工場も十勝にしかありませんので、毎日、新鮮な食材を工場に運んでいます。
ケーキは、代々受け継がれてきたバタークリームのレシピをベースに練乳を加えることで、上品な口どけが実現できました。柳月では「楽しんでお菓子を食べていただきたい」という想いがあり、見た目にもこだわりました。ケーキもパッケージも「まるでバター!?」と見間違うようなデザインを採用しました。
バターはとても繊細な食材なため、キレイな四角にするのはとても大変。職人がひとつひとつ丁寧に手掛けています。
開発者からコメントをいただきました!
「私は、地元十勝の出身です。地元のものを使って、みなさんにおいしいお菓子をお届けしたいと、日ごろから研究しています。今でこそ世の中では生クリームケーキが主流となっていますが、私自身が子どもだったころはバタークリームケーキが主流でした。そんなわけで、今の時代に合う、新しい形のおいしいバタークリームケーキを目指しました。一人でも多くのお客様に、北海道のバタークリームケーキのおいしさを味わっていただけましたら幸いです」
なんというまっすぐな想い。職人らしいに誠実な言葉に、こちらまで背筋が伸びます。柳月には、「『なつぞら』がきっかけでバターケーキを知り、はじめて食べた。とても食べやすくて嬉しい」、「バターケーキが懐かしい。昔と比べておいしくなっている」などという声が続々と届いているそうです。
「十勝ではバターケーキを普段から食べる習慣があり、ケーキ屋さんにいつも並んでいます。何でもない日も記念日もバターケーキ。身近な存在なので、今回、全国のお客様から『バターケーキを食べるのがはじめて』、『久しぶり』と聞いて、たいそう驚いたんです」という、阿部さんの言葉は興味深いなと思いました。日本は広く、まだ見ぬ美味にあふれている!