Gourmet
2019.11.08

金沢の洋菓子屋「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」なぜガトーショコラ専門店か聞いてみた

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誰にでも、理想はある。
他人を思いやる世界になればいい。環境に優しい暮らしをしたい。世界から貧困がなくなればいい。ただそれを想い続けるか、それとも一歩前に踏み出して行動するか。

2019年5月、石川県金沢市にオープンした店がある。その名も「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」。洋菓子屋の中でも珍しいガトーショコラ専門店だ。

理想のために一歩前に踏み出すことを選択した「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」。2019年11月11日より通信販売も開始され、いよいよ波に乗る。今回は、ガトーショコラ1本で勝負し、美味しさと優しさを追求する彼らの世界観に迫る。

ガトーショコラ一択の理由とは?

2019年10月金沢某所。あいにくの雨にもかかわらず、ひっきりなしに客が集まるブースがある。それがガトーショコラ専門店の「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」だ。

令和元年いしかわスイーツ博に出店した「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」

右上には店のロゴがある。よく見ると、黒猫のイラストの下には「since2019」の文字が。じつは、「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」は2019年5月22日にオープンし、あと少しでようやく半年を迎えようとするフレッシュな店なのである。

「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」のロゴ

素朴な疑問がある。どうしてガトーショコラなのか?
「オーナーから一緒にケーキ屋をやろうって言われたときに、得意のケーキって何なの?って聞かれたんです。周りから結構ガトーショコラがおいしいって言われてたので、食べてもらったら、これでいこうと言われて決めました」
底抜けに明るいオーラをまとうシェフパティシエの若田順也(わかたじゅんや)氏は笑ってこう話す。

それにしても、専門店とは珍しい。どうやら、最初からケーキの種類を1本に絞ろうと決めていたというのだ。なんでも、今のケーキ屋は労働条件が厳し過ぎるのだとか。

「どんなパティシエさんもすごい数のケーキを朝から晩まで作っている。だから一本に絞るために、負けないだけのビジュアルとその面白さ、お土産にも対応できるスタイルを追求。で、凝縮させたら、これになりました」

左から「ショコラJack」「ストロベリーJack」

なるほど。ただ、ガトーショコラ専門店をやるにしても、なかなかそこから広がらないのではないか?

「1種類ではもちろん足りなくて。で、足りないものをすべてガトーショコラに詰め込んでいきました」

そうしてガトーショコラの種類を増やしていったという。ちなみに、クグロフ型で焼かれたガトーショコラは、定番で12種類ほど。それに季節によってどんどん変化する「シーズンJack」などアイデアも豊富だ。また、ガトーショコラの中にジュレやブリュレ、チーズケーキなどを融合させたオリジナルガトーショコラも斬新だ。

「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」の由来

さて、「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」という名前。非常にインパクトがある。その由来を訊いた。

まず「 Jack(ジャック)」はびっくり箱の「jack-in-the-box」から取ったという。
「ガトーショコラなのに、包みを開ければカラフルで色がついたガトーショコラが入っている。開けて、なんだろこれっ⁈という驚きを与えたかった」

舌だけでなく目で楽しませる、意外性があり、次に包みを開けるときにワクワクさせる。そんな工夫もされている。

左奥が「ショコラJack」右手前が「ストロベリーJack」

そして、「Kuroneco(クロネコ)」。
これは、ガトーショコラと貧困にあえぐ人をイメージしたワードなのだという。
じつは、Kuroneco Jack(クロネコジャック)は現在クラウドファンディングに挑戦している。HPには、和田オーナーの気持ちが掲載されている。

 私が感じた「日常には見えない現実」には2つあり、1つ目はガトーショコラの材料であるチョコレートの原材料「カカオ」の生産農家は今「貧困」や「児童労働」などの課題に直面していること、そして2つ目は食品容器などの「プラスチックごみ」による環境破壊が加速度的に進んでいるということ。
 飲食業界に携わる者として、この2つの課題は何としてでも解決しなければならない、そのためには「カカオトレース」の考え方のもとに生産された食材を使い、飲食業界では難しいとされる「プラスチックごみゼロ」を目指したお店作りをすることで貢献できるのではないかと考え、Kuroneco Jackを開店させました

「カカオを生産している国は貧しい。チョコレートを買えば、このような生産国にお金がダイレクトにバックするようなシステムが組まれたチョコレートである『カカオトレース』を使っています」

つまり、チョコレートが売れれば売れるほど、材料を生産している農家にダイレクトにお金が行くという仕組みだ。ちなみに、貧困にあえぐスラム的なイメージが『猫』、ガトーショコラなので『黒』。そこから、「Kuroneco Jack(クロネコジャック)」の命名となったそうである。

一度食べれば忘れられないガトーショコラ

パティシエがこれ1本で勝負すると決めたガトーショコラ。さて、そのお味はというと、確かにシェフパティシエの選択には納得がいくと言わざるを得ない。

定番のショコラJack

濃厚ながらも甘すぎず、外側はどちらかというとそこまでしっとりとしていない生地。しかし中にトロっとしたチョコレートが入っていて、それがまた格別に美味しい。全体的にはフォンダンショコラのような感じの食感だ。二つのバランスが絶妙で、ちゃんとそこまで計算していることが分かる。そして、ダメ押しで一番下の部分に、これまたサクサクのクッキーがついている。正直、下の部分だけでも美味しい。1つのガトーショコラで3回楽しめる一品。苦いブラックコーヒー、いや、ウイスキーのロックにも合うほどの負けない味である。

ストロベリーの方も、もともとホワイトチョコレートのガトーショコラが珍しいこともあって、目新しい。開けて確かに驚いた。やはり、ガトーショコラというイメージが先行しているので、赤いとそれだけで不思議な感覚だ。

素材が持つ味と美味しさを最大限に引き出す。そのために防腐剤や酸化防止剤、膨張剤といった食品添加物は一切使用していないという。味もさることながら、見た目、発想、そしてカカオ農家の貧困をなくす一助となるガトーショコラ。

食べるだけで自分も一歩踏み出せる?是非とも試して頂きたい。

写真撮影:O-KENTA

基本情報

店舗名:Kuroneco Jack(クロネコジャック)
住所:石川県 金沢市鞍月3-27金沢鞍月HRビル1C
(石川県庁から車で2分)
テイクアウト営業時間:11時〜19時
イートイン営業時間:11時~17時(L.O.16時30分)
電話番号:076-268-9611
公式webサイト:https://kuronecojack.com/