入江泰吉「飛鳥古京」1973年ごろ 入江泰吉記念奈良市写真美術館
入江泰吉「吉野川菜摘の河原」1973年ごろ 入江泰吉記念奈良市写真美術館
入江泰吉「飛鳥八釣の里」1970年ごろ 入江泰吉記念奈良市写真美術館
入江泰吉「三輪山」1969年ごろ 入江泰吉記念奈良市写真美術館
入江泰吉「まほろばの夏」
日本人の心のふるさとと称される奈良・大和路。
古代から続く歴史や文化を物語る遺産や遺跡、万葉人が歌に詠んだ土地がいたるところ点在する大和路は、奈良を題材にした名写真家・入江泰吉が最も心惹かれた地としてもよく知られています。
みずから何度も巡り歩き、ファインダーにおさめた夏の大和路の風物を紹介する展覧会、入江泰吉「まほろばの夏」が今、入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催され、古き良き日本の風景を愛する人々に絶賛されています。
写真/入江泰吉「薬師寺塔遠望」1966年ごろ 入江泰吉記念奈良市写真美術館
終生奈良を題材にし続けた写真家・入江泰吉
入江泰吉は20代前半のころに大阪の写真機材店「光藝社」の主として独立。そのころ撮った文楽の写真が認められて写真家となりました。
第二次世界大戦後、故郷の奈良市に戻ったときに、アメリカが戦争の賠償として日本の古美術を持ち出すという噂を耳にして、奈良の仏像を写真に記録することを決心。
噂はデマだったのですが、当時40歳になっていた入江はそれを機に、仏像をはじめ、大和路の風景や伝統行事など、奈良をテーマにした撮影に精力的取り組むようになったのです。
その撮影スタイルは、飛鳥や天平の時代に生きた人が目にした思われる季節や時間をじっと待ってシャッターを切るというもの。一枚の写真を撮るのに何十年も通ったということも少なくなかったといいます。
また、カラー写真の情感の乏しさを解消するために、色を殺して陰影を与える方法を模索するなどたゆまぬ努力を積み重ね、静かな中に抒情性のあふれる写真の境地に到達。それによって、奈良の歴史を写真にとどめたいという願い成し遂げることにつながったのです。
写真/入江泰吉「東大寺二月堂裏参道百日紅」入江泰吉記念奈良市写真美術館
入江泰吉「まほろばの夏」展
平成4(1992)年に没した後、入江泰吉が撮影した約8万点もの作品は、同年オープンした「入江泰吉記念奈良市写真美術館」に収蔵され、展示されることになりました。
そこでこの夏注目を集めているのが、入江泰吉「まほろばの夏」展(~8月28日)。
ここまでに掲載した6点をはじめとした写真の数々は、いずれも心安らぎ、旅情をそそるものばかり。思わず、写真の風景を訪ねる旅へ出かけてみたくなります。
在りし日の心に触れられる、入江泰吉旧居
戦後から亡くなるそのときまで巨匠が暮らした入江泰吉旧居は、今も土塀や古い家が立ち並ぶ東大寺旧境内の一角にあります。
作品の構想を練り、暗室で現像を行うかたわら、趣味の時間も愉しんだ空間に足を踏み入れると、そこには古き良き奈良の魅力に満ちていて、時をさかのぼったような感覚になります。
入江泰吉旧居 地図