桜に続いて日本各地を彩る花が、和の趣ある色合いと華やかな花房が印象的な〝藤〟です。
藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君
これは、先日発表された新元号「令和」の引用典拠となった『万葉集』「梅花の歌」を詠んだ大伴旅人(おおとものたびと)に向けて、大宰府の防人の次官大伴四綱(おおとものよつな)が詠んだ歌。奈良から遠く離れた大宰府(だざいふ)に赴任している旅人に、「見事に咲き誇る藤の花を見ていると奈良の都を思い出しませんか」と思いやる気持ちが表されています。
『万葉集』には、藤を詠んだ歌が26首。梅の120首、桜の46首にはかなわないものの、春から初夏の野に華やかに咲き誇る藤の花は万葉人にとっても印象的な花だったのです。
春の花として梅や桜ほど大きくクローズアップされることのなかった藤。それが最近、実際に見ると想像以上の美しかったことに驚いてSNSなどで発信したことから、俄然注目されるようになっています。
梅や桜などにくらべて開花時期が長く、圧倒的な美しさを誇る藤の名所から、感激すること間違いなしの7か所をご紹介します。※藤の花の写真はいずれも昨年以前のもので、現在の開花状況ではありません。
藤棚のスケールのライトアップも感動的!
あしかがフラワーパーク(栃木県足利市)
樹齢約150年の600畳敷きの藤棚をもつ大藤をはじめ、長さ80mもの白藤のトンネル、きばな藤のトンネルなど、350本以上の藤が咲き誇る「あしかがフラワーパーク」。アメリカのテレビ局CNNが2014年に発表した「世界の夢の旅行先」に選ばれたことから注目を集めるようになり、夜のライトアップは「日本夜景遺産」にも認定。各色そろった藤は、うす紅、紫、白、黄色の順に咲きそろい、鑑賞できる時期が約1か月間と長いことも魅力的です。開花状況によって料金が変わることもユニークな点で、訪問前にぜひ公式サイトをお確かめください。
開花時期 4月中旬~5月中旬
営業期間 4月13日~5月19日=7:00~18:00(ライトアップは4月20日~5月12日=17:30~21:00)
入園料金 4月13日~5月19日=大人900円~1,800円(ライトアップ4月20日~5月12日=大人600円~1,500円)
※開催期間、ライトアップ期間は開花状況により変動するので公式サイトでご確認ください。
公式サイト
太鼓橋やスカイツリーを借景にした都会の藤
亀戸天神社(東京都江東区)
江戸時代から「亀戸(かめいど)の藤」と称されていた名所は、4月も下旬になると100株以上の藤の花が咲き、境内一面藤色に。歌川広重が『名所江戸百景 亀戸天神境内』に描いた太鼓橋から見下ろす、藤棚もここならでは。毎年恒例の「藤まつり」期間中は多くの露店が軒を並べ、夜はライトアップを開催。東京スカイツリーを背景にした夜の藤は、都会の幻想的なシーンを描き出し、一見の価値です。
開花時期 4月下旬~5月上旬
「藤まつり」4月14日~5月6日(予定)
※開催時間などは公式サイトをご覧ください。
公式サイト
歌川広重「名所江戸百景 亀戸天神境内」 国立国会図書館
ドラマチックに水際に咲き誇る巨大な藤棚
天王川公園(愛知県津島市)
その昔から「藤浪の里」と呼ばれてきた藤の名所・津島市。その名残を今に伝えるのが天王川公園で、九尺藤を中心に12種類114本の藤があり、長さ275m、面積約5,034㎡もの藤棚の最盛期は、まさに壮観。この地で開催される「尾張津島藤まつり」は、日中はもちろんのこと、日が暮れるとライトアップさアれ、水面に映る藤棚も趣があります。
開花時期 4月下旬~5月上旬
「尾張津島藤まつり」4月20日~5月5日
※開催時間などは公式サイトをご覧ください。
津島市観光協会 公式サイト
山里の風景と壮大な藤とのコントラストが圧巻
白井大町藤公園(兵庫県朝来市)
兵庫県北部の京都府との県境に位置する公園は、地区のボランティアが藤の苗木を150本採取し、岡山県和気町(わけちょう)の藤の穂木を接木して育てたもの。公園の面積は7,000㎡、藤棚の長さは500m、藤棚の幅は4mになり、山陰随一の藤の公園になっています。 最長145㎝にもなる藤の花房や、白や紫、ピンクなどの色とりどりの藤の花が谷風に揺らぐ藤波は見事なもの。山や水車小屋をバックにした藤の花も情緒たっぷりです。
開花時期 5月上旬~中旬
「藤祭り」5月上旬~5月下旬
営業期間 4月下旬~5月上旬=9:00~18:00(入園は17:30まで)
入園料金 中学生以上500円
※開園期間などは天候などにより変更のばあいがあります。公式サイトでご確認ください。
公式サイト
最高180㎝もの藤の花房が続く藤棚は必見!
白毫寺(兵庫県丹波市)
慶雲2(705)年に法道仙人(ほうどうせんにん)が開基したとされる白毫寺(びゃくごうじ)。5月には「九尺ふじ」と呼ばれる花穂の長い藤が咲き、全長約120mもの藤棚が境内を盛大に彩ります。長さ約120㎝を超える花房がシャワーのように垂れ下がる様子は見事で、これまで最も長い花房は180㎝を記録しているとか(!)。見頃は4月中旬から5月中旬で、最盛期に開催される「九尺ふじまつり」は、ライトアップも行われ、兵庫県観光局が選定する「私の好きな兵庫の風景100選」に選ばれています。
開花時期 5月上旬~5月中旬
「九尺ふじまつり」5月3日~5月中旬(開会式典は5月5日)
ライトアップは日没から21:00まで
拝観料金 志納金300円(高校生未満無料)
※時間や式典については公式サイトをご覧ください。
公式サイト
京の都の藤の名所は、意外な場所!!
鳥羽水環境保全センター(京都府京都市)
京都の藤の名所といえば、最盛期に京都市上下水道局が主催する鳥羽(とば)水環境保全センターの一般公開「鳥羽の藤」。平成3年に福島県白河市から取り寄せた33本のノダフジの苗木が育ち、平成13年から一般公開が始まりました。広さ975㎡の公開エリアには、シャワーのように連なる藤棚が約120mも続き、夢幻の境地へといざなってくれます。
開花時期 4月下旬
一般公開 4月26日(金)~4月28日(日)
公開時間 10:00~16:00(入場は15:30まで)
※詳しくは京都市下水道局の公式サイトをご覧ください。
公式サイト
日本より先に世界が注目した、藤の絶景!
河内藤園(福岡県北九州市)
海外サイト「FeedBox」が2012年に発表した「実在する世界の美しい場所10」や、アメリカのテレビ局CNNが発表した「日本の最も美しい場所31選」に選出されたことで、にわかに脚光を浴びた「河内藤園(かわちふじえん)」。想像を超えた藤の絶景はSNSや口コミで広がり、開花時期は地域の一大イベントにもなっています。約1,000坪の規模で広がる大藤棚や、約110メートルと80メートルの藤のトンネルなど、22種類の藤の花が咲き競う様子は圧巻で、魅力的な観賞スポットも多く、新緑とのコントラストの美しさも見ものです。開花状況により料金が異なるので、事前にご確認を。
開花時期 5月初旬
営業期間 4月中旬~5月中旬=9:00~17:00
入園料金 咲き始め・咲き終わり500円、中間1,000円、見ごろ1,500円、高校生以下無料
※4月20日~5月6日の入園は前売り予約チケット(コンビニ予約チケット)が必要。購入方法などは公式サイトをご覧ください。
公式サイト