それは、福井県立恐竜博物館のあるかつやま恐竜の森を訪れたときでした。【マンホールカードを配布しています】と書かれた張り紙を目にして「(マンホールカード? 何だろ? わからないけど、無料なら…)ください!」と受け取ったのが、初めて手にするマンホールカードでした。
そこには、福井県で発掘された恐竜“フクイラプトル”が描かれたマンホール蓋(ふた)の写真、福井県勝山市についての情報のほか、なにやら数字やマークが記されています。
実はこのマンホールカード、マンホール蓋を知ることができるだけではなく、たくさんの情報が詰まったすごいカードだったのです!
マンホールカードって何?
街を歩けば必ず目にするマンホールの蓋。地下に張り巡らされる多くのライフラインの中で「下水道」と地上を繋ぐマンホール蓋が主役のカードが、今回ご紹介する「マンホールカード」です。
縦88mm×横63mmのカードは、どこでもらっても同じフォーマット、同じ規格で作られており、マンホール蓋の写真をメインに、そのマンホール蓋のデザインの由来や説明のほか謎の数字やマークには何やら秘密がありそうですが、それは後ほど。
下水道の働きは、訪日外国人が驚くという日本の街の清潔さに一役買っていたり、降雨の際にもすみやかに雨を排水して街を浸水から守ってくれたりと、さまざまな働きがあります。
マンホールカードは、そんな下水道のことをもっと知って欲しいという広報のためにスタートしました。下水道の広報を担う「下水道広報プラットホーム(通称、GKP)」が企画・監修し、マンホール蓋を管理している自治体と協力して制作されています。
カードは予約や郵送ができず、発行する自治体に足を運んで初めて手にすることができます。そんなご当地アイテムに特別感を感じ、コレクション欲をそそられる人は少なくないようで、第1弾が2016年4月に発行されて以来、参加自治体はどんどん増加。2019年8月7日発行の第10弾で、全国455自治体、539種類のカードが登場しコレクターも年々増えているようです。
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どんなカードがあるの?
マンホールカードには、その場所でしか見ることのできないマンホール蓋が掲載されています。マンホール蓋を見るためにはその地点に出向かなくてはならず、マンホールカードが欲しければその地域に行く必要があります。つまりマンホールカードは、下水道広報であると共に自治体の観光の一翼も担っているのです。
第10弾で登場したマンホールカードのラインナップ(出典:下水道広報プラットホーム)
しかし! 興味深いのが、マンホールカードの“絶対に譲れないルール”です。それは「マンホールカードは、マンホール蓋のカードである」ということ。当たり前のことですが、ここがポイントです。
結果的に観光事業を振興するものとなってはいますが「マンホールカードにはマンホール蓋の情報を掲載する」ということが徹底されています。マンホールカードが欲しくて手に入れたのに、自治体の観光情報が満載…となると、コレクションカードとしてはたしかに違和感を感じそうですよね。
この点では各自治体が工夫をしていて、あくまでもカードにはマンホール蓋についての情報のみを入れ、そのほかの部分で街の広報につなげています。例えば、街のマンホールマップを作製したり、カード専用台紙を配布するなどそれぞれの自治体が独自で下水道の広報をきっかけに街のPRをおこなっているのです。
どこでもらえるの?
カードの配布場所は市役所や水道局、道の駅やインフォメーションセンターなどさまざま。公共施設が多いため、平日のみの配布や配布時間が限定されているところはレア感を感じます。全国各地の配布場所や配布時間は、記事最後にあるGKP公式サイトから検索してみてください。
カードに隠されたヒミツとは?
カードを手に入れたら、ぜひ隅々まで見てください! そこにはコレクター心をくすぐるポイントがたくさん隠れています。
ピンポイントでマンホール蓋にたどり着け!
まず、マンホール蓋の写真がある方をおもて面とすると、おもて面の左下にある数字に目が行くのですが、これは位置座標を表しています。例えば「35°10’05.3″N、136°53’33.30″E」と記載されているのは「北緯35度10分05.3秒、東経136度53分33.30秒」を表します。
マップ検索などで、この位置座標をそのまま入力すれば、マンホール蓋の位置がピンポイントで表示されるので、お目当てのマンホール蓋を探しに行く楽しみがあります。位置座標で目的地に行くなんて、宝探しのようですね!
同じマンホール蓋なのに違うカード?
マンホール蓋には、当然同じデザインの蓋が存在します。しかし蓋の位置が違う場合は位置座標が違うのでカードは別々になります。それを表すのが、おもて面右上の数字です。
デザイン管理のナンバーであるこの数字は、左から「都道府県コード-市区町村コード-デザインの種類と数量」を表しています。同じデザインの蓋が違う位置に設置される場合は、同じアルファベット表記で後ろの数字が001、002…と変わっていきます。
反対に、ひとつの自治体がデザインの異なるマンホール蓋のカードを製作する場合、アルファベットがデザインごとにA、B、C…と区別され、後ろに数字が続きます。
31種類のピクトグラム
次に気になるのがマンホール蓋の写真の右下の小さな丸の中に描かれたマークです。これはピクトグラムという絵文字です。このピクトグラムは31種類あり、マンホール蓋の柄がさまざまなカテゴリーに分類されています。
例えば上の画像のマンホールカードで言うと、にっこりマークのピクトグラムは「キャラクター」の分類。このほか「花」や「木」、「祭り」や「お城」などの分類もあります。また、ピクトグラムの右下にある「83」の数字は連番で、そのピクトグラムに分類されるカードの中で何番目に登場したカードかを知ることができます。このカードはキャラクターの分類の中で83番目に登場したカードだと分かるわけです。
小さな番号に込められたコレクターへの愛
そして、製作者からコレクターへの愛を感じるのがピクトグラムの右下にあるカードの隅の小さな数字です。
4つに分けられた番号にはそれぞれ意味があり、一番左から「全カード連番-ブロック連番-都道府県連番-市区町村連番」となっています。
発行される全てのマンホールカードをコンプリートするには、一番左の「全カード連番」である通し番号を目安に集めます。左から2番目の「ブロック連番」は、日本を9つのブロックに分けて振り分けられた番号が記されていて、カード自体のベースの色もこの9つのブロックにより色分けされています。左から3番目の「都道府県連番」や一番右の「市区町村連番」は、コレクターが小さな目標を達成できるように設定された番号で、日本全国に散らばる500を超えるマンホールカードを全て集めるのは困難なことを踏まえ、身近なエリアからコンプリートを可能にしてくれる番号になっています。
こんなに小さな番号ですが、製作側がさまざまな人々に楽しんでもらいたいという思いがとても感じられます。
製造ナンバーにも情報満載
裏面には、マンホール蓋のデザインの由来となる写真やイラスト、説明が書かれていて、より詳しくマンホール蓋について知ることができます。設置年月や市区町村の自治体サイトなどにリンクされているQRコードのほか、カード左下には配布されている場所と…再び小さな数字を発見!
これも何やら意味ありげな数字ですが、これは、カードの製造管理ナンバーです。
勝山市のカードを見ると「1704-01-003」という番号が記載されています。一番左はカードが導入された年と月を表していて、「1704」は2017年4月を意味します。マンホールカードは第一弾が2016年4月に導入されてから実は4か月に一度制作されているので、1704の数字は第4弾だということも同時に分かります。
左から2番目の数字は、修正回数を表します。誤表記のほか増刷時の写真の変更など、カードに修正が入る場合には02、03…と修正の回数が分かるようになっています。
そして一番右は製造ロットナンバーです。1ロット2,000枚を基準に製造されるマンホールカードの現在発行されている枚数がわかる仕組みになっています。人気があると増刷されると思うので、この番号も思わず確認してしまいそうですね。
どのマンホールも背景が同じ?
ところで、数枚集めてみるとマンホールカードの写真の背景が、どのカードも同じだということに気づきます。
しかし、実際にマンホール蓋のある場所を訪れてみると、周囲は石畳の趣きある場所だったり、逆に、決して美しいとは言えないアスファルトだったり、とても個性豊かなのです。これらをそのままカードにしたとき、写真に差が出てしまい統一感が無くなるため背景を全て同じものにしているそうです。
「主役はあくまでもマンホール蓋」というマンホールカードのブレないコンセプトがここにも現れていますね。実際にマンホール蓋がある場所を訪れてカードと見比べ、カードからは読み取れない情報を発見する楽しみ方もおすすめです。
水木しげるの第二の故郷で鬼太郎のマンホールカードをゲット!
日本中が沸いたラグビーワールドカップも落ち着き、日常を取り戻している調布市。スタジアムに足を運ばれた人は気が付いたでしょうか。
調布市には、漫画家の故・水木しげる先生が居住されていたことから代表作「ゲゲゲの鬼太郎」をモチーフにしたマンホール蓋が設置されています。
調布駅周辺のマナー向上のために設置されたマンホール蓋は全部で6種類。調布駅前広場北側から甲州街道までの歩道にあるので、ぜひ足元をチェックしてくださいね。
ところで…マンホールカードは観光の一翼を担っていると書きましたが、調布市の観光地でもある深大寺の参道には、マンホール蓋やマンホールカードのモチーフとなる鬼太郎の茶屋があります。これからの季節は、紅葉も見頃になるのでお出かけにはピッタリですよ!
そんな調布市で2019年8月から配布されているのが、鬼太郎のマンホール蓋を掲載したマンホールカードです。調布駅からもほど近い調布市役所で手にすることができるので、調布の街を散策がてら手にしてみてくださいね。
自由度高し。自分なりの楽しみ方でコレクション
だんだんとマンホールカードを1枚でも良いから手にしたくなってはいませんか?
1枚…また1枚と手にするごとにどんどん集めたくなるのがコレクションカードの特徴ですが、全て集めるのは相当の労力と時間そしてお金がかかります。その点「動物のピクトグラムをコンプリートしてみよう」「まずは市区町村連番を制覇だ!」とコレクションの自由度が高いのは、マンホールカードの特徴です。
集めることが最大の目的であるマンホールカードは、言うなれば観光パンフレットのようなもの。「今度行く旅先の近くに、マンホールカードの配布場所はあるかな?」と知らず知らずのうちに検索していればもうあなたもコレクターの一員です!
12月には第11弾が登場!
無料だし、いただけるのなら…と何気なく手にしたカードでしたが、正体を知れば知るほど子どもも大人もハマるコレクションカードでした。なんと来月12月には新たに第11弾が登場予定! 今から楽しみです。皆さんも、まずは自分の住む地域やご近所にマンホールカードの配布があるか探してみるところから始めてみるのはいかがでしょうか。
マンホールカード検索
GKP下水道広報プラットホーム http://www.gk-p.jp/mhcard/