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2019.11.04

高知四万十川の沈下橋レポート!日本の秘境100選にも選ばれた観光名所の魅力とは?

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度重なる自然災害が頻発している昨今、災害から学び、自然と共生する道を選んでいる人々もいます。
日本の「沈下橋」は、そんな人々と共に古くからある橋。
現在は、この橋の近くに「抜粋橋」や「永久橋」と呼ばれる、川の増水の際に「沈下しない橋」も併設されている地域が増えています。
そこまでしても残されているこの橋は、本来の役割に加えて、別の役割も果たしています。

現在、日本にある沈下橋は全部で410か所ほど。
中でも1番多くある県は、日本三大清流の1つで、日本最後の清流とまで言われている四万十川がある高知県。

今回は、四万十川に架かる「沈下橋」の魅力をご案内します。

沈下橋とは?


文字通り「沈下」することから「沈下橋」という名称で呼ばれている、四万十川の代名詞にもなっているこの橋は、川の増水によって橋がそのまま水面に沈む(沈下する)設計となっているので、あえて欄干がありません。

これにより、増水した際の水の抵抗も減り、漂流物によって橋が破壊されるリスクも減らすことができます。

四万十川流域は、昔から台風が通過するコースとなっている豪雨地帯。川の増水で橋をあえて沈下させることで、川の水に逆らうことなく自然と共生しています。

自然と共生、調和する、欄干が無い沈下橋


欄干が無い沈下橋は、橋脚の高さが通常の橋よりもかなり低いので、橋の上から川の水の様子をしっかり監視することが可能です。
川の異変にもいち早く気づけるので、水害の危険の予兆から即座に身を守る上でも役立ちます。

出典:よさこいねっと

そして、欄干が無いことで周囲の景観も良くなり、自然との調和もとれているので、沈下橋がかかった四万十川では四季折々の美しい景色も高く評価されています。
その証拠に、四万十川の景観は、「日本の秘境100選」や「国の重要文化的景観」にも選ばれています。

四万十川に架かる沈下橋の歴史

一斗俵沈下橋

四万十川に一番最初に架けられた沈下橋は、昭和10(1935)年に架設された「一斗俵沈下橋(いっとひょうちんかばし)」です。その後、昭和28(1953)年に「木屋ヶ内(こやがうち)橋」、昭和29(1954)年に「里川橋」という2つがかけられましたが、沈下橋のほとんどがが架けられたのは、昭和30(1955)年以降です。
これは、輸送手段が水運から陸運に変わった転換期であったことも大きく関係しています。

欄干が無く、一般的な橋よりも橋脚が低く、橋の長さも短い沈下橋は、建設費が通常の橋よりも安く抑えられるというメリットもありました。こうした理由もあり、高知県内では四国最長の川の四万十川を中心に多くの沈下橋が、昭和30年~昭和50年後半までに一気に架設されました。


四万十川に最後にに架けられたのは昭和58(1983)年の仲久保沈下橋で、それ以降、架設されていません。
現在、大半の沈下橋は老朽化しています。中には安全上などの理由から取り壊されて、増水時に川に沈まない普通の現代的な橋などに置き換えられた橋もいくつかありました。

しかし、平成10(1998)年には、四万十川沈下橋保存方針を策定し、安全管理も含めて維持していけるものは「生活文化遺産」として沈下橋を可能な限り維持して保存することになりました。

四万十川は、四国で1番長い川で全長が196kmもあります。この川には、現在、本流に22本、支流に26本の合計48本もの沈下橋が架かっています。
現在も集落同士をつなぐ生活道として使用されながら、しっかり保全も行われています。

四万十川の源流はどこ?

出典:よさこいねっと

沈下橋と言えば、四万十川。
四万十川の源流点はどこかご存知ですか。
四万十川の源流点は、高知県高岡郡津野町にある不入山(いらずやま)の8合目にあります。この山は自然保護区となっており、今も手つかずの大自然が残されているので、年代物の古木や巨木も沢山あります。

その昔、この山は御留山(おとめやま)という名称でしたが、土佐藩が人の立ち入りや樹木の伐採などを一切禁じて聖域として守っていたことから、不入山(いらずやま)と呼ばれようになりました。

出典:よさこいねっと

四万十川源流点は、これまで1度も枯れたことがないそうです。四万十川は、川自体の全てがパワースポットになっていることでも有名ですが、この源流点も神聖な雰囲気に溢れたパワースポットとなっています。

四万十川の源流点へのアクセス方法

四万十川の源流点へは、不入山の登山口から入山できます。この登山口には北口と南口がありますが、北口は非常に険しいことで有名です。観光で行かれる方や初心者は、南口が絶対におすすめ!

トレッキングや山登りに適した靴や服装にリュックなどの装備を身に着けていれば、初心者でもたどり着ける場所です。ただし、万が一際のことも考えて、2人以上、もしくは、ガイドを連れて行くことをおすすめします。
「源流之碑」がある南側の登山口から「四万十川源流点」(上写真)までは、徒歩でだいたい20分~30分ほどです。

この登山口までは車でアクセスが可能となっていますが、登山口に近づくにつれて道幅が狭くなり、1車線の狭い道となります。対向車に気を使いながら速度を落として譲り合いながら運転しましょう。
登山口には駐車場がありませんが、近くには数台分ほどの車を停めれるスペースがあります。

四万十川源流点の基本情報

住所:高知県高岡郡津野町船戸(不入山南登山口)
電話:0889-55-2021(津野町産業課)

沈下橋の原型となった流れ橋で唯一現存する「早瀬の一本橋」

出典:2016奥四万十博推進協議会

「沈下橋」が誕生する前には、実は、この橋の原型となる橋があったのをご存知ですか。この橋は、「流れ橋」と呼ばれるもので、秘境になっている奥四万十エリアの北川川にある「早瀬の一本橋」で今も見ることができます。

低い橋脚の上に橋板が乗っただけのシンプルな作りとなっており、大雨が降って川が増水すれば、橋板は簡単に流れて行く構造になっています。このため、別名「流れ橋」とも呼ばれています。

ただし、橋板は簡単に流されないように、ワイヤーで橋の片側が岸側につながれています。これにより、増水時は川の流れに逆らうことなく漂いながらも、橋板が流失してしまうことは免れています。この近くには、現在2代目となっている「橋守杉」という大きな杉の木があり、その木の幹の根元にしっかり橋板とつながったワイヤーが巻き付けてあります。

沈下橋が架かる前は、四万十川にも流れ橋が沢山かかっていましたが、四万十川で現存しているのはココだけ!となっています。
沈下橋が生まれる前から、このエリアの人々は、自然と共生、調和する生活をずっと続けてきているのですね。

「早瀬の一本橋」は、長さ9m、幅60cm、厚さ30cmほどの木の板を互い違いに3枚使用しており、全長は27メートルほどです。まるで、アスレチックにある橋渡りのようです。

早瀬の一本橋へのアクセス方法

津野町役場西庁舎を目印に、そこから天狗高原の方向へ車で5分ほどです。この橋がある200mくらい手前には「山本酒店」があり、橋の近くには「早瀬の一本橋」を示す木製の看板もあります。

早瀬の一本橋の基本情報

住所:高知県高岡郡津野町芳生野1472

四万十川に架かる沈下橋の色々な1番を集めてみました!

出典:よさこいねっと

四万十川に架かる沈下橋には、色々な観点でナンバーワンやトップクラスとなって、その名を知られている橋もあります。そんな沈下橋をを5つ厳選して、これからご紹介いたします。

四万十川本流の1番上流に架かる「高樋の沈下橋」

出典:高知県 観光振興部 おもてなし課

「高樋(たかひ)沈下橋」は、四万十川本流の最上流にかかる1番目の沈下橋。地元では、「大股(おおまた)の沈下橋」という呼び名でも親しまれています。
昭和40(1965)年に架設されたこの沈下橋は、中土佐町大野見高樋に位置しており、前述の四万十川の源流点から18kmほどの場所にあります。

この橋の全長は30.1mほどで、幅は1.5m。対岸にある田んぼへ人が移動する為に架設された農業用の沈下橋なので、トラクターや車両が通過できるほどの十分な幅がありません。

川の水の透明度が非常に高いので、コイなどの魚が泳いでいるのも橋の上からくっきり見えます。観光客があまり足を運ばないので、のんびりと過ごせる美しいスポットです。
この橋は、平成21(2009)年2月に国の重要文化的景観に選定されています。

高樋の沈下橋へのアクセス方法

県道19号線を津野町方向へ向かうと河川の流れをコントロールする堰(せき)が見えてきます。そこが「高樋の沈下橋」です。
この橋がある県道の脇には、5台くらいの車を駐車できるスペースがあります。

この沈下橋を通過すると四万十川の源流点がある不入山(いらずやま)へ入っていくので、四万十川の源流点へ行く途中に立ち寄るのがおすすめです。

公共交通機関でのアクセスは、最寄り駅のJR土佐久礼駅からバスに乗車。そこから30分ほどの「中土佐町大野見庁舎前」で下車し、徒歩で10分くらいです。

高樋の沈下橋の基本情報

住所:高知県高岡郡中土佐町大字大野見大股

四万十川流域で1番長さが短い「須崎の沈下橋」


「須崎の沈下橋」は、四万十川流域で橋の長さが1番短い沈下橋。この橋は、観光客もほとんど訪れない、知る人ぞ知る奥四万十の秘境的な集落エリアに位置しています。
四万十川の1次支流の目黒川に架かるこの橋の長さは、わずか5~6mほど。対岸はすぐ階段になっており、人が渡れる程の幅しかありません。


この橋のあるエリアは、とてものどかな里山で、その美しい風景も見逃せないポイント。人もほとんど歩いていないので、この橋に座って川のせせらぎを楽しみながら、思わずおにぎりを食べてみたくなる衝動に駆られるのは私だけではないはず。優雅な時が流れる美しい非日常の異空間です。

須崎の沈下橋へのアクセス方法

非常に分かりづらい場所にあります。目印となるのは「大宮の郵便局」(住所は、高知県四万十市西土佐大宮1773-5)。この郵便局から2kmほど下がった場所にあります。この沈下橋の近くには、「須崎の沈下橋」と書かれた看板もあります。

四万十川流域で川底までの高さがトップクラスで低い「川角沈下橋」

出典:四万十町観光協会

「川角沈下橋(かわづのちんかばし)」は、県道の愛媛県道・高知県道2号城川檮原線から梼原町内にある集落へ渡るために昭和35(1960)年に架設された橋です。この橋の長さは30mほどで、幅は2.3m。橋脚の高さがトップクラスで低く、大雨の日にはすぐに沈下してしまうことでも有名です。

その後、下流側に川が増水しても沈まない橋脚が高い現代版の橋が作られ、住民はこの橋を日常で使用。現在は人がほとんど通らないひっそりとした穴場の沈下橋です。
平成17(2005)年に起きた洪水でこの橋の一部が被災しましたが、無事修復されています。

また、この沈下橋は、37番札所「岩本寺」にある清流殿の天井画にも描かれている沈下橋。この川の上流には、坂本龍馬が藩をぬけ出て浪人になった韮ヶ峠があるので、この橋を含めた道をかつての伊予の国(愛媛県)へ向かってお遍路しながら歩く彼のファンが現在も多いとのことです。

川角沈下橋へのアクセス方法

国道197号線から県道2号線へ川沿いに上り、20分程くらい車で走った場所にこの沈下橋はあります。

川角沈下橋の基本情報

住所:高知県高岡郡梼原町檮原町宮野々
電話:0889-59-5225

四万十川に現存する沈下橋の中で1番古い「一斗俵沈下橋 」


高知の東部に位置する壱斗俵と米奥集落を結んでいる「一斗俵沈下橋 (いっとひょうちんかばし)」は、昭和10年(1935)架設された、四万十川に現存する沈下橋の中で1番古い橋です。
橋の全長は60.6m、幅は2.5m。この橋ができるまでは、この2つの区間への移動は渡し船が利用されていました。

平成12(2000)年12月には、現存する最古の沈下橋として国の登録文化財に指定されています。
老朽化していることから、車での通行はできないのでこの点にはご注意下さい。

また、この沈下橋周囲は、四季折々の田園や里山風景も美しいので人気があります。春には美しい桜、5月にはこの橋にデコレーションされるこいのぼりも楽しめ、夏は近くの河原でバーベキューやキャンプを行う人でも賑わいます。

一斗俵沈下橋へのアクセス方法

車の場合、四万十町から県道19号線を利用すれば、15分位で到着します。電車の場合、最寄り駅はJR土讃線の窪川駅で、この駅からは11kmほど距離がありますのでタクシーでの移動となります。

一斗俵沈下橋の基本情報

住所:高知県高岡郡四万十町一斗俵
電話:0880-22-3135

四万十川本流の1番下流にあり1番長い橋「佐田沈下橋」


「佐田沈下橋」の名前で親しまれているこの橋の正式名称は「今成橋」。
四万十川本流の1番下流にあるこの沈下橋は、昭和46(1971)年に架設。
全長291.6m、幅4.2mあり、四万十川に架かる沈下橋の中でも最長の長さも誇ります。この橋のチャームポイントは、青い橋脚です。

出典:よさこいねっと

ドラマなどロケ地としても有名なこの沈下橋は、四季折々の絶景が人気となっており、一年中多くの観光客が訪れる人気のスポットとなっています。また、この橋の下を屋形船が通りますので、その風情ある景色も見逃せないシャッターチャンスです。

佐田沈下橋へのアクセス方法

車の場合は、四万十市内から国道441号線沿いに進みますと「佐田沈下橋」への指示看板が出ていますので、その看板を左折すれば到着します。

駐車場は、県道340号線沿いに無料の専用駐車場が用意されています。ただし、大型車は、四万十市街地内から県道340号線へ進入することができませんので、この点には注意が必要です。

電車の場合は、最寄り駅となる土佐くろしお鉄道の中村駅からタクシーで20分くらいです。

出典:よさこいねっと

佐田沈下橋の基本情報

住所:高知県四万十市佐田

次回は、四万十川に架かる沈下橋巡りのおすすめドライブコースをご紹介いたします。

書いた人

猫と旅が大好きな、音楽家、創作家、渡り鳥、遊牧民。7年前、ノラの子猫に出会い、人生初、猫のいる生活がスタート。以来、自分の人生価値観が大きく変わる。愛猫を連れ、車旅を楽しむも、天才的な方向音痴っぷりを毎度発揮。愛猫のテレパシーと自分の直感だけを頼りに今日も前へ進む。