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2020.02.07

おひとりさま御用達の隠れ家「ネオスナック」とは?昭和スナックの歴史とともに魅力を探る!

この記事を書いた人

ネオスナックが、今、面白いらしい。
最近知った「ネオスナック」や「ニュースナック」という言葉。(以後、ネオスナックと表記。)

ゆとり世代がママとなって経営している新世代のスナックは、昭和の時代に全盛期を迎えたスナックに対して「ネオスナック」などと呼ばれ、今、若い世代や女性を中心にじわじわひっそりと人気上昇中。
中年男性やサラリーマンが中心となっていた昭和時代のスナックの客層とも異なっている点も興味深い。

2020年1月現在で5万6千軒弱と言われている日本のコンビニの店舗数に対して、ネオスナックも含めたスナックの件数は推定で10万軒以上もあるらしく、日本に当たり前のようにあるコンビニの数よりもはるかに多い。
そんなに多くあるのに、スナックには行ったことが無い人が多いというのも面白い。
私もそんなひとりだった。

でも、ネオスナックは、そんな人でも意外と気づかないうちに行っていて、後からあれはネオスナックだったんだぁ… なんて、この言葉を知った後に気づくこともあるほど、多様性がありユニークなスポットとなっている。

今回は、ママやマスターのおもてなしと共にお酒を含めた飲食を楽しめる日本独自の文化スポット「スナック」の歴史を振り返りながら、この昭和のスナックから派生したネオスナックを覗いてみる。

昭和時代のスナックってどんなの?


ネオスナックのお客さんのほとんどが、昭和全盛期のスナックを知らない。
また、スナックは外から覗いても中が見えないし、たいてい常連さんの紹介で初めて入るのが一般的。
庶民的なイメージがありながらも敷居が高いという不思議な印象もあるので、行ったことが無い人も多い。いわゆる会員制のバーみたいにも思える。

私の昭和のスナックの思い出といえば、幼かった時に体験した夜中の怪奇現象くらいのものしかない。
新築住宅へ引っ越してきたばかりなのに、毎晩、深夜になると、どよ~んした声でささやきが聞こえてくる恐怖体験。でも、この恐怖現象を体験したのは、私だけではなかった。家族全員、さらにはご近所さんまでも!
この怪奇現象を近所の人が探ると、なんと、私たちが住む住宅街のはずれに新しくできた「スナック」が原因と判明…。

当時、出始めたばかりのカラオケによって、ガンガンにエコーがかかりこだましている歌の一部がスナックから漏れて、この一部分が切れ切れになって風と共に深夜に不気味に漂って聞こえてきていたのだった。
そう、この当時、まだカラオケボックスなどもなく、カラオケと言えば、スナックというのが当たり前だった時代のお話。人が歌っているカラオケを聞いたのもこの怪奇現象が私にとっての初めてだったのは言うまでもない。

1964年の東京オリンピックとスナック


そもそも、日本でスナックが誕生したのは、お酒だけを提供する業態の「スタンドバー」が起源となっているとのこと。
1964年の東京オリンピックを開催するにあたって、東京の街の風紀も見直す動きが厳しくなり深夜営業を行う風俗業の取り締まりを強化。お酒の販売を深夜まで行うスタンドバーは、軽食=スナックも提供することで表向きを飲食業の業態にして、この取り締まりから難を逃れたらしい。
これが、昭和時代に花開いた日本の夜の文化の1つ「スナック」の幕開け!

女性の社会進出にも貢献した昭和のスナック文化


昭和の高度経済成長の時代に誕生したこの文化は、多くの女性に経営者となる機会も与えたので、女性が経営するスナックの数が急増。
当時、男性経営者がほとんどの社会だったので、この出来事は女性の社会的な進出を助長する機会の1つにも貢献!
昭和時代のスナックにマスターよりもママさんが多いのは、こうした時代背景によるものとのこと。

昭和のスナックに欠かせないカラオケ文化


そして、昭和時代のスナックの発展に欠かせなかった日本発祥の文化「カラオケ」。
この誕生は、スナック文化が花開き始める1970年代初頭頃と言われている。
当時は、現在のようなカラオケBOXやひとりカラオケなどの施設もなく、カラオケと言えば、人前で楽しく歌うもの。

まず、この文化を普及させたのが業務用カラオケ。
スナックを含めた多くの夜間営業のお店や飲食店などに置かれ、大人の夜の社交場には欠かせない存在に!
こうして、スナックは、カラオケを楽しめる場としても人気を急速に獲得し、その勢力を拡大。

カラオケにより地域密着型のスナックも急増


このことによって、様々な地域にも「カラオケを楽しめる場所」という認識でのスナックも急増! 住宅街の外れや地方にもたくさんのスナックができ、地元の地域住民の社交の場にもなるような地域密着型のスナックがあっという間に増え、スナック文化が一気に開花!!
スナックが多いエリアは、夜の治安が良かったり、犯罪が少ないというデータもあるのは、こうした地域密着型のスナック文化のおかげなのかもしれない。

バブルに絶頂を迎えたスナック


1986(昭和61)年頃から1991(平成3)年位まで続いた日本のバブル時代。
スナックは、サラリーマンに人気の飲み屋街に次々に新設される雑居ビルなどにも進出!
女性の会社員が仕事終わりに友人たちとカラオケを楽しんだり、サラリーマンが2次会で飲みながら楽しくカラオケを歌うスポットとしても定番化するまでにスナック文化は繁栄。

スナックの氷河期が到来


しかし、バブル期とカラオケによって大いに栄え続けた昭和のスナックも、平成に入りバブルが崩壊すると氷河期の時代が到来。

世の中の景気が悪くなっていったことだけではなく、この頃、スナックに代わる別の業態のいくつかの水商売の誕生に加えて、カラオケボックスの誕生が、スナック文化に追い打ちをかけることに…。
さらには、古くからの常連さんが年配になっていくという日本の高齢化問題やお酒を飲まない若い人々が多いという新世代の文化も拍車をかけ、西暦2000年を迎える前には「スナック」という言葉が死語になりかかるほどの最大のピンチに!

ネオスナックの誕生


ところが! スナック文化は死ななかった。
昭和から営業しているスナックの数は確実に減少を続けていたが、ゆとり世代の若いママが、その隙間を埋めるように少しずつ続々と誕生していた!!

そして、昭和時代のスナック文化から派生したゆとり世代の若いママなどによる新世代のスナック「ネオスナック(ニュースナック)」の軒数は、現在、スナック氷河期よりもハイペースで増加傾向にあるらしい。
しかも、昭和時代のスナックとは大きく違っていて、面白い点も多い。

時代が変われば事情も変わる


昭和の時代にスナックの顧客層の大部分を占めていた既婚者のサラリーマンや家庭に居場所を無くした中年男性などは、スナックのママさんに仕事や家庭の愚痴や弱音を吐いたり、日頃のストレスを楽しいお酒を飲みながらスナックのカラオケで発散している人々が多かったとのこと。

しかし、現在、ネオスナックにやって来る人々の大部分は、20代から30代の若い世代の人々で、女性客も多い。

性別問わず、会社社会だけではなく、それ以上にネット上の社会やコミュニティでの疲れや倦怠感からの逃避に足を運ぶ人も多いと言う。さらに、結婚をしない生き方を選ぶ人も多くなっていることもあり、家庭のような温もりを求めて来る人や、利害関係なしに素の自分のままで顔を合わせて気軽にリアルな世界で話せる人々を求めて来る人も非常に多いらしい。

つまり、昭和の時代に比べて、客層は圧倒的におひとりさまと言われる独身者が多く、その事情も様々。都心を中心に現在、ネオスナックは増加中となっている。

ネオスナックは多様性に富んでいる


そして、ネオスナックへ通う人の多くは、お酒をそこで飲むことが必ずしも第一の目的でもないという点も興味深い。お酒を飲まないのであれば、別の場所でもいいのでは?と思う人もいるかもしれない。しかし、(ネオ)スナックというある種、ママやマスターなどを中心とした閉鎖的な空間だったり、同種の人々が集まってすぐに共感しあえる心地よさに安心感や癒しを得ることができ、また、お店にもよるが、プライバシーも守られるからオフラインのこの世界に安心するとのこと。

また、ネオスナックへ通う若い世代はお酒を飲まない人も多く、昭和時代のスナックとは異なり、ノンアルコールビールやカクテルなど昔のスナックには無かったノンアルコール系のドリンクも豊富に揃っているお店も多いらしい。

しかし、そうかと思えば、こだわりに溢れたママやマスターの趣味が反映された珍しいお酒が揃うオーセンティック・バーのようなお店もあったりもする。こうしたスポットには、昭和の時代のスナックを知っていながらもその時代には行っていなかった現在中高年となった人などが多いとのこと。昔、夜の街を遊びつくした人が最後に行きつくような洗練されていながらも快適な空間を提供するようなお店が多いと言われている。

また、ママやマスターの趣味と同じ趣味を持つ人々が集える同好会のような雰囲気のマニアック系なものや、昭和時代を知らない世代が演出する昔ながらのカラオケマシーン付きのなんちゃって昭和のレトロな雰囲気のネオスナックも多いらしい。さらには、日替わりママが登場するところもあったりするので、一概に定義付けてひとくくりにできないほど非常に多様性に富んでいるのもネオスナックの大きな特徴。

だから、ネオスナックという言葉を知らなかっただけで、仕事関連の人や友人などの紹介で連れて行ってもらったユニークなコンセプトのバーや会員制バーなどの中には、実は、ネオスナックであったというパターンも多々あるという驚きの事実! ネオスナックやニュースナックという文字をわざわざ表示していないお店も非常に多い。

クラウドファンディングでネオスナックを開店する人も多い


昭和時代は、常連に連れてきてもらって、その人もやがては常連になっていくパターンが多かったスナック。現在もそうした文化は引き継がれているが、ネオスナックは会員制にしているところが多いのも特徴。これにより、他のお客さんのプライバシーやお店の雰囲気も守っている。

不透明な会計のお店も少なくなかったと言われることもある昭和のスナックとは異なり、そこは現代っ子らしく明瞭会計。料金システムをホームページに明示しているお店も多いらしい。これにより、初めてひとりで訪れるお客さんにも敷居が下がって入りやすくなっているようだ。

そして、興味深いのは、現代らしく、クラウドファンディングでネオスナックを開店する人も少なくないという事実!
特に昭和の時代などの昔は、ひとりのパトロンにお金を出資してもらってスナックを開店したというママさんなどの苦労話も少なくなかった。でも、ある意味、クラウドファンディングで大勢の人に出資してもらう方が、はるかに健全なのかもしれない。

さらに面白いのは、クラウドファンディングしている過程で、出資者を会員にし、そのお店に集うコミュニティを会員制のシステムを通して形成しているという点。

クラウドファンディングのサイト上にある新しく企画されているネオスナックを見ると、何かの同好会的な要素のコミュニティの場であったり、空間コンセプトが素晴らしかったりと、そのお店のママやマスターの個性、そのお店の開店の目的次第で多様な種類のネオスナックの企画があった。これまでなかったニッチな分野ほど人気が高いのもわかるような気がする。

資金が集まってそのネオスナックが開業すれば、ママもしくはマスターは店を営業できるし、出資者は会員という特権と共にそのお店の公約にあった空間で思い思いの時間を過ごすことができる。そこでしか出会えないような人々に出会えたり、非日常体験を満喫できたりなど、そこに集まる人しか理解できないようなある種、特殊な付加価値に溢れている。だから、投資する人々は、それらを生み出すことが可能なその場所に共感してお金を投資し、こうしたリターンを開店後に通うことで個々に得ている。

禁煙にしたら女性客が急増、スナ女も誕生


2020年に東京オリンピックが開催されることもあり、2020年4月から飲食店では原則、屋内では全面禁煙となる。
しかし、ネオスナックでは、その前からこれを実施している所が少なくない。
この風潮は、昭和時代からスナックを続けてきたママさんにも大きな影響を与えている。特にスナックのママさんに多い職業病の1つ、副流煙による体調不良に悩むママさんたちの多くは、ネオスナックの禁煙モデルを見習って、禁煙や分煙(喫煙は外)システムをこの法の施行前から取りいれたお店に変えているところも少なくない。

これにより、女性の新規顧客やたばこの煙が嫌いだったがためにネオスナックではなくスナックへ行ってみたくても来れなかった人々がやって来るようになり、ネオスナックへ通う若い世代や女性のお客さんなども来店するようになったという棚ぼたの話もよく聞く。
また、禁煙のスナックやネオスナックの増加で、会社帰りにひとりでこうした場所に通う「スナック女」、略して、「スナ女」という言葉も誕生するほど、女性客も増加している。

つまり、ネオスナックに通う若い世代の多くは、昭和時代の大人よりも健康志向な人がとても多い!
だから、本来だったら夜に出歩いて寝不足になる不健康な生活も基本的にはしないし、たばこやお酒などはもってのほかとする人も多い。
にもかかわらず! 彼らは通う。

ネオスナックは、禁煙の空間でノンアルコールドリンクも選択可能である場所が少なくない。日中やネット上では出会えない面白い出会いがある。そして、自分が素に戻っても否定されない本当の意味でリアルに楽しめる日常に欠かせない世界が、隠れ家のようなママやマスター中心に成り立っているコミュニティの中にあるからだろう。

未来のネオスナック


様々な理由で、性別年代問わず、おひとりさまが昔より多い現代。
都会を中心に増加中のネオスナックは、多様なスタイルが特徴。
多様なコミュニティを表すかのように、多様な種類のネオスナックが出現していて面白い。
今後は、かつて昭和時代のスナックが都心部から郊外や地方へ進出し増加していったように、地域密着型のネオスナックも益々、増えていくことだろう。

もしかしたら、自治会運営の地域密着型のネオスナックが地方集落に誕生することもあるのかもしれない。自治会の年会費を納める代わりに、このネオスナックの会費を毎年徴収されたりして!
年配者が増えた地区などで、このネオスナックにて、先立たれておひとりさまになってしまった高齢者のお食事を出したり、飲みすぎない程度に気を付けてあげながらお酒を出したり…。もちろん、お茶もみかんも和菓子もある。
しかも、そのネオスナックのママもしくはマスターは、高齢者介護の免許も持っている若い人、そして、小ママ(チーママ)は栄養士…なんてね。
これを行き過ぎた発想ととらえる人もいるかもしれない。

しかし、1つ言えることは、秋葉原は現在、サブカルチャーの中心としても有名だが、今後は、おひとりさまの隠れ家でもあるネオスナックからも新たなサブカルチャーが続々、生まれてくるのではないかと私は予感している。

スナック文化が誕生して花開いたのは、1964年の東京オリンピック後。
2020年の東京オリンピック後には、多様性に溢れる時代にふさわしい令和の時代に、今度はスナックから派生したネオスナックが花開くのだろう…。

書いた人

猫と旅が大好きな、音楽家、創作家、渡り鳥、遊牧民。7年前、ノラの子猫に出会い、人生初、猫のいる生活がスタート。以来、自分の人生価値観が大きく変わる。愛猫を連れ、車旅を楽しむも、天才的な方向音痴っぷりを毎度発揮。愛猫のテレパシーと自分の直感だけを頼りに今日も前へ進む。