Gourmet
2017.05.15

明治初期に建てられた、京都一品のいいおそば屋さん『尾張屋 本店』

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本家 尾張屋 本店

-文/和樂スタッフ藤田優(京都取材歴ナンバーワン。食をはじめ雑貨にも詳しい)-

旅先に行きつけのそば屋があると何かと助かる。店は通しで開いているので、早めのお昼、軽い夕食などこちらの都合で立ち寄ることができるから。京都では特に、蒸し暑さにやられたときや底冷えに震えるとき、私は喫茶店に入るようにそば屋に吸い込まれてしまう。小さな座布団、屋号がさりげなくあしらわれた清水焼のお湯のみなど、ちょっとしたところにもこの町の美意識が感じられて、京都にいることを実感する。
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「本家 尾張屋」は京都中心部に3軒もある(2015年夏まで錦市場のそばにもう1軒あったが、今は期間限定のそば粉を使ったカフェとして営業中)。そのうち本店だけが少しだけ足を延ばす必要があるのだが、明治初期に建てられたという堂々たる木造建築を目にすると、やっぱりここに来なくては、とニンマリする。1階右手にある茶室は天井の網代といい、壁の風合いといい、そこにいられるだけでありがたく感じられる空間だ。ここでのんびりできると、その日一日がめっけもんになる。
スクリーンショット 2017-05-12 12.16.11茶室は17時〜閉店前が狙い目。ほかにテーブル席や座敷も。

ここのそばつゆは鯖やうるめ節を効かせた深い味わいに特徴がある。東京出身の私はだしの強さに最初は驚いたが、今ではおだしの飲みたさに、そばを頼むようになってしまった。そして青葉の季節になれば「そばそうめん」が献立に上る。昨年初めてその味を知り、半年以上経つのに恋しくてたまらない。そば?そうめん?その答えは、初夏になったらお店にてご確認を。
スクリーンショット 2017-05-12 12.16.19名物のひとつ、利休そば。「麩嘉」の利休麩を好んだ先代が考案したもので、麩や湯葉がふんだんに入った京都らしい逸品。