第4回は【特別版:末富、亀廣保、塩芳軒】です。
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うつわに景色を描くことも干菓子をいただく楽しみです
お茶の道では、季節にあう干菓子とうつわを選び、その取りあわせを楽しむ。それが薄茶一服を豊かにしてくれるそうですが、難しいことは抜きに、気楽に干菓子をたしなみませんか? そこで、「秋めく京都の干菓子図鑑」の特別版では、うつわに〝映える〟こと確実な3軒の老舗で人気の逸品をご案内します。
持ち帰りができるように、たいていの干菓子は箱入りで販売されていますが、それを箱からそのまま食べるのはもったいない。お気に入りのうつわに出して、その造形をまずは愛でましょう。大きさや厚みに〝規格サイズ〟があるわけではなく、生地のもつ糖度や風味で定まっていることに気づきます。もちろん、そこには店主の考えるおいしさの物差しがあります。
ここで紹介する3軒の干菓子は造形美と味の評価が高いつくり手のもの。比較ができるようにあえて同じうつわに盛ってみました。吹き寄せのように重ねるもよし、散らすもよし。これを習慣にしてしまえば、いざお客様をもてなすときにも、役に立ちそう!
なかでも「亀廣保」のような干菓子専門店は、現在も「座売り」と呼ばれる対面の商いをしています。ひとつから売ってくれるとはいえ、初心者にはハードルが高すぎる。
そんなときは、「今の季節はどんなものがありますか?」と聞きましょう。干菓子の世界にも〝三題噺(ばなし)〟のような、お約束の組み合わせが四季折々に用意されています。これを手がかりに景色を描くと、そこに日本人の心象風景が表れます。
古い店に残された意匠で、今も使われているものは、先人たちがその昔をなつかしみ、愛した自然や風俗の標本のよう。干菓子とたわむれるひとときは、ちょっとしたお茶の時間にも彩りを与えてくれます。
気分は仙厓!? 琥珀糖を禅画に見立てる
末富の「きらめき」
ユニークな禅画を描いたことで知られる、江戸時代の博多の禅僧・仙厓(せんがい)の傑作として有名な「○△□」。それを模した遊び心を楽しむことができる「きらめき」は、シャンパーニュ・メゾン「アンリ・ジロー」の果実酒を含む「琥珀」製。考案者の「末富」4代目主人・山口祥二さん曰く「日本酒や白ワイン、ハーブティーにもどうぞ」。手切りによるふぞろいさがあえて目立つように並べてみると、こんなに素敵な雰囲気に! 6個入り1,620円(税込)。
店舗情報
末富(すえとみ)
住所:京都府京都市下京区松原通室町東入ル
電話:075-351-0808
営業時間:9時~17時
休み:日曜・祝日
●お取り寄せ:ウェブサイトhttps://shop.kyoto-suetomi.com/ 電話でも受け付ける
雀、鳴子、稲穂がそろい、実りの秋来たる!
亀廣保の「初秋の干菓子」
高温の飴生地を細工物に仕上げる「有平糖(あるへいとう)」は干菓子専門職人の腕の見せ所。少し日をおくと、できたての飴とはまた違う、ホロッとした食感が楽しめる。秋ならではの意匠である、雀と鳥追いの道具である鳴子(なるこ)・稲穂と葉は各1組で270円(税込)。※9月後半~10月の販売。
店舗情報
亀廣保(かめひろやす)
住所:京都府京都市中京区室町通二条下ル蛸薬師町288
電話:075-231-6737
営業時間:9時~17時
休み:日曜・祝日
●お取り寄せ:電話で受け付ける
そろえることで日本古来の文様の美が際立つ
塩芳軒の「百とせ」
菊、桐、龍と鳳凰の意匠を詰め合わせた和三盆糖の打ち菓子。菓銘の「百年」を軽く超えて愛される味わい。讃岐産和三盆だけを用いた干菓子を得意とし、多彩な大きさ・食感で提供。「百(もも)とせ」のやわらかさは日本茶向きだとか。18枚入り972円(税込)。
店舗情報
塩芳軒(しおよしけん)
住所:京都府京都市上京区黒門通中立売上ル飛騨殿町180
電話:075-441-0803
営業時間:9時~17時30分
休み:日曜・祝日・月1回水曜(不定)休
●お取り寄せ:ウェブサイトhttps://shop.kyogashi.com/ 電話でも受け付ける
撮影/石井宏明 構成/藤田優
※本記事は雑誌『和樂(2021年10・11月号)』の転載です。掲載データは2023年9月現在のものですが、お出かけの際は最新情報をご確認ください。
※アイキャッチ画像の左上は柏屋光貞の「残菊」、左下は鍵善良房の「園の賑い」です。