奈良桜井にある古刹、聖林寺。ここには、数奇な運命をたどった美しき十一面観音立像が安置されています。天平仏の最高峰とも称されるこの十一面観音立像に会うために、今回聖林寺を旅最大の目的として1泊2日の奈良弾丸寺社巡りをしてきました。奈良・桜井を楽しみ尽くす、おすすめの寺社巡りをご紹介します。
旅人・小竹智子
1泊2日の奈良・桜井寺社巡り
聖林寺を含め、お参りに訪れた寺社は全部で8つ。スタートは新横浜駅、ゴールは奈良駅。1日目のAM・PM、2日目の3つに分けてやりきった感満載のコースでお届けします!
聖林寺の国宝・十一面観音立像って?
和樂2018年2・3月号では国宝・十一面観音立像のスクープ撮影に成功しました! 見開きの写真は頭上の仏さまです。
十一面観音菩薩は、慈悲の仏である観音菩薩が、衆生を救うために変身する変化観音の一種で、頭上に11の顔(化仏)をもちます。聖林寺の十一面観音立像は、天平時代に木心乾漆の技法で造像されたもの。元々は大神神社の神宮寺(大御輪寺)の本尊でした。慶応4年の神仏分離令で廃仏毀釈の嵐が起こり、大御輪寺も廃寺になりますが、幸い本像はその前に聖林寺に移され、破壊や国外流出の難を逃れました。
均整のとれた量感のある姿、衣の自然なカーブ、微妙に変化した手の表情。この十一面観音立像の気高さ、美しい姿に白州正子や和辻哲郎、土門拳なども心酔したといいます。
1日目AM 田んぼに鳥居!?
三輪にある何度でも詣でたい「大神神社」
- 07:20 新横浜駅
- 10:20 奈良駅
- 10:40 三輪駅
- 11:00 大神神社
- 12:20 そうめんの「森正」
- 12:50 若宮社
- 13:15 「白玉屋榮壽」の“みむろ”
07:20 新横浜駅
東海道新幹線で新横浜から京都へ、その後JR線で奈良へ向かいます。朝ごはんは、なんてったって「崎陽軒」のシウマイ弁当。新横浜駅で買うのですが、つくりたてでほんのりあたたかいことも。毎日約2万個、日本一売れてる駅弁の実力にひれ伏す瞬間です。
10:20 奈良駅
奈良に到着したらJR桜井線の三輪駅へ。この頃の季節は田植えがはじまったばかりのころで、まるで水をたたえた田んぼの中を走っているみたい。突如現れる大鳥居が見えてきたら、大神神社はもうすぐです。
10:40 三輪駅
電車から見えた大鳥居とは少し離れた位置に大神神社はあります。移動はすべて徒歩で、三輪を満喫しましょう。
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11:00 大神神社
最強パワースポットともいわれる日本最古の神社、大神神社。過去3度のお参り後、ありえないような嬉しいことが2度も! とにかく大好きな神社です。
(左写真)境内の樹木からのセンリョウの苗を分けていただきました。(右写真)大神神社から約5分の狭井神社へも。ここには三輪山の登山口があり…そう、なんと御神山に登拝できるのですが、往復約1時間半、かなりキツイ…。今回は遠慮させていただきましたが、はじめての方はぜひ!
国土開拓の神、大物主大神が鎮まる三輪山を御神山とした、本殿を持たない古の信仰の形を残す。現在の拝殿は寛文4(1664)年に再建(重文)。
◆大神神社(おおみわじんじゃ)
住所 奈良県桜井市三輪1422
公式サイト
12:20 そうめんの「森正」
大神神社詣でに欠かせないのが、そうめんの「森正」。築100年以上という家屋を改装したオープンエアな空間で、寒い時季にはにゅうめんを、夏は冷やしをいただきます。柿の葉寿司やわらび餅も美味!
12:50 若宮社
そもそも聖林寺の十一面観音立像は、大神神社の神宮寺だった大御輪寺(今の若宮社)に祀られていたもの。廃仏毀釈時に奥まった聖林寺へ移され、消失を逃れました。このお宮にも忘れずお参りします。
13:15 「白玉屋榮壽」の“みむろ”
大鳥居の近くにあるこのお店。最中…あまり好きじゃなかったけれど、「白玉屋榮壽」の“みむろ”という最中を取材したら、イメージをくつがえされるほどのおいしさ! 以来病み付きに。翌朝ホテルの部屋は、香ばしい皮の香りに包まれて…。
1日目PM 土門拳、白洲正子も愛した仏さま…
「聖林寺」の十一面観音立像へ
- 13:35 三輪から桜井へ
- 14:15 聖林寺の国宝・十一面観音立像
- 15:40 談山神社の十三重塔
13:35 三輪から桜井へ
三輪から桜井は電車でひと駅3分。1日目の午後はバスと徒歩移動で聖林寺→談山神社へ巡ります。桜井駅から聖林寺の停留所へはバスで10分弱。ゆっくり景色を眺めることができるから、旅先ではバス移動がおすすめです。もちろん時刻確認は怠らず。
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14:15 聖林寺の国宝・十一面観音立像
バス停から聖林寺までは徒歩で3分ほど。奈良旅の最大の目的、国宝・十一面観音立像が安置されている聖林寺に到着。
(左写真)東京藝大の学生さんたちがスケッチに来ていました。で、私も真似てみたわけで(笑)。(右写真)巨大な石地蔵を祀る本堂からは、山の辺の景色が一望に。
奈良時代開山の古刹。大御輪寺から移された十一面観音立像は長く秘仏とされてきたが、フェノロサや岡倉天心によって開扉。以降、数多の人々を魅了し続けている。
◆聖林寺
住所 奈良県桜井市下692
公式サイト
15:40 談山神社の十三重塔
聖林寺からさらにバスにゆられて談山神社まで。奈良の奥の奥へ来た感が…。でもこのフレームアウトしてしまう迫力! 世界にたったひとつの木造十三重塔です! ついでで来られる所じゃないので、今回予定に入れたのは大正解!
奈良時代初期の678年に建立されたのが、当社のシンボル的存在の木造十三重塔。現在の塔は享禄5(1532)年の再建。
◆談山神社
住所 奈良県桜井市多武峯319
公式サイト
2日目 「円成寺」「春日大社」「新薬師寺」を巡る
2日目のスタートは奈良駅。3つの寺社を巡ります。そして旅に買い物はつきもの。買い物タイムもしっかり確保して奈良旅のお土産をGETしましょう!
- 09:20 奈良駅
- 09:50 円成寺の国宝・大日如来坐像
- 12:05 春日大社の万燈籠
- 12:55 奈良公園
- 13:20 新薬師寺の十二神将
- 14:00 カフェ「カナカナ」
- 14:50 ならまちで買い物タイム
- 16:20 田村青芳園茶舗
- 16:50 古梅園
- 18:00 奈良駅
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09:50 円成寺の国宝・大日如来坐像
テレビコマーシャルでもおなじみ「うましうるわし奈良」に誘われ、奈良駅からバスで円成寺へ。運慶のデビュー作といわれる大日如来像に再会です。池越しに見る楼門の景観も素晴しい!
楼門と庭園の景観が美しい古刹。藤原時代の阿弥陀堂建築である本堂、本尊の阿弥陀如来坐像、運慶の作である大日如来坐像と、足を延ばす価値あり。
◆円成寺
住所 奈良県奈良市忍辱山町1273
公式サイト
12:05 春日大社の万燈籠
円成寺からタクシーで春日大社へ。春日大社は創建1250年! 藤の香りに包まれた朱色の社殿、みやびです!
春日大社の一刀彫鹿みくじが可愛い!
2年前の第60次式年造替で、国宝の本殿をはじめ社殿が美しく蘇った春日大社。年に数回火が灯る万燈籠の神事が体験できる、暗闇に光る燈籠展示もあり。
◆春日大社
住所 奈良県奈良市春日野町160
公式サイト
12:55 奈良公園
訪れた日はGW前、奈良市内の最高気温は29度だったけれど、春日大社の参道で汗だくになったついでに歩こう! 奈良公園の端、しばらくは涼し気な木陰が続く“中の禰宜道(ねぎみち)”を抜けるとまた灼熱の日差しが…。
鹿がこんな近くまで!
13:20 新薬師寺の十二神将
新薬師寺に到着。巨人軍の頼れる中継ぎマシソンと同じ191㎝の薬師如来坐像(座ったままで191㎝)を囲んで守る十二神将像はやっぱりすてき!
天平19(747)年、聖武天皇の病気平癒を祈願して光明皇后によって創建。本尊の薬師如来坐像を取り囲むのは、日本最古で最大の十二神将(いずれも国宝)。
◆新薬師寺
住所 奈良県奈良市高畑町1352
公式サイト
14:00 カフェ「カナカナ」
今日はこのまま歩きとおすか、ということで、高畠エリアからならまちへ。もうすぐ14時、歩き疲れた体にほっこりごはんが食べたい…で、町家系ほっこりカフェの「カナカナ」へ。女子が好きそうな店だけど、男性客もいっぱい。
14:50 ならまちで買い物タイム
奈良公園の近くにはカフェや雑貨店が並ぶ商店街、細い路地があります。ここでぶらぶら歩きながらお買い物タイム。サボ型靴の「NAOT」で気持ちよさそうな靴下、「吉田蚊帳」でふきん、「風の栖」でマドラス綿のハンカチ。ならまちで必ず寄るおすすめ3軒です。ギャラリーショップ「ならまち工房」も楽しい!
奈良の特産品のひとつが蚊帳。粗めに織った薄手の布は、食卓や台所で活躍する布巾としても優秀。蚊帳生地をカラフルに染めた「吉田蚊帳」の布巾、ふわふわで使い心地が気持ちいい。ひとつ420円です。
16:20 田村青芳園茶舗
店先でいい香りをさせているのは「田村青芳園茶舗」。空海が唐から持ち帰った種がはじまりという奈良の大和茶を扱う老舗です。ほうじ茶の焙煎機、ガラスの商品ケース…いつまでも頑張ってほしいお店。
編集部へは抹茶をお土産に
16:50 古梅園
「古梅園」で墨を購入。さすが老舗の専門店、以前買った墨と違うものをという曖昧な要望にも、親身に対応してくださいました。
18:00 奈良駅
8つの寺社詣でと、奈良まちぶらぶらの1泊2日旅。ひとりだったから強行軍もへっちゃらだったけど、同行者がいたら2泊したほうがいいボリュームです(笑)。バイバイ奈良、また来るよ~。