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2017.07.11

島根・松江「objects」全国の器好きが目指す手仕事の名店とは?

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神話と民藝の里『出雲』と、手仕事とコーヒーの町『松江』。山陰きっての散策パラダイスを旅してみませんか?和樂2017年8・9月号の出雲・松江特集と合わせてお読みください。

objects

民藝や作家ものなど手仕事の器に惹かれる人が増えている昨今、じゃあ『いい器』ってなんだろう?と思うこともしばしば。そんな疑問にシンプルな言葉と説得力のある品ぞろえで応えてくれるのが、松江のセレクトショップ『objects』です。
スクリーンショット 2017-07-06 10.55.29山陰を始め、全国から選んだ手仕事の器が並ぶ。右は島根の『白磁工房』のカップ&ソーサー 4,860円とピッチャー 4,320円(ともに税込み)。

「僕がいいと思うのは『心に響くもの』です」

ちょっとカッコつけてしまったでしょうか…と照れ笑いしながら、白磁のコーヒーカップを手にとってそう話すのは、店主の佐々木創さん。「皿もコーヒーカップもいわば生活の道具。道具としての使いやすさを追求するなら、もっと合理的なものが世の中にはたくさんあります。それでもわざわざこれが欲しいと思うのはカッコいいからです。『ただの道具がこんなにカッコいいなんて!』と感動する。身近にあることが心の栄養になるのです」
スクリーンショット 2017-07-06 10.56.08柳が揺れる大橋川沿いに建つ店舗。築70年を超えるテーラーを改装したという趣のある建物だ。

そう話す佐々木さんが、松江城近くの大橋川沿いにこの店を開いたのが2011年。自らコツコツと窯元や作家の元に出向いて選んでいるという品ぞろえのすばらしさが、器好きの間でジワジワ評判になり、いまや全国からこの店をめざして松江を旅する人も少なくないという人気店に。店内には、『森山窯(もりやまがま)』『白磁工房』『湯町窯(ゆまちがま)』『出西窯(しゅっさいがま)』など島根の窯元で焼かれる陶磁器のほか、益子(ましこ)の陶器や岡山のガラスなど、日本各地の作り手による手仕事も多数並んでいます。スクリーンショット 2017-07-06 10.57.20左/独特のブルーが美しい湯呑(2,160円・税込み)は、河井寛次郎最後の内弟子が築いた島根の『森山窯』。右/象嵌(ぞうがん)の技法を使った皿は益子の島岡桂(5寸皿 4,050円・税込みなど)。

また、沖縄のマカイ(碗)や長崎の波佐見焼(はさみやき)など、古い器が並ぶコーナーも充実。「古い器には、手でつくられたものが本来持っている美しさや骨太な存在感が感じられる。現代のものを選ぶときも、古い器と並べて似合うものを選んでいます」と佐々木さん。民藝やその系譜の作り手たちの器には、そういった本質的な美しさや存在感がある、と話します。
スクリーンショット 2017-07-06 10.58.15沖縄のマカイ(碗)など古い器も並ぶ。

店内には、器以外にも気になるものがあれこれあって、そのひとつが『土瓶の弦(つる)』。松江の山野孝弘さんが手がけています。「いい弦をつけると土瓶の格が一気にあがる。思わず笑ってしまうくらい変わります。今は職人がなかなかいないのですが、山野さんの弦は太さもカーブも削りの具合も見事。ウチでは使いやすくて持ちやすい太めの弦を仕入れています」。また、壁に飾られていた明治ごろの藍染め木綿裂(もめんぎれ)にも目が釘付け。「出雲や松江でごく日常的に織られていたもの。4枚つなげて布団カバーに仕立てたりしたそうです。松竹梅など縁起のいい模様が多く、シンプルでカッコいい」
スクリーンショット 2017-07-06 10.59.08「土瓶の格がぐっとあがる」という美しい弦は、松江の山野孝弘さん作。2,160円(税込み)~。左の土瓶は佐々木さんの私物。

スクリーンショット 2017-07-06 10.59.49明治ごろの藍染め布は色も状態もいいデッドストック。縁起のよい柄が染め抜かれている。1枚 5,400円(税込み)

お店に並ぶものの何についてたずねても、その背景や歴史から作り手にまつわる物語まで、丁寧にわかりやすく話してくれる佐々木さん。「あの棚の上のふっくらした器は?」「これは『ぼてぼて茶碗』という、松江周辺で使われていた庶民の器で…」など、ほかのお客さんとの会話が耳に入ってくるのも楽しかったりして、お店で買い物をする楽しさってこういうことだよなあ、と改めて思わせてくれるのです。

objects

住所 島根県松江市東本町2-8
営業時間 11時~19時
定休日 不定休

JR松江駅から徒歩15分

-撮影/篠原宏明-

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