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2023.11.28

京都の魅力がここにある! 紫式部『源氏物語』にひたる、めくるめく宇治の旅

京都駅から電車に乗って、約20分。そこには、かつて貴族の別荘地として愛された「宇治」があります。"もののあはれ"を託すにふさわしい、豊かな自然と美しい景色を称える宇治の地は『源氏物語』の舞台にも選ばれました。

そんな宇治の魅力と、和樂web編集部が実際に訪れた、おすすめの観光コースをご紹介します。

宇治ってどんな場所?

平安時代の宇治は、都の喧噪から離れた貴族たちの別荘地でした。10円玉のデザインに使用されている宇治の「平等院」も、藤原頼道が、父・藤原道長より譲り受けた別荘を1052年に仏寺に改めたものです。

そんな宇治を何より有名にしたのは『源氏物語』の「宇治十帖(うじじゅうじょう)」ではないでしょうか。「宇治十帖」は『源氏物語』における、光源氏亡き後の物語。光源氏の息子・薫と、孫の匂宮(におうのみや)2人の美しい男性が、宇治で暮らす姫君たちと繰り広げる複雑なラブストーリーは、今なお私たちの心を掴んで離しません。

宇治川を渡る浮舟(うきふね)と匂宮。薫と匂宮に愛された浮舟は、悩んだ末に入水を決意する
源氏物語図屏風「御幸」・「浮船」・「関谷」(部分)/土佐光吉(1539–1613)/メトロポリタン美術館蔵

そんな『源氏物語』の世界や、平安時代の面影を今に伝える宇治は、『源氏物語』ファンなら必ず訪れたい場所なのです! 

宇治へ行くならここ! 『源氏物語』おすすめスポット

『源氏物語』がもっと楽しめる、和樂webおすすめの観光コースをご紹介します。お茶の産地としても有名な宇治には、お茶を使った料理やスイーツが堪能できるお店もたくさんあるので、宇治グルメを楽しみながら巡りましょう!

激しい流れに想いを託された「宇治川」

平安時代の宇治川は急流で激しい音をたてていて、その川の音が心乱すとも、楽器の演奏を引き立てるとも『源氏物語』には書かれています。「宇治十帖」にはたびたび宇治川に心情を託した和歌も詠まれ、登場人物や平安時代の人々に想い馳せるのにふさわしい場所です。

橋姫の心を汲みて高瀬さす棹のしづくに袖ぞ濡れぬる (薫)
さしかへる宇治の川長朝夕のしづくや袖をくたしはつらん(大君<おおいきみ>)
『源氏物語』「橋姫」より

薫と、宇治の姉妹の長女・大君の贈答歌。涙で袖が濡れるような憂愁を共有し、薫は大君と親交を深めようとする。

宇治川沿いには『源氏物語』や紫式部のモニュメントも。ぜひ探してみて!

宇治のシンボルとも言える宇治橋は、大化2(646)年に道登によって創建されたと伝わります。平安時代の「橋」は、男女の恋の不安を象徴することが多く、「宇治十帖」においても切ない恋心を託されています。愛しい人に会うために渡る宇治橋は、とても長く感じたことでしょう。

中絶えむものならなくに橋姫のかたしく袖や夜半にぬらさん(匂宮)
絶えせじのわがたのみにや宇治橋のはるけき中を待ちわたるべき(中の君)
『源氏物語』「総角」より

匂宮と、大君の妹・中の君が一夜を迎えた後の歌。重い身分の匂宮は、遠い宇治までまめに訪れることができないが、それは中の君を愛していないからではないと伝える。

1700年を超える由緒のある「宇治神社」

2023年に創祀1710年を迎えた宇治神社。御祭神である菟道稚郎子命(うじの わきいらつこの みこと)を、うさぎが振り返りながらこの地へ導いたと伝わることから、「みかえりうさぎ」が境内のあちこちでかわいらしい姿を見せています。本殿のまわりには3つのうさぎの置物があるのですが、絵馬を持って本殿を3周する間に全て見つけられると、絵馬に書いた以上の願いが叶うのだそう!

国の重要文化財となっている本殿。菟道稚郎子命は、応神天皇(第十五代天皇)の皇子

桧皮葺きの社殿は、鎌倉時代初期の建造物

手水舎にもうさぎが!

宇治神社では『源氏物語』のおみくじをひくことができます。「このおみくじは、次のお参りまでしおりとしてお使いください」と教えていただきました。京都旅行の特別なお土産です。

宇治神社
住所:宇治神社京都府宇治市宇治山田1
宇治神社 公式サイト

源氏物語を目で、耳で、鼻で感じる「宇治市源氏物語ミュージアム」


閑静な住宅街に佇む「宇治市源氏物語ミュージアム」は、『源氏物語』に関する資料の収集、保管、展示を行っている公立博物館です。1998年に開館し、2018年に2度目のリニューアルを経て、源氏物語の世界をより一層楽しめるようになりました。

宇治市源氏物語ミュージアムでは、源氏物語の世界を五感を使って楽しむことができる

入ってまず目を引くのは平安時代の貴族の様子を実寸で再現した「平安の間」。平安時代の華やかな世界にたびたび登場し、時にキーポイントともなる「牛車(ぎっしゃ)」ですが、原寸大で見たことがある人は少ないのでは。

絵の中でしか見たことのなかった牛車が実寸で展示されている。高さ2メートル以上あり、近づくとかなり大きいことに驚く

『源氏物語』の中で、光源氏は成人した後、義母・藤壺と御簾(みす)越しにしか会えなくなり、そのことを悲しみます。そのとき光源氏が藤壺をどのように眺めていたのか、ここでは御簾を通した「垣間見(かいまみ)」を実際に体験することができます。

御簾は現代のカーテンと同じく、明かりの効果で内側からは外がよく見えるが外側からは内側が見えない。御簾越しに見える人影は「透影(すきかげ)」と呼ばれた

体験コーナー「垣間見てみよう」では、御簾の内側と外側で見え方がどのように異なるのか、実際に体験することができる

「宇治の間」は、「宇治十帖」をテーマにしたエリア。空間全体を使って解説される「宇治十帖 物語シアター」の音声ガイドは、元NHKアナウンサーで「朗読の加賀美」と呼ばれた加賀美幸子さんのナレーション。“名調子”によって、知っている人はどっぷりと、まだ知らない人もわかりやすく物語の魅力を堪能できます。

宇治川東岸の八の宮邸で、薫が大君と中の君の姉妹を垣間見る象徴的なシーンを、こちらも実寸で再現している

このほか、「物語の間」では香りの組み合わせを楽しむ遊び「源氏香」を体験できるほか、「映像展示室」では同館オリジナルアニメ「GENJI FANTASY ネコが光源氏に恋をした」などを楽しめます。「企画展示室」では2024年2月4日まで特別企画展「このわたりに薫る君やさぶらふ」を実施しています。

「源氏香」は、香道において香りの異同を判じる競技形式の鑑賞方法「組香(くみこう)」のひとつ。五つの香りのうちどの香りが同じ、あるいは異なるかを、52通りの中から当てる遊び。答えは54帖ある『源氏物語』の巻名をなぞらえた源氏香図で表す

住所:611-0021 京都府宇治市宇治東内45−26
宇治市源氏物語ミュージアム 公式サイト

ここもおすすめ! まるで別世界「黄檗山萬福寺」

『源氏物語』の世界やグルメを堪能したら、「黄檗山萬福寺(おうばくさん まんぷくじ)」にもぜひ足を延ばしてみてください。最寄りの「黄檗駅」へは、宇治駅から電車で約3分で行くことができます。
黄檗宗の大本山・萬福寺は、1661年、隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師によって開かれました。中国明朝様式を取り入れた伽藍配置が特徴で、創建当初の姿を今に伝える貴重なお寺です。

重要文化財「大雄寶殿(だいおうほうでん)」
萬福寺の本堂で最大の伽藍。「木の宝石」とも呼ばれるチーク材使用した、日本で唯一最大の歴史的建造物

「弥勒菩薩(布袋)坐像」
金色に輝く「ほていさん」のいらっしゃる天王殿(重要文化財)には、「金運来福」の文字が。ぜひあやかりたい!

12月10日までは「黄檗ランタンフェスティバル」も開催。迫力あるランタンが並ぶ広い境内は、まるで異世界! 日本のお寺ではあまり見かけない建築手法やデザインに、旅慣れている和樂web編集長も、新鮮な驚きを感じていました。また、黄檗山萬福寺では「普茶料理」という、中国から伝わった精進料理を頂くこともできます(要予約)。詳しくは公式サイトにてご確認ください。

「黄檗ランタンフェスティバル」開催中の入口。総門をくぐると、日本国内ではなかなかお目にかかれない、幻想的な景色が広がっている

黄檗山萬福寺
住所:京都府宇治市五ケ庄三番割34
黄檗山萬福寺 公式サイト

写真提供:黄檗山萬福寺

京都観光 うれしい情報

お得に、そしてもっと京都旅が楽しめる情報をご紹介します。

1.きょうと魅力再発見旅プロジェクト

京都府内での宿泊費用の補助等が受けられる「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」。この機会を利用して、普段行ったことのない京都の魅力を探しに行ってみてはいかがでしょう!

期間:2023年12月1日(水)~2023年12月27日(金)
【公式】きょうと魅力再発見旅プロジェクト

※プロジェクトの詳細は公式サイトでご確認ください。

2.京都名所周遊交通デジタルスタンプラリー

公共交通機関を利用して京都の人気観光地を巡ると、抽選で素敵なプレゼントが当たるキャンペーン。アプリで利用可能です!

期間:2023年11月18日(土)~2024年1月31日(水)
京都名所周遊交通デジタルスタンプラリー

※プロジェクトの詳細は公式サイトでご確認ください。

3.京都きものパスポート

きものを着て、協力施設や店舗で「京都きものパスポート」を呈示すると、割引や記念品進呈などの特典が受けられるキャンペーン。ゆったり巡れる宇治は、きもので訪れるのにもぴったりな場所です。

期間
寺院・神社:2023年10月1日〜2023年12月25日
施設・店舗: 2023年10月1日〜2024年9月30日(原則)
京都きものパスポート2023〜2024

※パスポートの取得、プロジェクトの詳細は公式サイトでご確認ください。

参考文献
『日本古典文学全集 源氏物語』『デジタル大辞泉』『国史大辞典』

撮影/篠原宏明(宇治川、宇治神社) 安藤智郎(源氏物語ミュージアム)

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和樂web編集部

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