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2024.04.18

東京にある大阪寿司の名店「八竹」へ潜入!【あっぱれ! 大阪寿司!! part8】

ほんまもんの大阪寿司は大阪だけにあるとは限りません。東京・四谷にある「八竹(はちく)」の献立表は〝大阪寿司の教科書〟と呼べるぐらいに種類が豊富。東京で人気が集中するこの店の味の秘密を探ります。

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東京なのに大阪!? 大阪以上の大阪寿司の名店「八竹」

東京にも大阪寿司専門店があります。ただし大阪と同様に、古くから続く店が減りつつあるのが現状。そんななか、ひときわにぎわう店があります。それが大正13(1924) 年創業の「八竹」。
神戸で日本料理と寿司を出す店を営む夫妻が東京人形町に移り住み、大阪寿司の専門店を四谷で始めました。人気の理由はもちろん味のよさにありますが、メニューの多さも特筆すべきところ。大阪にある大阪寿司の名店は、長い歴史のなかで得意とする寿司が絞り込まれているのに対して、この店はフルラインナップがそろうのです(コロナ禍の折、「京風上ちらし」のみ休止)。

大阪寿司の準備は午前中が勝負と聞き、朝の仕込みをのぞいてみました。
「魚を焼いたり、乾物を煮たりするのは前日までの仕事。朝はその日売り切るものの仕込みから始まります」と早朝から職人と肩を並べて働く3代目主人・鎌田清隆さん。一番に取り掛かるのは、名物の「茶巾ずし」。少ない日でも午前中に400個は用意するというこの店の看板商品です。驚いたのは、「茶巾ずし」を包む薄焼玉子を一枚ずつ焼いていること。銅製の玉子焼器はお寿司にあわせたサイズ。玉子焼は〝その店の命〟と大阪でも耳にしましたが、ピンと角の立つ「茶巾ずし」はこの手間から生まれていたとは…。

「八竹」3代目主人・鎌田清隆さん

折箱を開けたときの華やかさも大事なこと

「うちで使うネタはすべて自家製です。玉子焼は外注する店が今は多いんだけど」と鎌田さん。「茶巾の玉子は折詰の中でいちばん色を占めるから、おいしそうに見える色でないと。そう考えると自分で卵を選んで焼くしかない。海老はゆでたら、鮮烈に赤くなるものがいい。となると冷凍物は使いたくない。うちは原価計算があってないような店です(笑)。おいしいことはあたりまえだけど、大阪寿司は見た目の美しさにこだわることも大事だよね」。
話の間にも、職人たちの手から箱寿司や巻寿司が次々とできあがります。手の動きは速いけれど、丁寧。助け合いながら、きれいに整えられます。

鎌田さんの大阪寿司へのこだわりに、この店が支持される理由が腑に落ちました。お寿司が美しい! 明治中期、大阪寿司が高級寿司へと大転換を迎えたときの、職人技を尽くして寿司をつくる美意識が初代から受け継がれているのです。そのためには職人の手数も必要、でも価格は控えめ。大丈夫ですか? 「いやぁ困ってますよ。この2年、踊りの発表会やお茶会がないでしょう。大口のお客様がいたから成り立っていたんでね」と嘆くご主人。
華があって、東京では珍しくて。しかも持ち運びの際もくずれにくい。「八竹」のつくる大阪寿司は、美味あふれる東京でも特別なものなのです。

これが1日500個以上も出る「八竹」の茶巾ずし

「茶巾ずし・大阪鮓詰め合わせ一人半折」2,470円(税込、箱代含む)。「茶巾ずし」に「箱ずし」と「伊達巻」「太巻」が入る。「箱ずし」のネタに鯖が入るのは、青魚を好む東京ならでは。「伊達巻」はつくる手間がかかるため貴重。※予約の上、来店をおすすめ。

朝の仕込みを実況中継


左/6時30分 朝一番に薄焼き玉子
空気を抜くひと手間を加えることで、つやのある玉子焼に。卵は黄色にこだわった品種を指定。
右/8時00分 酢飯に具を混ぜる
〝茶巾〟の中具は椎茸と干瓢煮、木耳、もみ海苔。職歴50年になるベテランの混ぜ方は巧みであった。


左/8時10分 いざ、茶巾ずし
寿司飯は型を使わず、手でまとめる。蓮根の甘酢漬けと焼き穴子、おぼろを手際よく寿司飯と合わせる。
右/8時15分 玉子で巻いて巻いて
猛スピードで寿司飯を包み終わると、仕上げに三つ葉で結んで終了。ここまでの数で午前中の注文分。


左/9時00分 箱を押します!
鎌田さんは「箱寿司」の担当。炭火で焼いた穴子の皮目と身、見た目を考慮して配置していく。
右/9時30分 押し寿司の準備完了
箱寿司に加えてこの店には「バッテラ」の総称で鯖、鯵、穴子、小鯛、海老の押し寿司がそろう。壮観!


左/9時35分 折箱に詰めます
引き取りの時間にあわせて箱詰めの準備。寿司切包丁を握るのはここもご主人。切り口にも気を使う。
右/10時00分 包装も整いました
ホッとしたのもつかの間、明日使う魚の仕込みや乾物の煮炊きが始まる。これを毎日続けるって大変!

店舗情報

八竹 はちく
住所:東京都新宿区四谷3-11 
電話:03-3351-8989 
営業時間:10時~17時
休み:水曜 

撮影/石井宏明 構成/藤田 優
※本記事は雑誌『和樂(2021年12・1月号)』の転載です。

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和樂web編集部

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