南禅寺に瑞泉寺。禅の心を感じることができる名庭ベスト4

南禅寺に瑞泉寺。禅の心を感じることができる名庭ベスト4

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禅の名庭は京都を中心として、枚挙にいとまがないほどです。そんな中から禅の庭の発展を知る上で欠かすことのできない4つの庭を選びました。眺めていると、それぞれの庭に込められた禅の心が伝わってくるようです。

解説・宮元健次(和樂2007年3月号より)

茶道とのかかわりから生まれた織部好みの庭「龍興山 南宗寺 臨済宗」(大阪・堺市)

禅庭

南宗寺の創建は1526年、京都・大徳寺の住職であったこ古嶽宗旦(こがくそうたん)がこの地にあった小院を南宗庵と改称したことが始まりです。その後、三好長慶によって大規模な寺院が造営されますが、戦災による焼失と再建をくり返し、現在にいたるまで大阪府で唯一の臨済宗専門道場として修行の場としての機能を保っています。

「こちらは堺という土地に注目してください。武野紹鴎や千利休によって完成された茶道は、禅を基盤として堺で発展しました。千利休の弟子には七哲と呼ばれる人たちがいて、中でも最も優秀だったのが古田織部。こちらの庭はその織部好みの庭です。織部の好みとは、たとえばものを配置するときに角をつけて斜めにずらして置くという左右非対称があげられます。それがこちらの庭の石組などには如実に反映されていて、織部の器を見るような感じを受けます」。そんな古田織部のお茶の弟子であったのが、南禅寺の庭をつくった小堀遠州です。

禅庭水の流れを石で表した空間美。向かって右側には滝から渓流への水の流れが、石組と小石によって表現されている。左右非対称を好んだ織部の好みを読み取ることができる。

禅庭渦巻きのような砂紋が揺らぎを感じさせ、庭園自体のスケール感をより大きく感じさせる。まさに、自然の営みを映し出したような庭と言えるだろう。

◆龍興山 南宗寺(りゅうこうざん なんしゅうじ)臨済宗大徳寺派
住所 大阪府堺市堺区南旅篭町東3-1-2

余白の美を感じさせる、小堀遠州作の庭「瑞龍山 南禅寺 臨済宗」(京都・京都市)

禅庭

臨済宗寺院の寺格を表す京都五山、鎌倉五山というものがあります。南禅寺はそれよりもさらに上の五山之上に列せられる寺院です。歴代の住持には臨済宗各派の中から最もすぐれた人物が迎えられました。現在も立派な伽藍をもち、寺格の高さを感じさせてくれます。

「雪舟庭園が水墨画の立体表現だとすると、江戸時代初期に活躍した小堀遠州の庭は、西洋の遠近法であるパースペクティブによる視覚効果を活用したことに特徴があります。南禅寺の本坊方丈庭園は、まさにパー
スペクティブを駆使した枯山水庭園の傑作といって言いでしょう。方丈庭園の石組は向かって左から右に行くにしたがって低くまばらになり、樹木も同様に低くまばらになっていて、右側の方が遠くにあるように見えます。また、左から右に向かって動いているように見える空間のトリックが用いられていて、手前の砂紋がせせらぎみたいに動いているような錯覚にとらわれます」

禅庭本坊方丈庭園は、西洋的手法による、広がりのある空間が見もの。石組は虎の親が子を率いて川を渡る姿に見立てられ、「虎の児渡し」と呼ばれる。

◆瑞龍山 南禅寺 (ずいりょうざん なんぜんじ)臨済宗大本山南禅寺派
住所 京都府京都市左京区南禅寺福地町
公式サイト

岩と水で創出した禅の世界「錦屏山 瑞泉寺 臨済宗](神奈川・鎌倉市)

禅庭

西芳寺や天龍寺の庭園を手がけるより以前にも、夢窓国師は庭つくりに意欲的に取り組んでいました。その代表格が、鎌倉の瑞泉寺と山梨の恵林寺です。

鎌倉幕府後期の1327年、53歳の夢窓国師が開創したのが瑞泉寺です。「鎌倉は江戸時代の富士山大噴火によって、一度すべてが埋没してしまいました。しかし、その前に水戸光圀が瑞泉寺を訪れて詳
細な実測図を残しており、それを元に発掘してみたら、夢窓国師の庭がそのまま出てきたというわけです。

この庭はその後の国師の庭の原型と言える特徴を備えています。それは、鎌倉凝灰岩を穿ってつくられた座禅窟、岩から落ちる人口の滝、そして、池のある部分と展望台との上下二段構成など。これらは後の庭園にも見られるものであり、見逃すことができません」

禅庭現在は立ち入り禁止の徧界一覧亭への登り口。春分・秋分の日には、一覧亭から見て鶴岡八幡宮に日が沈むなど、位置関係に関する謎が多い。

禅庭

◆錦屏山 瑞泉寺(きんぺいさん ずいせんじ)臨済宗円覚寺派
住所 神奈川県鎌倉市二階堂710
公式サイト

石組を巧みに配して、自然を凝縮「乾徳山 恵林寺 臨済宗」(山梨・甲州市)

禅庭数多くの石組を用いた恵林寺の庭園には、中島にお堂を設ける浄土式庭園の特徴が見られる。現在は、樹木と石組との美しい調和が評判に。

瑞泉寺から離れた夢窓国師は1930年、後の武田信玄の菩提寺として有名になる恵林寺の庭園を手がけています。ここには後世の庭師が手を入れた形跡が多く、当初のものとは違っているのですが、国師の庭の特徴は今も変わりません。

「浄土式庭園の名残をとどめた前期式枯山水の典型が、恵林寺には残されています。その代表例が、庭の西側に西方浄土を見立てた石組が集中し、東側には天照大神の神話以来の思想である再生の洞窟があること。これはまさに生死感の表現です」

◆乾徳山 恵林寺(けんとくさん えりんじ)臨済宗妙心寺派
住所 山梨県甲州市塩山小屋敷2280
公式サイト

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