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Gourmet
2019.09.26

北青山「トラヤカフェ・あんスタンド」でおしゃれなひととき。蒸したてあんバンに抹茶オレも。

この記事を書いた人

気軽に“あん”を楽しめる「トラヤカフェ・あんスタンド」の立役者とメニュー開発を手掛けるスタッフが、もうひとつの“あん”の魅力について語ります。

虎屋を支える人「トラヤカフェ・あんスタンド」編

室町時代の後期に京都で創業し、それからおよそ500年にわたり暖簾を守ってきた老舗「虎屋」。日本を代表する高級和菓子店としての歩み、銘菓の羊羹や和菓子については、和樂web『やっぱり「とらや」でしょ!500年の歴史を調べてみたら伝説がありすぎた!』や『『手土産の定番といえばこれ。最強和菓子屋「とらや」の羊羹には納得の理由があった』でご紹介をしています。そこで今回は、“虎屋で働く人”にご注目。働く人の言葉から虎屋の変わらないおいしさと新たな取り組みを探っていく、全3回にわたるシリーズ企画です。第2回目は「トラヤカフェ・あんスタンド」を支える人です。

時代やコンセプトに向き合い、新生「トラヤカフェ・あんスタンド」へ

2003年の六本木ヒルズ誕生とともに、虎屋の新業態である「トラヤカフェ」がオープンしました。「とらやがつくるもうひとつのお菓子」をコンセプトにした、モダンでありながらもクラシカルな風格が漂うトラヤカフェ。あの虎屋がカフェを!と話題をよび、注目の新施設での開業ということもあって、連日賑わいを見せていたことを覚えています。そんな「トラヤカフェ」ですが、早いもので16年(虎屋の長い歴史のごく一部ではありますが……)。

「トラヤカフェ・あんスタンド」の旗艦店である北青山店にて。トラヤカフェ事業部の宇野さん。北青山店・副店長の木村さん。仲條正義さんによるトラのタイル壁画は、店でも人気のインスタ映えスポット!

そこでコンセプトにあらためて向き合い、今の時代に求められるトラヤカフェをと、2016年の春に新生「トラヤカフェ・あんスタンド」が誕生しました。新宿店からはじまり、旗艦店となる北青山店、銀座店を出店。現在は3店舗で展開しています。

屋号から商品まで、その中心には“あん”がある

「トラヤカフェ・あんスタンド」を立ち上げ、企画運営を担うのがトラヤカフェ事業部の宇野さんです。リブランドした目的や意味を「トラヤカフェというブランドは、虎屋のコアである“あん”をより多くのひとに親しんでいただくためにあります。ブランドの主力商品である、あんペーストやあんを使った菓子など、あんを中心に据えた店として位置づけました」と話します。その言葉通り屋号には“あん”という言葉が加わり、すべての店舗で喫茶だけではなくあんペーストやあんを使った商品の販売に力を入れます。

ランドスケーププロダクツによる、やわらかで温かみのある内装の北青山店。一階はさっと楽しめるスタンドスタイル、二階でもゆっくりとご一服を。写真提供/トラヤカフェ

ここでしか味わえないから人が集まる

さまざまなカフェが乱立するなかで、他で味わえない体験ができる個性のあるカフェに人が集まる時代に。「そんな時代だからこそ、“あんペーストカフェオレ”や“あんバン”など、ここでしか味わえないメニューを提供していきたい。パンケーキはあの店、ラーメンはこの店というように、ここの“あん”を食べたいと訪れていただける店を目指しています」と、宇野さん。

定番から季節アイテムまである「あんペースト」/600円(税別)~(サイズ・種類により異なる)。店で食べておいしかったからと、帰りがけに買い求める男性客も増えている。

オリジナリティー溢れたメニューですが、一見するとその数はちょっと少なく感じます。「実はオープン当初、スタッフからもメニュー数については心配をされました(笑)。しかしメニューの多さではなく、そこでの感動体験がリピーターやファンへとつながる。だから素材やおいしさに徹底的にこだわったメニューをお客様に届けることが大事だと考えています」。近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの標語に「Less is more」があります。「より少ないことは、より豊かなこと」、そんな言葉が頭をよぎります。

蒸しあがったばかりの生地にあんペーストをはさんだ「あんバン」/390円(税別)。湯気があがる生地を半分に割って、たっぷりのあんとともに食べるおいしさたるや!

徹底的においしさにこだわるために、イートインのメニューで使っているあんペーストは各店の厨房で炊いているとか。てりや粘りを見極めて一番おいしい状態へと仕上げています。また店ごとの特色を生かした限定メニューや商品を展開。北青山店では、店内で焼いたあんケーキやあんを使ったドレッシングを添えたランチボックスを。新宿店では、忙しい人がサッと食べられるサイズのあんコッペやあんトーストを。銀座店では、小豆と砂糖と寒天のみの「あんペースト(シンプル)」を店内製造して、メニューや瓶に詰めて商品として販売をしています。「北青山店限定の『あんバン』は、生地から店内で作っています。 小麦粉だけでなく、黒糖やきび砂糖、米粉を加えてこね、もっちりとした食感に蒸しあげています。店は気軽なスタイルですが、高い満足感を得られる工夫を凝らしています」。

てりや粘りなどの具合をみながら、店で使うあんペーストを丁寧に仕上げていく。写真提供/トラヤカフェ

メニューの作り手が感じる“あん”の魅力

旗艦店である「トラヤカフェ・あんスタンド」北青山店で副店長を務める木村さん。トラヤカフェのキッチンを経て、現在の店を任されました。「以前と比べると男性のお客様がとても増えました。スタンド形式のため、お客様との距離が近くなり、メニューへの感想などを直接お話しいただけるのがうれしい」と話します。

蒸しあげた生地を手に取り、店でつくったあんペーストを詰めていく木村さん。「あんの増量もできますよ」。

月一度は、宇野さんやスタッフをはじめトラヤカフェの名物菓子「あずきとカカオのフォンダン」などを考案した料理家・長尾智子さんを交えてメニュー開発などの会議を行っています。「あんの魅力は、その可能性が無限にあるところ。和でも、洋でもない、あんを素材とした“もうひとつの菓子”を楽しめるカフェとして、これからも新たな味を生みだしていきたい」と、木村さん。

カフェオレ、ほうじ茶、抹茶とあんをあわせたドリンク。私のお気に入りは、加賀棒茶のほうじ茶を使った香ばしさと甘さの妙がたまらない、北青山店限定「あんほうじ茶」/500円(税別)。

気軽に楽しむ、もうひとつの“あん”

最後に「トラヤカフェ・あんスタンド」のおふたりが、一番好きな菓子を尋ねてみました。宇野さんは「あずきとカカオのフォンダンです。羊羹のような、ずっしりとした重みがあり、はじめて食べたときに衝撃をうけました」と即答。

菓子の作り手である木村さんは、かなり迷いつつ「あんをつかった季節の焼菓子です。今は、白餡とレモンとホワイトチョコレートをあわせた、あんケーキレモン(9月中旬までの限定販売)ですね。バターは使わずあんと卵でつないであるので後味があっさりしているのが特徴。見かけは洋菓子ですが、食べるとまさにもうひとつの菓子です」とのこと。

その日に作った菓子をガラスケースに入れてご紹介。昔ながらの菓子屋スタイル!左側は木村さんがご贔屓の「あんケーキレモン」、爽やかさとコクのある焼菓子。

極上の小豆から丁寧に作り上げた虎屋のあんが、トラヤカフェの核となる「あんペースト」を生みだしました。それを日常の一部として広げていくために、宇野さんや木村さんたちが“もうひとつの菓子”を発信していきます。

正統派気軽系「トラヤカフェ・あんスタンド」には、豊かな“あん”の楽しみが待っています。

店舗情報・営業情報

トラヤカフェ・あんスタンド 北青山店

住所: 東京都 港区北青山 3-12-16
TEL:03-6450-6720
営業時間 : 11:00~19:00
定休日 : 水(年末年始、夏季休業など)
https://www.toraya-group.co.jp/toraya-cafe/

*掲載価格等は取材時(2019年9月)の情報となります。

書いた人

和樂江戸部部長(部員数ゼロ?)。江戸な老舗と道具で現代とつなぐ「江戸な日用品」(平凡社)を出版したことがきっかけとなり、老舗や職人、東京の手仕事や道具や菓子などを追求中。相撲、寄席、和菓子、酒場がご贔屓。茶道初心者。著書の台湾版が出たため台湾に留学をしたものの、中国語で江戸愛を語るにはまだ遠い。