これが金沢の人気和菓子最前線だ!食べる芸術の現場を大直撃?!

これが金沢の人気和菓子最前線だ!食べる芸術の現場を大直撃?!

和菓子は一つの芸術品だ。見目麗しく、日本の四季を表現するものも多い。

しかし、楽しみ方はそれだけではない。
様々な工程を経て作り出される和菓子を目の当たりにして、その繊細さに驚く。名前の由来からその土地の文化や歴史を知って驚く。そして、予想もしない極上の甘さに、さらに驚くのだ。いうなれば、目で、頭で、舌で、近江商人の「三方良し」のように楽しめるといえる。

じつは、和菓子の消費量の第1位は、京都と思いきや10年以上連続の首位を誇る金沢市。(※総務省 家計調査 二人以上の世帯 2016年~2018年平均 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキングより)
今回は、和菓子王国金沢にて、三方楽しめる人気和菓子の手作りの現場を直撃した。

手作りの現場となったスイーツの祭典とは?

そもそも金沢の和菓子の歴史は、加賀藩主前田家と関りがある。前田利家(まえだとしいえ)は多くの文化を保護・奨励した。特に茶の湯に関しては、前田利家をはじめ二代藩主の利長(としなが)も千利休の直弟子というほど。そうして、茶の湯の奨励と相まって、和菓子も独自の発展を遂げることとなる。

さて、そんな金沢で、和菓子の奥深さを知ったのは「令和元年いしかわスイーツ博」(2019年10月19~20日の2日間、しいのき迎賓館で開催)でのこと。

「令和元年いしかわスイーツ博」しいのき迎賓館にて

今年で8年目となるスイーツ博だそうだが、県内の和洋菓子店28店舗が集まる年一回の一大イベントなのだ。なんと、あの有名な和菓子を目の前で作ってもらえるという。アツアツ和菓子が食べられるときいて、早速現場へと向かった。

まつ井の「栗こもかげ」

まず訪れたのが、大正15年(1926年)に創業の「菓匠まつ井」。

「和菓子を通じて金沢らしさを表現すること」がコンセプトの菓匠まつ井は、あと数年で、創業100年を迎えるという。

菓匠まつ井の和菓子(令和元年いしかわスイーツ博のブースにて)

現在、日本の金箔のほとんどが金沢で生産されていることにちなみ、金箔をあしらった羊羹や、加賀友禅のイメージを表現した「友禅ころも」など、華のある和菓子が人気だという。

今回、イベント限定で、手作りの実演が行われたのが「栗こもかげ」。

珍しい名前の和菓子だが、じつは、金沢のとある風習を模して造られた和菓子なのだ。12月の初旬頃になると、金沢の長町武家屋敷跡界隈では、雪から土塀を守るために、藁(わら)で編んで作った「薦(こも)」と呼ばれるものを塀に立てかける風習があるのだそうだ。これを表現したお菓子が、「栗こもかげ」である。実際に作られているところを見せてもらった。

華麗なる手つきであっという間に完成?

「加賀棒茶(かがぼうちゃ)が入った生地です」
販売されている方が丁寧に説明をしてくれた。

平鍋(ひらなべ)に生地を流しているところ

確かに薄茶色の生地である。加賀棒茶入りと聞いて納得した。加賀棒茶とは、簡単にいえば、加賀地方で昔から親しまれているお茶で、茶葉ではなく茎を煎じたものである。
生地の表面にすぐにポツポツと泡が出る。1分くらいで手早く裏返す。見事な手つきだ。

生地を裏返しているところ

焼きあがった生地は積んで置いておく。その間に次の生地を焼く。ある程度焼きあがれば次の工程だ。いよいよ、出来上がった生地で包み込む。中に入れるのは、粒あんと栗の甘露煮だ。

生地の中に入る粒あんと栗の甘露煮

生地1枚1枚に粒あんを入れる

「栗こもかげ」の完成

包み込んで生地を二つ折りにしてそっと置く。これで「栗こもかげ」の完成だ。

「栗こもかげ」を食べてみたら…

さて、それでは実食だ。

菓匠まつ井の「栗こもがけ」

非常に金沢らしい上品な味だ。加賀棒茶の風味はそこまで強くはなく、少し香ばしい程度。なんといっても甘さを抑えたつぶあんが栗の甘露煮を引き立てている。生地はしっとりとしていて、もっと薄いと思っていたが、実際に食すと少し厚みがあってちょうどよい。出来立てアツアツの「栗こもかげ」の生地はふわふわしているが、冷めても、もちもちとした食感が楽しめて美味しい。

栗とつぶあんが詰まった「栗こもがけ」

今回の「栗こもかげ」ももちろん、コンセプトに対する「菓匠まつ井」の変わらぬ姿勢に、和菓子屋としてのプライドがうかがえる。

賞味期限は2日間。
「朝にご近所の人がよく買いに来てくれます」
やはり、人は美味しいものをよく知っていると納得した。

きんつば中田屋の「きんつば 金とき」

次のアツアツ和菓子は「きんつば中田屋」。
「きんつば中田屋」も老舗の和菓子屋だ。昭和9年(1934年)に石川県鶴来町(つるぎまち)にて創業、その後、金沢東山に移転。今年で創業85年を迎える。創業者の先代「中田憲龍(なかたけんりゅう)」の名前をシンボルマークとする「龍」には、「正義感」と「信用」という意味があるのだとか。伝統の製法を代々引き継ぎ、創業の気持ちを忘れない和菓子作りを貫いている。

中田屋の代表和菓子のきんつば。「金鍔焼(きんつばやき)」ともいうそうだ。
じつは、江戸時代初期に京都の清水坂で作られていたのが始めだとか。当時は、うるち米の粉を用いた皮であんを包んで焼き、「銀鍔(ぎんつば)」と呼ばれていたという。刀の鍔(つば)のような平たく丸い形だったそうだ。それが、江戸時代中期に江戸に伝わり、皮も薄くなって「金鍔(きんつば)」と言われるようになる。1800年に入ると、形も現在の四角形へと変化していく。

きんつば中田屋の様々な種類の「きんつば」(令和元年いしかわスイーツ博のブースにて)

きんつばにも多くの種類がある。定番のきんつばはもちろん、9月から販売開始のえんどう豆を使った「きんつば うぐいす」や、10月から販売開始の能登半島の栗を使った「きんつば 毬栗(いがぐり)」などだ。
思わず身を乗り出して確認すると、売り場に珍しい商品を発見。普段見かけないきんつばだ。五郎島金時(ごろうしまきんとき)の「きんつば 金とき」、ひよこ豆の「きんつば 雛(ひよこ)」、くるみを使った「きんつば くるみ」など、レアな種類も並んでいる。

「イベント限定の商品なんです」
販売されている方が丁寧に教えてくれた。イベントの内容や場所によって、どのような種類のきんつばを販売するか決めるのだとか。この地方には「きんつば 金とき」が合うなど、色々な角度から考えるという。

地道な作業を一つずつ丁寧に

実際に五郎島金時を使った「きんつば 金とき」の手作りの実演を見せてもらった。

「きんつば 金とき」の中身となる餡(あん)

定番のきんつばは、北海道産の極上大納言小豆(あずき)を使用しているが、「きんつば 金とき」で使用されているのは、加賀野菜の代表格の「五郎島金時」。石川県を流れる大野川の河口にある砂丘地は、さつまいも作りに最適な土地だという。その五郎島地区で作っているさつまいもが「五郎島金時」だ。粉質のために型崩れしにくく、甘味も強い特徴を持つ。和菓子には最適の素材なのだ。一度、この味を覚えたら他のさつまいもでは物足りなくなると言われるほどだとか。

薄衣をつけているところ

きんつばの餡を白い薄皮で包むために、塗っているところだ。店内では「ネリ」というらしい。

平鍋で焼いているところ

塗っては焼くの繰り返しの作業

1つずつ面を塗っては焼く。思ったよりも手間のかかる作業だ。こうして全ての面が焼きあがれば完成だ。

和スイートポテトに間違いなし!

さて、それでは実食へ。

手前が「きんつば 金とき」、左後ろが「きんつば 雛(ひよこ)」右後ろが「きんつば くるみ」※すべてイベント時の限定販売の商品です

「きんつば 金とき」(※イベント時の限定販売商品)

「外国の方に説明するときは『スイートポテトきんつば』と言うんです」

なるほど。的を得た言い方だ。だって、本当に和製のスイートポテトなんだもの。ただ、バターや生クリームを使用しているスイートポテトよりも、あっさりしていて、素材の味が引き出されている。本来の五郎島金時の素朴な甘さのみ。他の味は一切しない。薄皮が主張せず、最後の味のバランスを整える役割をしている。考えられた和菓子だなと感心した。これはパクパクと2個、3個といけてしまう危険な美味である。

「きんつば 金とき」(※イベント時の限定販売商品)

「きんつば 金とき」は、優しい色合いがそのまま味になったようなきんつばだ。
「きんつば くるみ」や「きんつば 雛」も全く同じく、素材重視。よほど素材に自信があるからこそできる技だろう。特に、「きんつば くるみ」に関しては完全に予想を裏切られた。餡の中にくるみが入って歯ごたえ重視かと思いきや、くるみそのままだ。餡の味はほとんどせず、くるみの味がメインで非常に意外性のあるきんつばだ。材料から伝統の製法にこだわった中田屋きんつばの底力を見た。

和菓子の手作りでアツアツを頂けるのは珍しい。特にイベント限定のレア商品であれば、なおさら得をした気分になる。たかがスイーツ。されどスイーツ。どれだけの「こだわり」や「思い」を和菓子で表現できるかで、受け入れられるかが決まる。和菓子消費量日本一の金沢は、言い方を変えれば、和菓子の激戦区。伝統を守りつつ新しいことにも挑戦できる。作る側も食べる側も心ときめく、そんな環境といえるのではないだろうか。

撮影:O-KENTA

基本情報

店舗名:菓匠まつ井
住所:石川県金沢市此花町9-16
(JR金沢駅兼六園口より徒歩5分)
営業時間:9:00~18:00
電話番号:076-221-1971
公式webサイト:https://wagashi-matsui.co.jp/

店舗名:きんつば中田屋 元町店
住所:石川県金沢市元町2丁目4番8号
営業時間:9:00~19:00
電話番号:076-252-4888
公式webサイト:https://www.kintuba.co.jp/

これが金沢の人気和菓子最前線だ!食べる芸術の現場を大直撃?!
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