「丹波なる 吹風(ふくち)の山の もみじ葉は 散らぬ先より 散るかとぞ思ふ」
京都府の北西部、由良川流域の盆地に位置する、福知山市(ふくちやまし)。一説では、和泉式部のこの和歌から地名が付けられたといわれています。戦国時代、武将・明智光秀によって築かれた福知山城とその城下町は、由良川の水運をはじめとする交通の要所として栄えました。明治時代には、軍港であった舞鶴港と京阪神を繋ぐために、後の福知山線と山陰本線が敷かれた福知山。現在もJR西日本の福知山支社や車両基地が置かれるなど、交通の要所としての役割を担っています。
私、和樂web編集部スタッフの鳩は、今回が福知山への初訪問。事前に調べた観光情報で「福知山城と明智光秀のまち」をイメージしておりましたが、実際に訪れて散策してみると「交通のまち」をはじめとした、福知山の意外な魅力にも気づかされました。
「福知山城を見たあとは、このふたつにもぜひ訪れてほしい! 」という勝手な願いから、この記事では、福知山市の街中(まちなか)に展示されている蒸気機関車と、貴重な建物看板が今も残されているアーケード商店街、ふたつの「推しスポット」の魅力をお伝えします。
推しスポット1 地球20周分を走破したSL
2020年最も話題になった映画といえば、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』。みなさんご覧になりましたか? 実は、福知山には「日本の鬼の交流博物館」も「蒸気機関車」もあるんです! 大江山にある「鬼の交流博物館」は別の記事で紹介する予定なので、この記事では市街地にある「蒸気機関車」をご紹介します。
福知山駅からタクシーで5分。福知山市の市街地、広小路通りに面した一角にある「福知山鉄道館ポッポランド2号館」。ここに展示されているのが、今から80年以上前に製造された貴重な蒸気機関車C5856号です。
現在展示されているC5856号は、もともと戦時中東南アジア方面へ送られる予定の蒸気機関車でしたが、終戦にともない改造されて、国鉄下関機関区に配置されました。そのあとは、新見や浜田、鳥取の各機関区で活躍し、昭和36年に福知山機関区へ転属となります。
昭和45年に引退となるまで、約9年間、舞鶴線や小浜線で活躍したC5856号。誕生してから引退となるまでの走行距離は、1,868,797kmにおよびました。福知山ではその約40%を走破し、距離は、なんと地球20.5周相当! 福知山の人々に愛され続けたC5856号は、役目を終えたあとも福知山のまちを見守り続けています。
最近のニュースとしては、貴重な鉄道資料を展示していた1号館(休館中)の再開を目的に、個人から2億円の寄附がありました。2022年度には、福知山城のふもとに新しい鉄道施設がオープンする予定。こちらも今後注目です!
住所:〒620-0023 京都府福知山市菱屋7
詳細は福知山鉄道館ポッポランド2号館(福知山市公式サイト) で。
推しスポット2 ファンにはたまらない! 新町商店街
私の旅行の楽しみ方のひとつ。それは、訪れた地域の商店街を歩くこと。菓子屋でお土産を買ったり、喫茶店で休憩したり。何より一番の楽しみは、レトロな看板を写真におさめることです! 大切なお土産品のように、撮った写真をそっと眺めては、その土地に思いを馳せるのが好きなのです。そして福知山には、商店街写真ファン垂涎(すいぜん)の通りがありました!
それは……由良川と明智光秀を祀った御霊神社を結ぶ「広小路通り」から福知山城方面へと伸びる「新町商店街」です。
明治35年に誕生したこの通りは、昭和に入って店が立ち並ぶようになり、福知山の商業の中心地として急速に栄えました。現在は、当時に比べると人通りも少ない商店街ですが、キッチン付きレンタルスペース「アーキテンポ」など地元の人たちの憩いの場も誕生して、新しいムーブメントがきているようです。
新町商店街の看板コレクション!
今回の取材で私が集めた看板の写真を一挙公開しちゃいます。看板に使われているフォントのフォルムやモチーフが、どれもたまらないんです。
商店街でお買い物を楽しめるイベントも開催
毎月第4日曜日、新町商店街の周辺では、約40〜60店舗が並ぶ定期市スタイルのイベント「福知山ワンダーマーケット」が開催されています。福知山市はもちろん、綾部市や京丹後市、神戸市など、関西圏内の出店者が集合する人気のイベントで、これまでの来場者数は多いときで1日約2,000人も。(※現在、新型コロナウイルスの影響で休止中) 福知山旅行の思い出に、商店街の看板を撮影しつつ、買い物を楽しんでみてはいかがでしょう。