抱き合う無機質なマネキン、人けのない広場、宙に浮かぶ石膏像など、難解な作品でおなじみのイタリア人画家ジョルジョ・デ・キリコ。20世紀初頭に「形而上絵画」と呼ばれる、「神秘」や「謎」「不思議」「不安」などといった、形而上の世界を視覚化した新しい芸術様式を確立しました。
2014年には東京で大回顧展が開催されたほか、定期的に全国各地の美術館で企画展が開催されるなど、日本でも人気です。ここ数年は、キリコに影響を受けたダリやマグリットといった、シュルレアリスムの画家たちの展覧会が軒並み開催されたことによって、再び作品が注目を集めています。
キリコの作品は、日本国内でも複数館で収蔵されており、諸橋近代美術館、ふくやま美術館、東京富士美術館という今回ご紹介する3館のほか、大原美術館やポーラ美術館、松岡美術館などでも出合えます。たとえば、東京富士美術館とポーラ美術館には同じ『ヘクトルとアンドロマケ』という、キリコが長い年月をかけて描いた主題の作品がありますが、両館がもつ作品には、描かれた時期に約20年の間があります。どのように描き方が変化したのか、2枚を見比べてみるのも面白いです。不思議で謎に満ちたキリコの絵画世界にぜひ、一度迷い込んでみてはいかがでしょうか。
東京富士美術館で発見! 『ヘクトルとアンドロマケ』
ジョルジョ・デ・キリコ 『ヘクトルとアンドロマケ』1955年 油彩・カンヴァス 東京富士美術館蔵 ⒸSIAE,Roma & JASPAR, Tokyo, 2017 G0920
西洋絵画500年の流れを辿ることができる油絵コレクションを誇る東京富士美術館は、4点のキリコ作品を収蔵しています。トロイア戦争に旅立つ夫ヘクトルと妻アンドロマケの別れを描いたこの作品。絵画だけでなく、彫刻作品も残すほど、キリコにとっては重要な主題のひとつです。※展示については要お問い合わせ。
公式サイト:東京富士美術館
諸橋近代美術館で発見! 『イタリア広場』
ジョルジョ・デ・キリコ 『イタリア広場』 1914年 油彩・カンヴァス 諸橋近代美術館蔵ⒸSIAE,Roma & JASPAR, Tokyo, 2017 G0920
サルバドール·ダリの作品を約340点所蔵する諸橋近代美術館。そのダリについて語る上で欠かせない人物のひとりとてして、キリコの作品を所蔵しています。不自然にのびた影、違和感のある遠近法が不気味な『イタリア広場』は、たびたび描かれてきたキリコを代表するテーマです。※2017年9月11日からはじまる「コレクション展」にて展示予定。
公式サイト:諸橋近代美術館
ふくやま美術館で発見! 『広場での二人の哲学者の遭遇』
ジョルジョ・デ・キリコ 『広場での二人の哲学者の遭遇』 1972年 油彩・カンヴァス ふくやま美術館蔵 ⒸSIAE,Roma & JASPAR, Tokyo, 2017 G0920
ふくやま美術館は、イタリアを中心とする21世紀のヨーロッパ美術を主に所蔵。キリコ作品にたびたび登場する蒸気機関車や大きな煙突といったモチーフには、鉄道会社に勤めていた父と過ごした少年時代の思い出が投影されています。※展示未定。
公式サイト:ふくやま美術館