「鳥取砂丘 砂の美術館」は、砂と水のみでつくられた彫刻、砂像を専門に展示する世界にひとつの美術館です。砂像彫刻という芸術がアメリカから日本に入ってきたのは30年前。それ以降は、砂像彫刻家の茶圓勝彦(ちゃえんかつひこ)氏がこの分野を牽引してきました。「砂の美術館」では、開館当時から、プロデューサーとして展示作品を監修しています。
2004年に鳥取市と合併した福部村の村おこしの一環として始まった砂像彫刻の展示が、美術館として開館。ガラスケースなどもないので間近で作品を鑑賞できるのも魅力。
コンセプトは『砂で世界旅行』
美術館では、『砂で世界旅行』をコンセプトに毎年ひとつの国や地域をテーマに選び、砂像の制作を行います。春から約8か月半砂像を展示し、その後3か月半は次の制作のため休館。開館初年度の「イタリア・ルネサンス」展をはじめ、その国の歴史や文化、象徴する出来事や大自然を取り上げ、時代を追って展示しています。
左 「N.Y.の摩天楼」
右 「マウントラシュモアとグランドキャニオン」と「デラウェア川を渡るワシントン」
2017年10回目を迎える展示は、「砂で世界旅行・アメリカ編~世界に誇る大自然と自由の国を訪ねて~」。作品のデザインや構成、彫刻の総合指揮をとる茶圓氏のもと、世界トップクラスの砂像彫刻家9か国19名の彫刻家によって制作されました。アメリカ合衆国の偉大な人物や大自然の姿、ハリウッド映画やジャズなどが砂像で表現されています。
メイン展示のひとつ「マウントラシュモアとグランドキャニオン」は、全長20mの大作品。ジョージ・ワシントンやセオドア・ルーズベルトなど歴史に名を刻む4人の大統領と両サイドにはグランドキャニオン、さらにナイアガラの滝をイメージして本物の滝を配置。アメリカならではのダイナミックな作品が構成されています。
ほかにもベストセラー小説『アンクルトムの小屋』を砂像彫刻にしたもの、金鉱の発見が社会現象となった「ゴールドラッシュ」も砂像に。「N.Y.の摩天楼」では、エンパイアステートビルなどに交ざってあのトランプタワーも!1周まわると時空を超えてアメリカを冒険したかのような気分を味わえます。
長さ約7m、高さ約3mにも及ぶ大きな砂像がおよそ20作品そびえ立つ様子は、圧巻のひと言。その迫力や臨場感ある砂の像を見るために、毎年40万人を超える人々が美術館を訪れています。
美術館 外観
毎朝9時30分からのガイドツアーも充実、昼のワークショップで砂像づくりを行うもよし、夕方以降のライトアップされた砂像を鑑賞するのもおすすめ。砂像彫刻の、どこか儚く、美しい造形を堪能してください。