「人はどんな時、HAPPY?」2018年2・3月号では、その謎を探るため、日本と世界のアートを集めました。なぜ、アートとHAPPYが関係するのか…。それは、HAPPYな美術とは、観る人それぞれが心に抱く「幸せな瞬間」を思い出させてくれるものだからです。たとえば心を温かく満たす恋する少女の絵や、かわいい形の陶芸品、目を奪われる美しいデザインもあるでしょう。
今回は、友人との宴や恋する気持ちなど、日常を彩るささやかな幸せを表す作品たちをご紹介します。鈴木春信や狩野秀頼、フラゴナール、ルノワール…みなさんはどの作品にHAPPYを感じますか?
きれいな装飾は人生を彩る
ささやかな日常がHAPPYで満たされている。実はそんな幸せがいちばん豊かなのかもしれません。たとえば、毎日を過ごす部屋を美しく好ましく飾ること。ウィリアム・モリスの壁紙やカーテンでしつらえた空間で暮らせたら、こんなに素敵なことはありません。
ウィリアム・モリス「捺染テキスタイル」身の回りの自然をとらえた植物模様と幾何学的装飾を合わせた壁紙やテキスタイルで、19世紀の室内装飾に革命を起こしたデザイナー、ウィリアム・モリス。上は大輪の花と野の草花をデザインした更紗「クレイ」。©Erich Lessing/PPS通信社
並河靖之「桜蝶図平皿」 明治時代 径24.6cm 京都国立近代美術館/明治時代、海外の美術家たちを驚愕させたのが超絶技巧の工芸品。京都で活躍した並河靖之の平皿は、宝石細工のように煌びやかな文様を、有線七宝でほどこしたもの。精緻で透明感あふれる釉薬の表現はあっぱれのひとこと
恋する乙女は空も飛べるはず
江戸庶民の暮らしをうつした浮世絵にも、日常の幸せがたくさん描かれています。人気絵師、鈴木春信が描いたのは恋する少女。「あなたに会いたいな」というトキメキが、日常をどれほど美しく輝かせてくれることでしょう。
鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ美人」恋する女子は強い。あの有名な京都、清水寺の舞台(13m!)から飛び降りれば恋が叶う——と、番傘をパラシュート代わりに飛び降りる、まだあどけなさの残る少女。可憐な美人画で人気を博した春信の画。©Bridgeman Images/PPS通信社
ジャン・オノレ・フラゴナール「ブランコ」フランス・ロココ美術を代表する画家。恋愛を謳歌する若者の姿を好んで描いた。森でぶらんこに乗る娘と、下からスカートの中を覗こうとする(!)若い青年——という主題を、ウィットを利かせて描いた。©Bridgeman Images/PPS通信社
飲んで歌って笑って食べて幸せ
友人との昼食という、普遍的な幸せを描いたルノワールは、次のような言葉を残しました。「絵は好ましく、楽しく、きれいなものでなければいけない。人生には哀しいことがたくさんある。これ以上、哀しいものをつくる必要はない。幸せだけを描き続けよう」
ピエール=オーギュスト・ルノワール「舟遊びをする人々の昼食」1876年/やわらかな光あふれる風景、バラ色の肌の女性、素朴な庶民の日常。「その作品は人生の幸福を教えてくれる」と称賛されたルノワール。絵の中には友人や知人に混じり、将来の妻となる女性が描かれている。©Granger/PPS通信社
狩野秀頼「高雄観楓図屏風」国宝 室町〜安土桃山時代 六曲一隻 紙本着色 150.2×365.5㎝ 東京国立博物館/紅葉の名所・高雄に集い、踊りや歌に興じたり、酒や茶を楽しんだり。華やかな宴会の様子を描いた「遊楽風俗図屏風」の先駆け。Image:TNM image Archives