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2022.04.04

それは、廃校の体育館で密かに作られている…。 パリも絶賛した讃岐の「黒い宝石」その全貌に迫る!

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穏やかな気候に恵まれた瀬戸内海を望む香川県東かがわ市。手袋の生産日本一の町として有名だ。実はこの静かな町にある廃校になった中学校の体育館で“黒い宝石”が生産されているという噂が。

アヤシイ……。

我々取材班(1名)は真相を解明すべく現地に向かったのでした。

廃校になった体育館で作られていたあるモノとは


のどかな港町の風景を眺めながら、噂の廃校となった引田中学校跡に到着。え?こんなところで「黒い宝石」が作られてるの??

逆にアヤシイ……。

笑顔で出迎えてくれたのはCAVICの代表取締役社長・板坂直樹さん。

「廃校になった学校の体育館で黒い宝石を作ってるって本当ですかッ?」

取材班の食い気味の質問に「キャビアフィッシュの養殖をしてるんですよ」と板坂さん。あ、黒い宝石ってキャビアのことだったのね。世界三大珍味として知られているキャビアは、キャビアフィッシュとも呼ばれるチョウザメの卵の塩漬け。ロシアやイランが産地として有名だが、現在は乱獲などの影響もあり、天然物は減少の一途をたどっているそう。

母校が廃校になると知った時に閃いた!

まずは板坂さんにキャビアフィッシュの養殖の手がけるようになったいきさつを伺うことに。高松市内でお父さんから引き継いだ内装業の会社を経営していた板坂さんは、幼少から学生時代を過ごした東かがわ市の母校が廃校になると言う話を耳にし、「自分が通っていた学校がこのまま朽ち果てるのは辛い、ここを拠点に何か事業を起こせないか」と考えたそう。そんなある日のこと、突然「キャビア・・・」が頭に浮かんだのだとか。

想像より1000倍意外な理由だった!

それまでなじみがあったわけでも興味があったわけでもないのになぜか閃いてしまったそうです。「今でもなぜキャビアが閃いたのか、不思議としか言い様がない」と板坂さん。

そこからは日本全国のキャビアフィッシュの養殖場を巡り、勉強を重ねる日々が続きました。全くノウハウのない中からのスタート。内装業の会社は順調だっただけに「社員はえ?キャビア?と驚いてましたよ」と板坂さん。

しかし、実際にとりかかって、みると、改装しやすい仕切りのない体育館は養殖をするには十分な広さで、しかも屋内なので天候に左右されないという点でも適していました。2015年、4つの7トン水槽を体育館に設置し「東かがわ・つばさキャビアセンター」での養殖がスタート。

「キャビアフィッシュは成長して採卵ができるようになるまでには7年かかります。でもそれじゃあ7年間売り上げゼロになってしまう」

そんなにかかるなんて、知らなかった!

その対策として1年もの、2年ものと生育期間の異なるキャビアフィッシュを購入し、着手から最短1年後には採卵できるように計画。これで徐々にノウハウを築きながら養殖を広げていくことができるという仕組みです。さらに豊富な地下水を利用して水槽を掛け流しにすることによってキャビアフィッシュの育つ環境をよりよいものとしました。

ハマチ養殖発祥の地ならではの先人の知恵

はじめての養殖はトラブルも多かったそうですが、心強かったのは地元の漁師さんたち。「東かがわ・つばさキャビアセンター」のある東かがわ市引田町は、1928年に野網和三郎によって国内で初めてハマチの養殖に成功した場所でもあります。それだけに豊富な養殖に関する知識を持つ人も多く、そうした人たちの的確なアドバイスをもらえたことで、ピンチを切り抜けたこともあったそうです。

採卵できるようになっても課題は山積みでした。板坂さんは「自慢じゃないけど僕は日本で一番キャビアを捨てた人間だと思う」と振り返ります。同じ7年目を迎えたキャビアフィッシュであっても、個体ごとに生育が違うのは当たり前、採卵のタイミングも違う・・・。板坂さんは試行錯誤を重ねた結果、いつ採卵するのがベストか見極めるために、オリジナルの計算式を研究し、個体ごとの管理を徹底することで、ストレスを与えることなく、最も適したタイミングで採卵することに成功しました。

計算式!? ドラマ『ガリレオ』のシーンが思い浮かびました!!

採取のタイミングの問題をクリアしたものの、さらに困難を極めたのは採卵したキャビアの加工方法です。
板坂さんの育てているキャビアフィッシュはベステル種とアムール種の2種類。それぞれの特製を生かしながら、最高の味を求めて、納得できる味になるまで再び試行錯誤を繰り返したそうです。「使用する岩塩も何百種類も試しましたね」。元来凝り始めると徹底的にやり遂げなくては気が済まない性格で、養殖の前に手がけていたドッグラン施設の建設にもこだわりぬいたといい「社員からは犬の次は魚ですか!とあきれられました」と笑います。

「美しい水の味がする」と絶賛

そして2019年、ようやく稚魚から育てて採卵、加工、出荷までを一貫生産した「瀬戸内キャビア」が完成したのです。品質や風味を損なうことのないよう、パッケージも缶ではなく瓶に、鮮度の良さを保てる内容量にも板坂さんのこだわりが詰まっています。

美しい! まさに宝石!

完成した商品を携え、板坂さん自身が有名レストランに足を運び、営業をはじめました。評判は上場で、有名ホテルのレストランでも「瀬戸内キャビア」を使ったメニューが出されるまでになりました。この「瀬戸内キャビア」はフランスのレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」のテノワール賞を受賞するなど大きな評価を得ています。また国内はもちろんですが海外からも「美しい水の味がする」と好評で問合せが相次いでいるといいます。

一番美味しいお勧めの食べ方を聞くと「パンケーキにサワークリーム、その上からキャビアというの実は一昔前の食べ方です。塩分を控えたパンや熱々のふかしたジャガイモに乗せると美味しいですよ。あとは意外なようですがご飯にも合います。パスタやアイスクリームなんかもおすすめですよ。あ、でもたった1つ“うどん”は残念ながらダメでした」。板坂さん、さすが香川県人、うどんにもチャレンジしたんですね。

コロナ禍で現在は控えていますが地元の子どもたちや学生さん向けに見学会も。「見やすいように水槽まで作ってしまいました」と板坂さん

「東かがわ・つばさキャビアセンター」のある学校の校舎はかつての校長室が社長室、職員室が事務室、保健室が研究室、家庭科室が調理場として利用されています。卒業生からは「思い出のある母校の建物を残してくれてありがとう」とお礼を言われることも多いそうです。

見学者へのレクチャーも教室を利用

この東かがわ市に続き2015年には徳島県鳴門市にも養殖場を構え、現在は12000尾を飼育し、年間300㎏を生産しています。「瀬戸内キャビア」はオンラインショップ、東かがわ市・高松市のふるさと納税で購入が可能です。

瀬戸内キャビア 食べ比べセット(各15g 19,980円)

そしてこの「瀬戸内キャビア」が味わえる直営店が東京・銀座にあるキャビア・バー「17℃(ディセットゥ・ドゥグレ)」。美味しいお酒とともにメイドイン香川のキャビアをご賞味あれ。

プレゼントにも喜ばれそう!

(株)CAVIC
東かがわ・つばさキャビアセンター


香川県東かがわ市引田1850-2
電話:0879-33-3113
HP:CAVIC公式HP

ラメゾン・ドゥ・キャビア 17℃(ディセットゥ・ドゥグレ)
東京都中央区銀座8-15-5
電話:03-6264-7234
営業時間:18時〜26時(営業時間は変更の場合あり)
休:日・祝日
HP:   ラメゾン・ドゥ・キャビア 17℃公式HP

書いた人

せとうちに暮らすカエル好きライター。取材先に向かう山道で迷いイノシシに遭遇した経験あり。京都国立博物館トラりんの強火おたく。ジャニヲタ。No J No Life。HP:https://ww-kitamura.com/ Twitter:@yukkisetouchi

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大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。