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魯山人の魅力 その二、豪放磊落!
信楽(しがらき)の壺は本来、紐状にした粘土を積み上げて成形する手びねり技法でつくられるものです。
それに対して魯山人は、自らが所蔵する信楽の古壺の型を石膏でとらせて、新たな壺をつくっていたといいます。
これは、陶芸における崇高なる精神性への冒瀆と受け取られても仕方がない、禁じ手です。
それでもなお魯山人は、型をとるだけでなく、口造りをちぎり取り、ヘラを入れたりして形を整え、釉(うわぐすり)も厳選して独自の作品に仕上げたのです。
そこには、美しいもので身の周りを飾りたいと願い、常識にとらわれない物づくりに励んだ魯山人の豪放磊落(ごうほうらいらく)な姿が見て取れます。
そして、そのつくり方を真似して成功した例が以後に見られないことが、魯山人のセンスがいかに傑出したものであったかを物語っています。
反対側はコレ!
魯山人の魅力 その三、スタイリッシュ!
近代の陶芸家のなかでも魯山人は、比較的早い時期から桃山時代の陶芸の魅力に目を向けていました。
魯山人は桃山陶磁の伝統的な美に惹かれ、積極的に取り入れるようになり、織部や志野、黄瀬戸などを模した作品を数多くつくっています。
その多彩な作品群にあって、独自の美を放っているのが、土の板に脚をつけて端を反そらせ、織部の深く美しい緑の釉を用いた長皿です。
長板鉢と呼ばれるこの器は、魯山人が厨房の俎板(まないた)から着想し、オリジナルデザインとして完成させたもの。
スタイリッシュな形や色はもとより、食を介したもてなしの席において、目立ちすぎず地味すぎない存在感をたたえていて、さまざまな用途に対応できるという素晴しい長所を兼ね備えています。
裏はコレ!
撮影/鍋島徳恭 構成/山本毅、吉川純(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2020年4・5月号)』の転載です。