まずは30代の初めに、和服の魅力に取り憑かれたお話から。
私が、モデルの仕事に出会うまで
幼い頃から、今とほぼ変わらずヒョロっと大きかった私は、リボンとフリルの付いた可愛い洋服の似合う子供ではありませんでした。中学生からの制服はセーラー服でしたが、それも違和感があった様で、同級生からは社会人がセーラー服を着ているようだと言われたこともありました。
そして短大生になった頃、大流行したのはニュートラ。もれなく私もブームを追って、レイヤーカットに紺のブレザー、Aラインのスカートで講義を受けていました。でもスカートが短めになってしまうため、あらわになる肉付きのない膝と袖から除く筋張った貧相な腕のせいで、溌剌としたニュートラ感が出ないのです。それだけではなく、尖った印象の顔立ちも災いしてたのかもしれませんが。またしても流行り物にはついて行けないなと、ニュートラファションは早々に諦めるのでした。
そんな傷心な時期にモデルのお仕事の出会いがあり、やっと自分の体型が役にたつ日がやってきたのでした。それは還暦を迎えた今も続ける事ができて本当に有難く、今では1日でも長く続けられる様にと日々精進に励んでいるところです。
「初めての帯」との出会い
30歳を過ぎた頃からの私は和に関する物事に妙に惹きつけられるようになりました。洋食器よりは和食器で、葉書は和紙のものを選んだり、盆栽にも興味が湧いてきたり……。たまたまご近所に住んでいる方が箏曲の先生と分かり、琴を習い始めたり。
和ごとは更に和服へと向かいます。それは尊敬する女性からのお誘いのお着物の会。着物といえば、淡い色で、はんなりとした柄行きで小柄な方が着こなす、私とは無縁のもの。私はお供でご一緒するだけと伺った浦野理一の鎌倉のアトリエ。そこは想像していた着物とは世界が異なりました。
はんなりというよりは、粋というかどっしりとしていて甘くない。節の強い糸で織られている反物は、着物の概念を変えるものでした。
「こういう着物なら私にも合うかもしれない」
その時に出会ったのがこの紬の名古屋帯です。
深い緑と、織の重厚感、触れた時の節の感触に魅了されてしまいました。
嬉しい出会いの次の段階は着付けです。着物の世界に足を踏み入れたからには、是非とも自分自身で着られるようになりたいと着付け教室に入門。お稽古が待ち通しく、帯結びを習った直後は早速着物を着てスーパーへ直行、買い物が目的ではなく着崩れないかのチェックのためです。スーパーが成功した後は友人を誘ってお茶へ、次は食事へと段階を踏んで
着付けと着慣れのための修行、それは今なお続いています。