名物おかみ・料理上手の蘭子さんがもてなす「民宿 みやの」
本州最北端となる下北半島は青森県の中心地より遥かに離れているわけですが、この記事の主役である佐井村は、下北半島の中心地であるむつ市からも車で約70分。本州北部の最果ての地と呼びたいほどです。
人口約1700人の小さな漁村にも、民宿はある。しかも、遠方から目ざしてやってくる人々でにぎわう宿が!
それが「民宿 みやの」。シャイな宮野蘭子さんは写真撮影はNGということですが、料理の腕前には自信あり。昭和55年から始めた1泊2食つきの宿は、地元食材を使った郷土料理が評判を呼び、品数も増えていったとか。現在では地元女性陣の協力を得ながら、たくさんの手料理をふるまっています。
大間のまぐろを余すことなく食べる知恵を、蘭子さんの料理で知る。まぐろの皮って食べられるのね!
夜の献立で驚いたのは、大間のまぐろを使った料理の数々。大間町は佐井村の近所とあって、新鮮なまぐろを手に入れることができるそう。まぐろの皮は酢の物に、血合は佃煮に、頬肉は竜田揚げに、と蘭子さんは「余すとこなく使うのが家庭料理よね」。まぐろのたたきには青森県特産のにんにくスライスをオン。たまらないおいしさでした。
険しい山と海に囲まれた佐井村は、海と山の恵みが味わえるのがいいところ。春は山菜、冬は鍋物が名物だそうですよ。四季折々、訪れてみたい宿です。
佐井村の誇る景勝地「仏ヶ浦」は秘境感たっぷり
1泊すれば、観光にも余裕ができる。おすすめは佐井港から遊覧船に乗って鑑賞する景勝地「仏ヶ浦(ほとけがうら)」。巨岩・奇岩が立ち並ぶ非日常の風景は最果ての地まで来たからこそ、目にできるもの。
「仏ヶ浦裂き織り」に「おやき」。初めて聞く佐井村の名物と出会う
最後に、村の買い物をするなら佐井港前に位置する「津軽海峡文化館アルサス」で。村の歴史や文化を伝える展示を楽しめるほか、飲食も買い物もここに集中しています。
青森県伝統工芸品指定の「南部裂織(なんぶさきおり)」の展示販売をしている「仏ヶ浦裂き織り」のコーナーも。
南部裂織は青森県南を中心に伝わる古布再生術で、かつては着物をテープ状に裂いて、横糸にして織り上げたものでした。南部裂織はこたつ掛けや敷物に用いられることが多く、暖かみのある色が好まれたとか。ここ佐井村で生まれた「仏ヶ浦裂き織り」は現代版の裂織。布の色合いや作風にも伝統の縛りがなく、自由に制作できるそう。
「仏ヶ浦裂き織り」の代表、川岸延子さんが手がけた猫のコースターは、まさに自由闊達な裂織といえそうです。
「ちょこっと」にあります。青森名物のおやき
小腹が空いたら、アルサス内の「ちょこっと」にある「おやき」をどうぞ。大判焼とも今川焼とも呼ばれるあんこの入った焼き菓子が、青森では「おやき」。和菓子職人だった山口さんが息子夫婦に店を任せて、今はおやき職人に。
生うにが食べられるのは5月上旬から8月いっぱいまで。生のキタムラサキウニと合わせて佐井村探訪するもよし、それぞれの季節に山の幸・海の幸はあります。思い立ったら、旅に出てみませんか。
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写真/長谷川 潤